吉野家の株価が急騰している。4月3日の直近安値から3週間で17%上げ08年2月以来9年ぶりの高値だ。狂牛病問題で牛肉関係業界が大打撃を受ける前の株価を回復しつつある。株価急騰を牽引しているのは実は「牛丼」ではなく、「はなまるうどん」だ。うどんの吉野家について分析してみよう。

吉野家の株価上昇のきっかけは下方修正?

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(画像=Webサイトより)

吉野家HD <9681> が4月11日に発表した17年2月期の決算によると、売上は1.6%増の1886億円、本業の利益を示す営業利益は15.6%増の19億円と外食業界においては決して悪い決算ではなかった。もっとも、会社予想売上1930億円を2.3%、営業利益の34億円を45.1%も下方修正しため印象はよくなかった。大幅な下方修正なら翌日の株価は売り気配となることが多いが、吉野家は翌日なぜか買いを集め42円(2.6%)高の1651円で引けた。

人気化した原因は、今18年2月期の今期ガイダンスが市場の予想を上回る強気だったからだ。売上は7.1%増の2020億円、営業利益は2.4倍の44億円と大幅増益を予想してきた。

その後も吉野家株には買いが継続、4月28日には1825円と年初来高値を更新している。08年2月以来9年ぶりの高値だ。吉野家がデフレの象徴としてそれまで400円していた牛丼を需要喚起のために280円にドラスティックに下げたのが01年夏。01年末には狂牛病(BSE)問題も起き、牛肉関連業界は壊滅的なダメージを受ける。吉野家の株価も前年00年高値の2500円から1540円まで下げた。現在の株価は、その頃の株価を回復してきている。

吉野家の売り上げを牽引する「はなまる」

吉野家が牛丼チェーンだけをやっていると思っている人も多いだろう。吉野家HDは持ち株会社で、多角化を進めている。傘下に牛丼の「吉野家」の他に、「京樽」「すし三崎港」「すし三崎丸」などを経営する京樽グループ、「フォルクス」「ステーキのどん」「しゃぶしゃぶ どん亭」などを擁するアークミール、そして讃岐うどんの「はなまる」を持っている。

吉野家の業績を牽引するのは、はなまるうどんだ。はなまるうどんは01年にうどんの本場香川県高松で創業し、04年に吉野家HDと資本業務提携、06年には吉野家HDが51%保有の筆頭株主となり連結子会社になった。

前17年2月期の吉野家HDの売上は前年度比で29億円増収だった。セグメント別では、牛丼の吉野家の売上が17億円増、はなまるが24億円増、京樽が7億円増、アークミールが14億円減。はなまるが最も伸びている。

既存店売上も好調で積極出店を続けるはなまる

外食の現況を判断するのに一番重要な指標は既存店の動向だ。

吉野家HDの前期の既存店は、吉野家が前年度比0.8%増、はなまるが1.5%増、アークミールが1.8%増、京樽が0.8%増。牛丼業界は伸び悩んでいるのに対し、うどんと肉は絶好調だ。 吉野家も讃岐うどんの丸亀製麺を経営するトリドール <3397> の快進撃や肉ブームを黙って見ているわけではない。

既存店の伸び以上に、売上増に貢献しているのは出店ラッシュだ。前期で吉野家HDは全業態で、216店を出店、93店を退店、トータルはネットで151店増で2月末の店舗数は3074店となった。

積極出店を続けているのは、はなまると海外だ。はなまるは前期52店を新規出店し、ネットで42店増の432店となった。吉野家がネットで19店増の1207店。規模では吉野家にまだまだ及ばないが、出店ペースは倍以上だ。海外店舗もアジア中心に出店数を増やしており、ネットで58店増の733店舗となっている。

今期の計画でも、吉野家が12店増なのに対し、はなまるは46店増、海外は105店の新規出店を見込んでいる。 出店ペースを見る限り、吉野家がうどんと海外で成長のドライバーと考えていることが明らかだ。

もはや牛丼はハイテク時代に

吉野家は人手不足問題を解決するためにテクノロジーを活用した次世代店舗をテストしている。注文は音声認識で入力され、WiFiを通じて従業員が対応、ロボットが牛丼を作ったり、皿を洗ったりする実験店舗だ。海外でもアメリカでオーダーメイド型式の店舗やシンガポールでテイクアウト専門店のようなニュースタイルの実験店をすすめている。はなまるの牽引、海外展開とIT化で吉野家HDが変貌することを株価は先取りしているのかもしれない。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

【訂正】予想営業利益の額を訂正たしました。

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