iDeCo(イデコ)の申し込み手続きが完了するといよいよ老後資金作りのための運用が始まる。「運用」と聞くと心配になる人もいるだろうが、おなじみの定期預金という選択肢もある。まずはiDeCoでの運用について基礎的なことから学んでいこう。

iDeCoで運用 金融商品の選び方

iDeCo,確定拠出年金
(写真=PIXTA)

iDeCoは老後資金専用の積立口座だが、ここに毎月決まった金額を積立するだけでは終わらない。運営管理機関が設定している複数の運用商品の中から加入者が自ら商品を選んで運用していく。運用商品は運営管理機関によって異なり、3種類程度が用意されている金融機関から60種類以上の商品が用意されているところもある。

運用する上で目にする「資産配分、配分変更、スイッチング」の3つの用語は、iDeCo独特のため以下で解説していこう。

【資産配分】
毎月の掛金で「買付」できる商品は、1種類選んでも良いし、複数選んでも良い。iDeCoの特徴として、運用商品を選ぶことを「資産配分」と呼び、商品は「割合(%)」で指定する。iDeCoの手続きは原則WEBで行うが、操作方法など不明な場合はコールセンターでの問い合わせも可能だ。

例えば口座開設した運営管理機関に、運用商品A、B、C、D、Eの5種類があったとしよう。そのうちAだけを買付けする場合は、Aを100%と指定する。これは毎月の掛金1万円でAを購入するという意味だ。

1万円の掛金のうち、4000円でAを購入し、6000円でBを購入したいという場合は、Aを40%、Bを60%と指定する。一回配分を指定すると、毎月その配分の通りに買付けが実行される。

配分は割合で指定されるので、掛金を変更しても同じ割合で買付けされる。掛金が2万円に増額されると、Aは8000円、Bは1万2000円の買付けだ。

【配分変更】
毎月の買付けにおける配分の変更はいつでも可能だ。例えば増額の際に、Bを50%、Cを20%、Dを30%と指定すると、その月以降毎月Bが10000円、Cが4000円、Dが6000円ずつ買付けが実行される。これを「配分変更」と呼ぶ。Aはその後買付けされることなく、それまでの残高だけが残る。

【スイッチング】
Aの残高を一部あるいは全部売却して、Eを購入することもできる。この手続きは「スイッチング」と呼び、Aを売却、Eを買付けという指示をWEBで設定する。

元本確保型商品「定期預金、保険」の注意点とは?

iDeCoの運用商品には、定期預金や保険商品などの「元本確保型商品」という選択肢がある。

元本確保型商品は文字通り元本が割れることがない。例えば定期預金は、誰もがよく知っている銀行の定期預金をイメージしていただければ良い。

ただしiDeCoの場合、毎月新しい定期預金を始めることになる。例えば毎月の積立1万円を定期預金で運用すると決めれば、毎月1万円で新しい定期預金を始めることになる。4月からの1年定期が1万円、5月からの1年定期で1万円という具合だ。始まりが毎月ずれるので、満期も毎月ずれていく。

誰もが知っている定期預金で何をごちゃごちゃ書いているんだと思われるかも知れないが、満期が月ごとに異なるということは、定期預金を解約して別の商品に「スイッチング」したいなどと思った時、一括で定期を解約すると満期解約ができるものと満期日前解約となるものが出てします。結果満期日前解約の分は、中途解約利率が適用され当初の約束された金利より低くなるのだ。

それでも定期預金であれば、中途解約利率が適用になろうが元本が割れることは決してない。しかし保険商品の場合は、中途解約のタイミングによっては、いわゆる解約ペナルティがかかるので、元本を下回ることもあるので注意したい。

もう1点、元本確保型商品でありがちな失敗というのは、毎月金利が見直しされるという点だ。例えば、定期預金の金利は毎月見直しされるので、加入時に最も金利が高いと思って選んだ定期預金Aが、いつのまにか金利が下がっていていつの間にか定期預金Bの方が、金利が高くなっていたということもある。この金利が見直しされるという点は保険商品も同じだ。

