お金持ちは、好きなことを究めている。
あなたが若いなら、起業を志せば、
10億円も夢ではない。
あなたが企業にお勤めの方で、大きくお金を貯めたいのであれば、やはり副業か起業でしょう。ただしリスクも同居しますから、若いうちの方が望ましい。私がいま、20代後半や30代前半なら、きっとこの方法をとります。
(本記事は、菅下清廣氏の著書『今こそ「お金の教養」を身につけなさい 稼ぎ、貯め、殖やす人の”37のルール”』(PHPビジネス新書)の中から1部を抜粋・編集しています)
ジャパンベストレスキューシステム株式会社の代表、榊原さんは、貯蓄・人脈ゼロから起業しました。初期投資に1000万円必要だということで、3年から5年かけて1000万円貯めようと考えました。着手したのが、「人の3倍働く」という方法でした。
勤めていた洋服店は18時くらいで閉店したそうなので、それ以降はアルバイトをしました。普通の人が、飲みに行ったり家でサッカーを見たりしている間、榊原さんはアルバイトを2つこなしました。
お店が閉まったらすぐに食事を済ませて、映画館の掃除。それが終わったら、カラオケ屋の店長。1000万円貯めて、会社を興しました。
この会社は、ガラスが割れた、水道が止まった、ドアのカギをなくした……など、生活のうえでの「困った」を解決する、いわゆる便利屋さんです。この事業には、実は元手がほとんどかかっていません。最初に雇ったのは、アルバイトの主婦1名だけ。事務所は名古屋のマンションの1室でした。彼も元サラリーマンですから、割れたガラスも直せませんし、水道工事も当然できません。
榊原さんは、自分と同じように、日常の「困った」に自分では対処できず、困っている人が多いのでは、と考えて会社を立ち上げました。確かに最近は、電気ひとつ直せない人が多いです。しかし、このようなビジネスは、比較的誰でも考えつく範疇でしょう。
彼が抜きん出た理由は、事業化のために、車を一台借りて中京から首都圏に住む職人を片っ端から訪問した点です。ガラス職人や水道屋さんの組合をつくり、デフレで仕事がない職人さんをネットワーク化したのです。
お客さんからオーダーがあったら、近隣の職人さんにお願いする、という仕組みです。こうして彼の会社は、新興市場に上場し、いまや東証一部企業になりました。
得意分野、好きなことを「極めている」だけ
上場したら、10億円くらい貯めることだって夢ではありません。めちゃくちゃリッチです。でも10億と聞くと、「自分には無理」だと思うでしょう? では、販売員をしながらアルバイトをすることは、どうでしょうか。
体力さえあればできます。そして事業機会を探し、差別化することも、知恵を絞ればできないことはない。つまり10億の道のりは、特別な人にしか許されなかった道ではないのです。事実、榊原さん本人に「大変でしたね」と言うと、「全然大変じゃなかった」と言います。目標があったから、楽しみながらやれたと言います。
これは、要は自分の得意分野や好きなことを、極めているだけなんです。IT業界が盛り上がっているからといって、ITビジネスを興さなきゃいけない、なんてことありません。「便利屋」なんて、むしろ時代遅れのビジネスです。
料理が好きで、人に振る舞うのが嬉しい。あんな料理を作ったらあの人は喜んでくれるのではないか。何かいいレシピはないか……そんな思いや創意工夫が結集したのが、クックパッドです。主婦なら誰でも持っているオリジナルレシピを、たくさん集めてビジネスにする。誰でも考えつきそうですが、多くの人はやりません。究めようとしないだけなんです。
自分の好きな領域や得意領域なら、究める過程も楽しいと思います。それで一足飛びにお金持ちになれるチャンスもあるとなれば、ものは試しでやってみようと思いませんか。20代なら、たとえ恒産がなくても30代で立ち直ることができる。年齢を重ねれば重ねるほど、起業リスクも高くなりますから、やるなら早くやるべきです。
投資家に勝負の分かれ目は「人間心理」
