iDeco,確定拠出年金
(写真=Aaban/Shutterstock.com)

2017年1月から、ほぼすべての現役世代が加入できるようになったiDeCo(個人型確定拠出年金)。老後資金作りの最強制度!と絶賛されているこの制度だが、あなたは、もう始めているだろうか?

節税メリットを享受 「iDeCo」を知らない人は8割超

QUICK資産運用研究所が全国の20代から60代の約5000人を対象にして実施した「個人の資産形成に関する意識調査」によると、iDeCoを知らないと答えた人が実に8割超だったそうだ。厚生労働省が5億円もの予算をつぎ込み普及に乗り出しているというのにも関わらずこの状況なのだから、さぞ関係者は落胆したことだろう。

iDeCoとは個人型確定拠出年金の愛称であり、昨年、厚生労働省が公募で決定した。「老後のために、今できること(イデコ)」というキャッチフレーズで広報活動が始まっている。そもそも「確定拠出年金」は新しい制度ではなく、会社員の中には聞いたことがあるという人もいるだろう。

「うちの会社ってなんかそういう制度だったような……」と言う人は、おそらく「企業型」確定拠出年金の加入者だ。企業型とは会社が福利厚生制度として設けた会社独自の上乗せ年金制度。特典が大きいので、今すぐ会社に詳細を確認することをおススメする。

「なんか聞いたことがあるような、ないような……」そんなあなたは、ぜひこのコラムを参考にして頂きたい。またとない節税のメリットを享受できるチャンスだからだ。

iDeCo第1の税制優遇 「全額所得控除」のすごさ

会社員の場合、毎月の給与から社会保険料や配偶者控除など様々な「経費」を差し引かれた後の金額を「所得」と言い、この所得に対して税金がかかる。ご存じの通り、所得税率は超過累進課税、所得が高くなればなるほど税率が上がる仕組みだ。以下は所得税を計算するために国税庁が提供している速算表だ。

【課税される所得金額 / 税率 / 控除額】
195万円以下 / 5% / 0円
195万円を超え、330万円以下 / 10% / 9万7500円
330万円を超え、695万円以下 / 20% / 42万7500円
695万円を超え、900万円以下 / 23% / 63万6000円
900万円を超え、800万円以下 / 33% / 153万6000円
1800万円を超え、4000万円以下 / 40% / 279万6000円
4000万円超 / 45% / 479万6000円

例えば課税所得が300万円の方の場合は、195万円までの所得に対して5%、195万円を超えた部分に対してかかる税率が10%と段階的に上がる。この速算表では、所得300万円であれば税率10%をかけて、9万7500円を差し引くことで税額を計算することができる。つまり所得税は20万2500円だ。

iDeCoとは国が認めた特別の口座に、老後資金を積立ていく仕組みだ。その際、その積立金が全額「経費」として所得から差し引かれる。これが「掛金全額所得控除」という意味だ。

iDeCoの掛金は立場によって上限が決まっているのだが、一般的な会社員の場合は月2万3000円まで掛金を拠出(積立)することができる。つまり年間27万6000円までの貯金をするとそれをすべて経費として所得から差し引くことが可能なのだ。(会社員でも会社に企業年金がある場合、月の掛金上限は1万円2000円、企業型確定拠出年金に加入している場合は、会社により併用が認められるなど立場によって掛金上限額が異なる。詳しくは第3回のコラムで説明する。)

前述の所得300万円であれば、27万6000円を経費とすることにより10%、つまり2万7600円の節税が可能になる。このお金は、年末調整により還付される。更に税率10%の住民税についても全額所得控除となるため、翌年の住民税が2万7600円安くなる。

節税効果を利回りに例えると、iDeCoは確定利回り20%の金融商品と言える。これがiDeCoの第1の税制優遇だ。

iDeCo 第2の税制優遇「運用益非課税」の魅力

銀行預金をするとわずかであるが金利が付く。そしてそのわずかな利息からも20.315%の利子税が差し引かれる。長く続く低金利、これではなかなかお金が貯まらない訳だ。

iDeCoは専用の積立口座の中にいくつかの金融商品が用意されており、加入者は自由にそれらを選ぶことができる。

例えばiDeCoの口座で定期預金を選ぶと、その利息から20.315%の税金が引かれることなく付いた利息全額が元本に組み込まれ複利で次の運用に回る。この特典は60歳(希望により70歳までの期間延長は可能)まで継続する。

残念ながらiDeCoの定期預金も普通の銀行金利とさほど変わらないが、他にも投資信託といった運用商品もあるのでそれらを上手に活用することで、運用益非課税のメリットは更に多くなる。

iDeCo第3の税制優遇 受取時の「退職所得控除と公的年金控除」

iDeCoは60歳以降70歳までの10年間に、任意のタイミングで受け取りをする。その際、「一時金、年金、一時金と年金の併用」の3つの方法が選択できる。一時金で受け取る際は退職金扱いとなり、年金で受け取る際は公的年金扱いとなる。

退職金は勤続年数が長くなればなるほど税負担が軽くなるよう次のような計算式になっている。

退職所得の金額(分離課税)=(退職金-退職所得控除※)×1/2
※退職所得控除=勤続年数×70万円-600万円

例えば勤続30年の場合、退職金から1500万円(=30年×70万円-600万円)の退職所得控除を差し引くことができる。仮に退職金が2000万円であれば、1500万円の退職所得控除を差し引き、さらにその2分の1が課税対象となるので、退職所得は250万円だ。これを前述の所得税の速算表に当てはめると、15万2500円が納税額と分かる。

ここで注目したいのが、退職金が分離課税である点だ。原則同じ年に給与等があると全て合算されるのだが、退職金はその他の所得と「分離」される。超過累進課税において、これはとても有利な仕組みだ。

ここで話を、iDeCoに戻そう。iDeCoを一時金として受け取る際、「加入期間」が退職所得控除における勤続年数と読み替えて計算される。加入期間は転職してもiDeCoに加入している限りすべての期間が通算されるので、早く始めるとその分退職所得控除が増える。

また年金として「公的年金控除」の扱いを受ける際も、通常の所得より優遇される。例えば60歳から65歳までの「無年金期間」にiDeCoを分割で受け取れば年間70万円までは非課税だ。受け取り金額によっては一時金と年金を併用することも可能で、税の仕組みを活用することで大きな節税効果が得られる。

トリプル税制優遇はiDeCoだけ

生命保険会社が販売する個人年金保険は掛金が所得控除の対象だが、iDeCoと異なり控除額は4万円が上限である。運用益非課税となる点はNISA(少額投資非課税制度)も同じだが、非課税期間はわずか5年間だ。退職金は税制優遇があるが、そもそも退職金制度がない会社であればそのメリットは享受できない。

つまり、iDeCoは老後資金作りにおいては最強の仕組みなのだ。もしあなたが未来の自分への仕送りを考えているのであれば、iDeCoは知らないなんてありえない!すぐに始めなければならない最優先事項なのだ。

山中伸枝(やまなかのぶえ)
確定拠出年金相談ねっと代表 ファイナンシャルプランナー(CFP®)
1993年、米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからは自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、FPを目指す。著書:「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書(インプレス)ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本(翔泳社)他

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