元本変動型の運用商品とは

元本変動型商品とは、文字通り運用状況によっては元本が割れることもあるし、大きな利益を得ることもできる商品でiDeCoでは投資信託が用意されている。

運用というと株式投資をイメージする人も多いかと思うが、株式投資の場合、どの会社の株を買うか、売るかは投資家本人が行う。しかし投資信託は、ファンドマネージャーといういわば運用のプロが株の選定や売買のタイミングを決定する。投資家はファンドマネージャーの投資方針などを基に、どの投資信託を買うかを判断する。

投資信託は、投資家の資金がファンドマネージャーに集まるので、潤沢な資金により多くの株式に「分散投資」ができるというメリットもある。

個人で株を買う場合、資金力に限界があるので多くの会社に一度に投資をするのは難しい。例えば、100万円でA社の株を買うと、その会社が倒産してしまい全額を失ってしまうリスクがある。しかし、投資信託であれば、たくさんの会社に投資ができるので、倒産による損失を抑えることができるし、様々な会社に投資をすることで市場のチャンスを逃さず利益に結びつかせやすい。

投資信託は、投資対象でカテゴリー分類することができる。大きく、日本株式、日本債券、先進国株式、先進国債券に投資をする投資信託の4カテゴリーに分けることができ、伝統的4資産と呼ばれる。

これらのカテゴリーに分類される投資信託を「組み合わせる」ことで、投資先をさらに分散させることも可能だ。世界中に投資をすることにより、どこか特定の国や地域、会社に投資することにより起こり得る資産の大きな目減りを防ぐことができ、さらに世界経済の成長による恩恵を享受できる。資産形成でもっとも重要だと言われる「国際分散投資」が、iDeCoでは比較的手軽に実行できるのも魅力だ。

投資信託の選び方、分散投資については次回以降のコラムで詳しく紹介していく。

iDeCoの目的は節税ではない

iDeCoは税制優遇が大きいので、定期預金などの元本確保型を選んでも問題ないという人も多い。ムリをして投資信託で運用をして資産が目減りするより、安全運転の方が良いという解釈だ。

しかし、思い出して欲しい。iDeCoは節税のためにするのではなく、老後資産形成のために活用するのだ。老後資金としていつまでにいくらのお金を作る必要があるのか、そのためにいくらの積立を、どの程度の利回りで運用するかといった目的・目標意識をしっかり持っていただきたい。

転職時の「投資商品」選びは控えた方が良い

投資商品を選ぶのを控えた方が良いタイミングがあるのでぜひお伝えしておきたい。それは「転職」の時だ。

転職先に企業型確定拠出年金がある場合は、それまでのiDeCoの運用商品をすべて売却し、「現金」として資産移換をする必要がある。転職を考えている方は、タイミングを見ながら元本確保型に資産をスイッチングしておいた方が良いこともある。

例えば、日本株に投資をする投資信託で運用していた人が企業型確定拠出年金を導入している会社に転職すると入社のタイミングでiDeCoの加入資格を失い企業型確定拠出年金へ加入する。

するとiDeCoの口座で運用中の投資信託をそのままにしてはおけないため、売却をしなければならなくなる。企業型の手続きが始まってしまうと、自分でその売却のタイミングを選べず自動的に売却されてしまうので、万が一株価が暴落などしてしまったらそれまでの資産が目減りしてしまうリスクがあるからだ。

転職先に企業型確定拠出年金がなければ、そのままiDeCoを継続できるので問題は無く、企業型確定拠出年金導入の会社であっても、企業型に加入するかしないかを社員が選べる「選択制」の場合は必ずしも資産移換は必要ない。

転職は一生のうちに複数回起こりうることなので、自己防衛手段として頭の片隅にでも残しておいておきたいiDeCoの豆知識だ。

山中伸枝(やまなかのぶえ)
確定拠出年金相談ねっと代表 ファイナンシャルプランナー(CFP®)
1993年、米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからは自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、FPを目指す。著書:「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書(インプレス)ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本(翔泳社)他

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