日本では2016年2月にマイナス金利が導入されて以降、普通預金金利は0.001%とまで低下し、ほぼゼロの状況だ。一方、海外に目を向けると、0.2%程度から数%を超えるまで、魅力的な金融商品も多い。

例えば、ドナルド・トランプ大統領が誕生した米国では、米国経済の好調さから一年ぶりに利上げが行われて、日本に比べれば金利水準は高くなってきている。さらに、米国では更に景気が回復するのではないかという期待から、ドル円相場では一時1ドル118円台まで米ドルが買われ、円安ドル高が進んだ。

しかし、シリアや朝鮮半島で地政学リスクが高まっている現状、投資マネーはリスク回避の動きから米ドルが売られている。一方で、消去法的に日本円が買われ、ドル円相場では急激な円高ドル安が進行している。わずか数カ月前には1米ドル118円台だったドル円相場は、現在は1米ドル110円を割り込み、108円台まで米ドルが売られている。

為替相場で円高が進むと、外貨投資を考える人が増え始める。街中に存在する外貨ショップで、外貨を買い求める様子を見たことがある人も多いのではないだろうか。そこで今回は、外貨投資を始める際に押さえておきたい為替相場の基本と、儲けるためのテクニックを考えてみたい。

為替レートとは

世界各地の外国為替市場は、東京やニューヨーク、ロンドン等のどこかで24時間開いていて、為替相場は時々刻々と変化している。これらの市場で通貨を売買するわけだが、通貨を交換する比率のことを為替レートと言う。銀行や証券会社、外貨ショップ等にある為替ボードに「1米ドル110.50円」等と表示されている為替レートの数字を見たことがある人も多いことだろう。

外貨の購入や外貨預金等、為替ボードに表示されている為替レートは、実際の為替レートとは異なる。あらかじめ取引の手数料を加えた数値が表示されているからだ。一般的に、外貨預金では購入時に1円、売却時に1円の手数料が発生する。

外貨を購入、いわゆる投資を行えば、購入した時から売却するまで為替レートは絶えず変動しているため、損益も常に変動している。為替レートの変動次第では、利益が発生する場合もあるが、損失を被る場合もある。一般的に、これを為替変動リスクと言う。

円高、円安とは どういう場合に損するのか?

具体的に、どのような場合に損失が発生するのかを考えてみよう。

為替レートが1米ドル110円だと仮定した場合、120円になれば円安ドル高となり、100円になれば円高ドル安になる。例えば、昨日までは110円で買えた品物があった場合、為替レートが1米ドル110円から120円と円安ドル高に動くと、今日から120円を出さなければ買えなくなる。日本円で考えれば、10円余分に支払わなければならなくなったが、米ドルから見れば昨日まで1ドルで110円分しか買えなかったものが120円分買えるようになる。円の価値が安くなった反面、米ドルが強くなったと考えられる。

反対に、1米ドル110円から100円と円高ドル安に動いた場合には、今日から100円で買えるようになる。日本円で考えれば、10円少ない金額で買えるため円の価値は強くなったが、米ドルは10円少なくしか買えなくなったため米ドルの価値は安くなったと考えられる。

外貨預金で米ドルを購入した場合で考えてみよう。購入した時点よりも、為替レートが円安ドル高に動けば利益が発生するが、円高ドル安に動けば損失が発生する。

金利がどんなに高くても、為替相場の動き次第では、金利収入以上に為替レートが変動する場合もある。外貨預金や外国債券等の金利の高さは魅力的に見えるかもしれない。しかし、金利は外貨ベースでの数値であることを忘れてはならない。さらに、為替レートの変動次第では、金利収入も増減する。外貨ベースでどれだけの金利収入が見込めるのか、事前に計算しておきたい。

外貨投資で利益を得るための2つのテクニック

そこで、筆者が考える外貨投資で利益を得るために最低限やっておきたい2つのテクニックを紹介したい。

①投資する時の為替動向を考える

為替相場の目先の動きにとらわれるのではなく、より大きな時間軸での価格の動きを確認したい。例えばドル円相場であれば、円安ドル高が進行しているのか、それとも円高ドル安が進行しているのか、という風に大きな流れを確認する。

大きな流れが重要な理由は、価格の動きは反転するまでしばらくはその動きが継続する場合が多い。円高ドル安が進行しているのであれば、わざわざ為替差損を被るために外貨を購入していることになるが、円安ドル高が進行している時であれば、利益が発生しやすい環境だからだ。

必ず為替相場が考えていた通りに動くわけではないが、何も考えずに投資するよりはマシだ。半年から1年程度の為替相場の動きを、為替の動きを図表化したチャートを見れば把握しやすいだろう。

②損益分岐点を事前に調べておく

外貨に投資する場合、金利の高さに惑わされてしまいがちだが、必ず「日本円に戻した時にいくらの利益が出るのか」「利益を出すための為替レートはいくらなのか」という点をあらかじめ把握しておきたい。

損益分岐点を事前に調べておけば、①で為替レートを考える時に「この程度までなら為替が変動しても大丈夫」という目安を把握できる。為替の動きに一喜一憂しないためにも、事前に損益分岐点を調べておきたい。

損益分岐点は以下の公式で求めることができる。

損益がトントンになる分岐点(為替レート)=日本円で投資する金額÷将来自分のものになる外貨建てでの金額

注意点もある。外貨預金や外国債券、FX(外国為替証拠金取引)等の外貨投資では、金利の高さに魅力を感じるかもしれない。しかし、景気がいいから金利が高い場合もあれば、国内情勢が不安定だから外貨を獲得するために金利が高い場合もある。後者であれば、金利以上に為替変動リスクが発生する場合もある。

なぜ金利が高いのかを事前に調査しなければならない。外貨投資では常にリスクが存在するため、損失を被るリスクを低減しつつ投資を行いたい。

横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、 メルマガ発行 、講演活動、株塾を行う。