「楽天・バンガード・ファンド」の純資産総額が2,000億円を突破した。2017年9月の設定以来、順調に純資産を伸ばしている。同ファンドシリーズが評価される理由は何か。他のインデックスファンドシリーズと比較しながら、特徴を見ていこう。
1.楽天・バンガード・ファンドはインデックスファンドを揃えたシリーズ商品
「楽天・バンガード・ファンド」とは、楽天投信投資顧問株式会社(以降「楽天投信」)とバンガード・インベストメンツ・ジャパン株式会社(以降「バンガード社」)が立ち上げたインデックスファンドシリーズだ。まずは「インデックスファンドとは何か」について解説する。
インデックスファンドは特定の指数をベンチマークとして運用されるファンド
インデックスファンドとは、特定の指標(インデックス)と同じ値動きをするよう運用される投資信託のことである。株式指数では日経平均株価やNYダウ、モルガンスタンレー社が発表している「MSCIコクサイインデックス」や「MSCIワールドインデックス」、債券指数では「ノムラBPI総合指数」や「シティグループ世界国債インデックス」などが指標として使われることが多い。これらの指数をベンチマーク(基準・尺度)として運用されるのが、インデックスファンドである。インデックスファンド以外の投資信託は、「アクティブファンド」と呼ばれる。
インデックスファンドのメリット
インデックスファンドの長所は、1つの投資信託で広く分散投資ができることと、手数料(信託報酬)が安いことだ。例えば日経平均株価に連動する投資信託を購入することは、東証一部上場225銘柄全体に投資するのと同じ意味を持つ。
インデックスファンドはコストが安い。構成銘柄とその比率を一つひとつを吟味しなければならないアクティブファンドと違い、ベンチマークの動きに連動するように運用するだけなので、手間も調査費用もかからないからだ。
2.楽天・バンガード・ファンドの特徴
楽天・バンガード・ファンドは、インデックスファンドを揃えたシリーズ商品である。どのような特徴があるのだろうか。
楽天・バンガード・ファンドはバンガード社のETFを活用
楽天・バンガード・ファンドシリーズの特徴は、バンガード社のETF(上場投資信託)を主な投資対象にしている点にある。
バンガード社の展開するインデックスファンドは、実に世界シェアの40%を占める。1975年の発売当初より「長期・分散・低コスト」を運用哲学としており、世界中の投資家から支持されている。楽天と連携したことで、日本の個人投資家が手軽に買えるようになった。
楽天・バンガード・ファンドの商品一覧
楽天・バンガード・ファンドシリーズは、以下の8本のインデックスファンドを展開している(2020年9月現在)。
ファンド名 | 分類 | 純資産総額 (億円) |
楽天・全世界株式インデックス・ファンド | 内外株式 インデックス型 |
497.68 |
楽天・全米株式インデックス・ファンド | 海外株式 インデックス型 |
1,340.82 |
楽天・新興国株式インデックス・ファンド | 海外株式 インデックス型 |
12.63 |
楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド | 海外株式 インデックス型 |
27.81 |
楽天・全世界債券インデックス(為替ヘッジ)ファンド | 内外債券 インデックス型 |
2.14 |
楽天・インデックス・バランス・ファンド (株式重視型) |
内外 資産複合 |
52.20 |
楽天・インデックス・バランス・ファンド (均等型) |
内外 資産複合 |
9.67 |
楽天・インデックス・バランス・ファンド (債券重視型) |
内外 資産複合 |
15.19 |
内訳は株式型が4銘柄、債券型が1銘柄、バランス型が3銘柄だ。株式型は、全世界・米国・新興国・米国高配当銘柄のように、地域によって分かれている。現在人気があるのは米国株式で、債券型は全世界のみだ。バランス型は、株式と債券の組み入れ比率によって3種類に分けられている。
つみたてNISA(積立NISA)で買える楽天・バンガード・ファンドは5銘柄
バンガード社のインデックスファンドは長期分散投資向けに作られているので、つみたてNISAの制度とも親和性がある。現に、183本しかないつみたてNISA対象商品のうち、楽天・バンガード・ファンドは5本も採用されている。
· 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
· 楽天・全米株式インデックス・ファンド
· 楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型)
· 楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)
· 楽天・インデックス・バランス・ファンド(債券重視型)
すべての証券会社でこれらの商品が買えるとは限らないが、少なくとも楽天証券・SBI証券・マネックス証券・松井証券といった主要証券会社では、5本とも取り扱っている。
iDeCo(イデコ)で買える楽天・バンガード・ファンドは2銘柄
