「価格破壊」と聞くとどんな商品を思い浮かべるだろうか。

筆者はメガネほど価格破壊の激しい商品はないと考えている。メガネとつきあって40年近くになるが、バブルの頃はブランドフレームに超薄型のレンズをつけて約4万円、受け取りは1週間後だった。それが2000年頃には韓国旅行でメガネを注文すると3000円で、1時間で作れるようになっていた。日本のメガネ市場を価格破壊が席巻するのにそう時間はかからなかった。

今回は、メガネチェーン店「JINS」などを運営するジンズ(JINS) <3046> と業界の移り変わりを見てみよう。

既存店売上が回復、再び成長路線を進む

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

ジンズは元々ジェイアイエヌ(JIN)という社名だった。今年4月1日にブランド名「JINS」と統一しジンズに変更した。

4月13日、同社が発表した2017年8月期中間決算(9〜2月)は、売上が11%増の238億円、本業の利益を示す営業利益が70%増の20億円と絶好調だった。通期の会社予想の売上は10%増の510億円、営業利益は42%増の52億円を見込んでいる。

JINSは、PC用のブルーライトカットのメガネが大ヒットして、2013年8月期に過去最高益を記録している。売上366億円、営業利益が62億円だった。その後、大ヒットの反動からやや低迷する時期もみられたが、再び成長路線に乗ってきたようだ。

既存店ベースでみても回復は顕著だ。2013年8月期はPCメガネの好調で既存店売上が31.4%も増加した。その反動からか、2015年8月期は同4.1%減にスローダウン。しかし、2016年8月期になると4.9%増と再びプラスに転じ、今2017年8月上期も4.2%増と好調を保っている。外部デザイナーで大幅リニューアルした定番商品や、花粉対応、スポーツ対応のメガネなどが好調だ。

上場メガネ会社ではJINSが一人勝ち

メガネ業界の上場企業といえば、JINSのほかに三城ホールディングス <7455> 、メガネスーパー <3318> 、愛眼 <9854> がある。メガネトップもかつて東証1部に上場していたが、2013年に創業者によるMBOで上場廃止になった。メガネトップがMBOを決断したのには、JINSなど新興メガネメーカーによる価格破壊で業績が厳しくなり株価が急落したことも一因かも知れない。

ちなみに、国内アイウェアの市場規模は約5000億円。2016年の各社の売上から筆者が市場シェアを計算してみると、第1位がメガネトップの約14%、2位がパリミキ(メガネの三城)の約11%、3位がJINSの約9%。以下、4位ZOFF、5位愛眼、6位メガネスーパーとなっている。

JINSの決算が好調なのに対し、三城HDと愛眼の今期の業績は赤字予想だ。メガネの低価格化による採算悪化から立ち直れていない。メガネスーパーは2008年から2015年4月期まで最終赤字を計上、投資ファンドのもとに再建中で、2016年4月に一旦黒字に転じた。今期もかろうじて黒字予想ではあるが厳しい状況に変わりはないだろう。

価格破壊をチャンスに変える

2001年にZOFF1号店が下北沢で、同じくJINS1号店が福岡に開店した。この2社は、メガネ業界にSPA(製造小売)という、アパレルでユニクロなどが行い成長したモデルを持ち込んだ。フレームは中国、レンズは韓国などから調達し、デザインにこだわり破壊的な価格でメガネを売り出すことで一気にシェアを拡大したのである。

冒頭でも述べた通り、筆者は2000年頃の韓国旅行の際にメガネの安さに驚き、感動したものである。一人の消費者として、3000円のメガネは大歓迎だ。しかし、一方で価格破壊は企業に「勝ち組」と「負け組」をもたらす。両者の違いを決定づけるものは何だろうか?

恐らく、既成概念にとらわれず、企業家としての目線から「3000円の喜びを皆に伝える」戦略を考えられるかが、価格破壊をチャンスに変える鍵になるのではなかろうか。上場メガネ会社の中でJINSが「一人勝ちを続ける理由」がそこにあるように感じられる。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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