「はたらけど はたらけど 猶わが生活楽にならざり ぢっと手を見る」

石川啄木『一握の砂』にある有名な有名な短歌の一つだ。
最近は貧困といった言葉を耳にする機会も多い。それだけ現状の生活に不満を抱き、将来や現状に不安を感じている人が多いということだろうか。

金融広報中央委員会が行った「家計の金融行動に関する世論調査(2016年)(2人以上世帯)」によると、世帯の金融資産の平均値は1078万円とのこと。その一方で、金融資産を保有していない世帯つまり貯蓄ゼロ世帯は30.9%と、3割を超える状況だ。

貯蓄がなければ、日々の生活や将来に不安を感じ、精神的に追いつめられることもあるかもしれない。収入を増やすために、仕事を掛け持ちして昼夜を問わず働く方法や、節約に節約を重ね、日々の生活を切り詰める方法もある。どちらも悪くはないが、心身を削る方法では心身が疲弊しかねない。発想を転換し、自ら働かずに収入を増やす方法を考えてみてはどうだろうか?

「働かないで得られる収入なんてないだろう」と思う人も多いかもしれないが、そんなことはない。自ら働かずに収入を増やす、いわゆる「不労収入」を得られる仕組みを作れば、お金持ちになることも不可能ではない。

不労収入とは文字通り、自分で働かないで得られる収入のこと。例えば不動産投資を行えば、自らは働かなくても月々家賃収入が入ってくるようになる。つまり、家賃収入が不労収入にあたる。

他には、配当金を株主に支払っている株式に投資すれば、決められた期日に配当金を得られるようになる。個人投資家の人気を集める株主優待も、視点を変えれば不労収入と言ってもよいだろう。投資信託なら分配金、債券なら金利収入が不労収入にあたる。さらに、作詞作曲で著作権料、執筆で印税等も、自らの才能を活かす形で不労収入を得ることができる。

あなたのお金、何年で2倍にしたいですか?

投資,不労所得
(写真=PIXTA)

「不労収入は魅力的だが、だからと言って投資は不安」等と考える人は多いかもしれない。しかし、2016年にマイナス金利が導入されて以降、国内の預金金利はほぼゼロの水準だ。大手都市銀行の定期預金金利は0.01%、普通預金は0.001%という状況だ。1000万円を1年定期に預けても受け取れるのは僅か1000円。平均貯蓄1078万円があっても、それを定期預金に預けていてはほとんど増えないのが現実だ。

株式投資では購入した時から2倍、3倍に株価が値上がりすることは珍しくはない。時には10倍、いわゆるテンバガーに成長する株式もある。定期預金に預けて2倍に増やすことがどれほど困難を極めることなのか考えてみたい。

お金を2倍に増やす金融商品や、お金を2倍に増やすための運用期間を把握する時には、お金を2倍にする「72の法則」を活用する。算出式は下記の通りだ。

金利(%)×年数(年)=72

マイナス金利が導入されて以降、国内では超低金利が長引いているが、そんな中、高金利だと注目を集める金融商品の一つが個人向け国債だ。下限金利が決まっていて0.05%だ。算出式に当てはめて、個人向け国債の金利0.05%で運用した場合、2倍に資産を増やせるのは何年後かを計算してみる。

金利(%)×年数(年)=72
0.05×年数(年)=72
年数(年)=72÷0.05=1440

高金利だと言われている個人向け国債でも1440年かかる状況で、我々が生きている間に金融資産を2倍に増やすことは到底不可能である。では、20年後に2倍に増やすためには金利水準は何%の金融商品なのか計算してみる。

金利(%)×年数(年)=72
金利(%)×20=72
金利(%)=72÷20=3.6%

20年という長い目で金融資産を2倍に増やそうと思った場合でも、3.6%程度の金融商品で運用しなければならないことがわかる。それぞれ許容できるリスクの大きさは異なるため、一概に「この金利だから、これだけの運用期間だから、この金融商品がベスト」と選ぶことは難しいかもしれない。しかし、何も知らないで貯蓄や投資をするよりも、目的を持って運用していかなければ現状は何も変わらないのだ。

「ゆとりある生活」のために目指すべき最終形

不労収入を得て、お金持ちとまではいかなくてもゆとりある生活を送るために、目指すべき最終形をまずは明確にしておきたい。

お金持ちは一般的に、以下の3つに分けられるだろう。

①金融資産が元からあるお金持ち(=地主等の資産家)
②収入が多いお金持ち(=高収入)
③収入が多く、金融資産も多いお金持ち(=収入から運用して資産を増やす)

目標は③であり、働きながらまずは金融資産を増やす。そのために筆者が考える最低限やるべき行動を伝授したい。

1. 生活を見直し、種銭をつくる

貯蓄ゼロ世帯が3割にも上る現状、種銭がない世帯も多いかもしれない。収入に対して支出が多いから貯蓄がゼロになる。まずは生活を見直しつつ節約を行うことから始める。そして、積立定期等を利用して強制的に種銭をつくる。まずは月5000円、1万円から始めて、50万円できれば100万円を目標に、まとまった種銭を作ろう。

2. インカムゲイン狙いで投資する

株式投資や投資信託等、価格が変動する金融商品に投資する場合は、値上がり益であるキャピタルゲインではなく、定期的に得られる配当金や分配金、いわゆるインカムゲインに注目して投資を行うことが大切だ。

インカムゲインの場合は、受け取れる金額の多い少ないではなく、投資金額に対して効率よく運用できるように利回りの高い銘柄を選択したい。配当金等を受け取るための権利確定日をわざとずらすことで、毎月のように不労収入が受け取れる仕組みを構築する。

例えば、高配当の株式を探す場合は、インターネットで銘柄を検索する機能=スクリーニング機能を使うとよいだろう。検索する際に、希望する配当利回りの数字を入力することで、銘柄を簡単にピックアップできる。配当金を出している企業には、株主優待制度を導入している場合が多い。株主優待を考える場合も優待品を金額に換算し、利回りベースで考えたい。

不労所得の仕組み作りを

ある程度の金融資産になれば、不動産投資を考える人も多いだろう。不動産投資の場合、物件によっては数千万円以上から数億円にも上る。多くの場合は金融機関からの融資、つまり、ローンを利用することになる。

通常、融資を受けるための審査の条件の一つとして「勤続年数が3年」がある。つまり、融資を受けるためには何が何でも3年働く。そして、その3年間で頭金や諸費用等の金融資産を準備したい。

マイナス金利時代だからこそ自らがアンテナを張り巡らせて、資産運用に循環をもたらす不労収入の仕組み作りをしなければならない。お金持ちを目指して、不労収入の仕組みづくりを始めてみてはいかがだろうか。

横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、 メルマガ発行 、講演活動、株塾を行う。