つみたてNISAと並ぶ税制優遇制度で、私的年金でもあるiDeCoではどうだろうか。現在のところ、対象になっているのは以下の2銘柄だけだ。楽天証券のiDeCo口座から購入できる。
· 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
· 楽天・全米株式インデックス・ファンド
3.楽天・バンガード・ファンドで注目の2銘柄
楽天・バンガード・ファンドの中で特に注目度が高いのが、全世界株式と全米株式を対象にする銘柄だ。どちらも、つみたてNISAや楽天証券のiDeCoで購入することができる。それぞれの特徴を解説する。
楽天・全米株式インデックス・ファンド……楽天・バンガード・ファンドの中で純資産総額が最も多い
楽天・全米株式インデックス・ファンドの愛称は、「楽天・バンガード・ファンド(全米株式)」。楽天・バンガード・ファンドの中で、純資産総額が最も多い。「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」に連動することで、米国株式市場全体に投資する。
同じく全米株式市場の動きを表すS&P500との大きな違いは、対象銘柄のバラエティである。S&P500は大型株が中心であるのに対し、CRSP USトータル・マーケット・インデックスは中型・小型・超小型株を含む約4,000銘柄を網羅している。
信託報酬は年0.1296%(税込)と、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の年0.0968%(税込)には及ばないが、同カテゴリの投信の中ではかなり低コストといえるだろう。
楽天・全世界株式インデックス・ファンド……つみたてNISAでFTSE全世界株式指数を採用している希少銘柄
楽天・全世界株式インデックス・ファンドの愛称は、「楽天・バンガード・ファンド(全世界株式)」だ。「楽天・バンガード・ファンド(全米株式)」に次いで純資産総額が多い、主力商品である。「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(FTSE全世界株式指数)」に連動することで、日本や新興国を含む全世界に投資する。
全世界をカバーする指数には「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」もあるが、こちらは各国市場の時価総額上位約85%を占めるのに対し、FTSEは90~95%であり、対象国には中東やアフリカも含まれる。どちらが良いというわけではないが、新興国を重視しつつ全世界に投資したいのであれば、FTSEのほうがよいだろう。
なお、つみたてNISAでFTSE全世界株式指数を採用している銘柄は、「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」と「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」しかない。
4.楽天・バンガード・ファンドと他のインデックスファンドシリーズを比較
インデックスファンドの人気の高まりから、最近では多くの運用会社がシリーズ化して展開するようになった。楽天・バンガード・ファンドもその一つである。
楽天・バンガード・ファンドと他のシリーズの純資産残高を比較
楽天・バンガード・ファンドシリーズは、インデックスファンドとしては後発ながら健闘している。インデックス・バランスファンドをシリーズ別に純資産残高を集計すると、以下のような順位になる。(2020年9月7日時点)。
インデックスファンド別シェアランキング
シリーズ名 | 運用会社 | ファンド数 | |
1位 | eMAXIS(イーマクシス)シリーズ | 三菱UFJ国際投信 | 59 |
2位 | SMT(スマート)インデックスシリーズ | 三井住友トラスト・ アセットマネジメント |
12 |
3位 | <購入・換金手数料なし>シリーズ | ニッセイアセット マネジメント |
37 |
4位 | たわらノーロード | アセットマネジメント One |
34 |
5位 | 楽天・バンガード・ファンド | 楽天投信投資 | 8 |
楽天・バンガード・ファンドは、現在のところ5番手につけている。ファンド本数が少なく、設定されてからあまり時間が経っていない割には健闘しているといえるだろう。上位のeMAXISシリーズやSMTインデックスシリーズは2009年~2010年にスタートしているが、楽天・バンガード・ファンドは2017年からだ。
コスト面ではどうだろうか。昨今、信託報酬引き下げ競争が激しくなっている。楽天・バンガード・ファンドも十分安いが、どのカテゴリにおいても最安ではない。ただし、いくつかの銘柄においては段階的に信託報酬率の引き下げが実施されており、今後もこの流れは続くと考えられる。
バンガード社の日本拠点撤退のニュースが気になるところだが、楽天投信の公式見解では楽天・バンガード・ファンドの運用には一切影響がないとのことだ。
執筆・篠田わかな(ファイナンシャルプランナー)
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
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