iDeco,確定拠出年金
(写真=Aaban/Shutterstock.com)

目次

  1. はじめに
  2. iDeCoの特徴は有利な税制措置
  3. 第1の税制優遇 
  4. 第2の税制優遇「運用益非課税」の魅力
  5. 第3の税制優遇 
  6. トリプル税制優遇はiDeCoだけ

はじめに

2017年1月から、ほぼすべての現役世代が個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できるようになった。老後資金づくりの最強制度と絶賛されているが、まだあまり知らない人も多いのではないだろうか。

国民年金基金のまとめによると、iDeCoの加入者数は2018年8月末で約101万人。この数字を多いとみるか、少ないとみるかはさまざまな判断があるだろうが、国民の老後の資産作りのため、厚生労働省が5億円のもの予算をつぎ込み普及に乗り出していることを考えれば、少し寂しい数字だといえるかもしれない。

しかし、iDeCoは他の金融商品にはない税優遇措置があり、節税しながら資金を積み立てることができる。これは、特に多額の所得税を納めている人には見逃せない点だ。

安定した老後を迎えるために、ぜひiDeCoの活用を検討してほしい。

iDeCoの特徴は有利な税制措置

iDeCoって聞いたことはあるけれど、中身まではわからないという人のために、概要を説明しておこう。iDeCoとは確定拠出年金法に基づく私的年金で、各個人が自分で毎月決まった額を積み立てて老後のための資産を形成する。公的年金だけでは、老後の生活に不安があるといわれる中、国が個人の資産形成を後押しするために設けた制度だ。

維持最大の特徴は税制優遇措置で、掛け金や給付金は所得控除の対象となり、運用益も非課税。有利に資産を積み立てていくことができる。

この税制優遇措置がどれくらいすごいのか、見てみよう。

第1の税制優遇 

「全額所得控除」で税金が安く会社員の場合、毎月の給与から社会保険料や配偶者控除など様々な「経費」を差し引かれた後の金額を「所得」と言い、この所得に対して税金がかかる。ご存じの通り、所得税率は超過累進課税、所得が高くなればなるほど税率が上がる。以下は所得税を計算するために国税庁が提供している速算表だ。

【課税される所得金額 / 税率 / 控除額】
195万円以下 / 5% / 0円
195万円を超え、330万円以下 / 10% / 9万7500円
330万円を超え、695万円以下 / 20% / 42万7500円
695万円を超え、900万円以下 / 23% / 63万6000円
900万円を超え、1800万円以下 / 33% / 153万6000円
1800万円を超え、4000万円以下 / 40% / 279万6000円
4000万円超 / 45% / 479万6000円

例えば課税所得が800万円の場合は、税率が23%、控除額63万6000円なので、次の計算で税額が求められる。

800万円×0.23-63万6000円=120万4000円
つまり所得税は120万4000円だ。
一方、iDeCoでは国が認めた特別の口座に、老後資金を積立ていくが、その際、その積立金が全額「経費」として所得から差し引かれる。これが「掛金全額所得控除」という意味だ。掛金は自営業なのか、会社勤めなのか、などによって上限が決まっているのだが、一般的な会社員の場合は月2万3000円まで掛金を拠出(積立)することができる。つまり年間27万6000円までの積立金をすべて経費として所得から差し引く(控除)ことが可能なのだ。(会社員でも会社に企業年金がある場合、月の掛金上限は1万円2000円、企業型確定拠出年金に加入している場合は、会社により併用が認められるなど条件によって掛金上限額が異なる) だから、例えば所得800万円であれば、27万6000円を控除することにより課税所得は772万4000円になるので、さきほどの式で計算してみると、所得税は114万円になり、税金が6万4000円安くなる。このお金は、年末調整により還付される。更に住民税についても全額所得控除の対象となるため、翌年の住民税が安くなる。

この節税効果は、所得が高いほど大きくなる。これがiDeCoの第1の税制優遇だ。

第2の税制優遇「運用益非課税」の魅力