お金持ちは、歴史に詳しい。
投資をやるなら、経済や金融よりも、
人間心理のほうが大切な勝ち要素。
大金持ちになるには、運ではなく努力が必要です。でも実は、ひとつだけ裏技があります。世界の歴史や文明を勉強しまくることです。
投資で勝つには、経済や金融の知識が必要です。でもこれらの知識は、「あったら勝てる」ものではなく「なければ負ける」もの。投資家としては必要不可欠なものです。では勝負の分かれ目はどこか。相場が、何で動いているかを考えればわかります。
たとえば株の場合、世論が「もう日本社会はダメだ」となったら価格は下がるし、「この会社は今後伸びるぞ」と期待されたら上がります。期待や信用という、目に見えないもので動いています。勝負の分かれ目は、「人間の心理を読めるかどうか」。相場の世界に動物は参加していません。人間だけです。そして、人間の心理を読むために必要なのが、歴史や文明の勉強です。
だから歴史好きの人は、投資に向いています。相場の世界は、知性ではなく、感情で動きます。歴史小説を通じて「家康がなぜあんな行動をとったのか」とその心理状況をを想像することは、相場で勝つための勉強のひとつなのです。
私は司馬遼太郎さん、池波正太郎さん、伴野朗さんの作品をよく読みます。司馬遼太郎さんのオススメ作品ベスト3は、『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『峠』。特に『竜馬がゆく』を読めば、日本を変えようとした坂本竜馬の心理を知ることが出できますし、『坂の上の雲』では日露戦争で一丸となった日本兵たちの心意気を体感できます。
池波正太郎さんの時代小説『剣客商売』シリーズは、『鬼平犯科帳』と並ぶ代表作。そして元朝日新聞記者だった伴野朗さんの『陰の刺客』『霧の密約』などは、時代的事件を題材にしていますから、とてもスリリングです。
もっと言うなら、人間が描かれた作品は、すべて投資の勉強になります。心理描写が細かいものなら、ラブストーリーでもハードボイルド小説でもOK。推理小説も勉強になります。
過去を学び、自分なりのデータベースを作るのもいいでしょう。
実は私、靴にもスーツにもさほどお金をかけていませんが、本だけは大量にあります。図書館に借りに行くのが面倒なので、とにかく買ってしまいます。実際に読んでいるのは、3割程度。7割が「積(つ)ん読(どく)」です。積んでおくだけ。いまや、本屋ができるほどの量です。
でも何か調べものをしようとしたとき、参考になるものがその7割のなかにあるのです。たとえば、伊勢神宮に関する調べものをしようと思ったら、自宅を見渡すと必ずある。10年前、20年前の書籍だから、逆に本屋にはもうありません。古本屋レベルの貴重な書籍が、家にあるんです。
加えて、ほとんどの週刊誌や雑誌は購入しています。『週刊現代』『週刊ポスト』『文芸春秋』『週刊新潮』などなど。『文藝春秋』はもう10年分くらいストックされていますから、10年前の渡辺喜美さんのインタビュー記事が読めたりします。出版社でもお持ちでない在庫があるかもしれません。まさに資料館のようです。
こんなに読んでいない本があるのに、毎週書店に行き、やっぱり2?3冊買ってしまいます。おそらく月に20冊、毎年200?250冊は買っていると思います。
自宅の壁がすべて書棚になっているのですが、既にほぼいっぱい。捨てるのももったいないので、これ以上増えたら、別の場所に書斎を用意しようと思っています。「菅下文庫」とでも名付けましょうか。
一見無駄に見えるかもしれませんが、でもこのデータベースが、私にとっては財産なのです。人から見ると無駄なものが、意外にその人にとって貴重なこともあるのです。
過去を知ることは、今を知り、未来を予測することを助けます。それが相場の方向性を読み取る力になりますから、ぜひあなたも歴史に触れてみてください。
菅下 清廣
スガシタパートナーズ株式会社代表取締役。国際金融コンサルタント、投資家。立命館アジア太平洋大学学長特別顧問。