友人をつくるなら

残念な営業マンは、社内に友人をつくる
できる営業マンは、社外に友人をつくる
一流の営業マンは、年下の友人をつくる

(本記事は、高野孝之氏の著書『プロフェッショナルが実践している営業の哲学』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています)

10年後を見据えた組織づくりを目指す

営業の哲学,富裕層
(写真=PIXTA)

先述しましたが、私は30代後半のとき、米国ニューヨーク州にあるIBM本社のコーポレートストラテジー(企業戦略部門)に赴任しました。

赴任する1か月前、私は人事担当取締役のSさんから呼ばれて辞令を受け取り、海外赴任において大切な3つのポイントを教わりました。

・海外で住んで仕事をすることで、異文化を肌で感じて学ぶこと
・海外で生活すると、自動車事故など危険なこともあるので無事帰国すること
・IBM本社では、自分より年下の友人をつくること

しかし、ポイントの3つ目を奇妙に思った私は、その場で「なぜ、年下の友をつくるのですか? 」とSさんに質問しました。

Sさんの答えは、大変シンプルなものでした。

「今後、20年以上、あなたが会社で働くことを考えてください。今、50代のエグゼクティブは、権限も責任も大きい仕事をしているけれど、10年後はどうだろうか? おそらく、退社している可能性が高いよね。そうであるなら、あなたと同じ年か年下の友人をIBM本社につくれば、あなたの将来に役立つよき友人ができるよね」

深く納得した私は、Sさんのアドバイスを守って、1年余りの米国本社勤務時代にたくさんの友人をつくりました。日本に戻った後も、私は米国にいる彼らとの交友関係を続け、仕事をする上で大いに助けてもらいました。

会社で「年下の友人」をつくるための秘訣は、年下の人を上から目線で見たり、接したりしないことです。組織上は部下になるので、彼らに業務上の指示を出したり、教育したりはしますが、「人間的には、自分と彼らは対等である」と常に考えていました。そのため、「部下」という言葉を社内で一切使わず、常に彼らを「メンバー」と呼んでいました。

営業という仕事の大半は個人個人にノルマが課されるため、営業マンは「自分一人の力で何とかしなければ」と考えがちになります。たまには上司や先輩に頼ることがあっても、後輩を頼るようなことはまずないでしょう。

でも実際は、後輩達の若い感性からたくさんの学びを得ることができますし、新しい技術やビジネスモデルに対する知識は、若い人のほうが優れていることがよくあります。また、将来の年齢から来る衰えも、後輩たちに助けてもらえば安心でしょう。

最大限持てるものを出し切るのが一流

不満や不平を感じたとき

残念な営業マンは、グチを言う
できる営業マンは、できないことに悩む
一流の営業マンは、できることだけを考える

営業見習い期間中だった7月のある日のことです。

私は現場研修の一環として割り当てられた郊外地域の工業団地を回り、新規顧客を発掘する仕事を任されました。

会社から「見込み客リスト」を渡された私は、畑の間を通っている舗装されていない道などを歩きながら、十数件のお客様を訪問しましたが、残念ながらその日は検討してもらえるお客様を見つけられず、オフィスに戻ることにしました。

オフィスに戻る途中、地下鉄日比谷線銀座駅で、東京の中央区を担当している同期の仲間が電車に乗り込んできました。

その偶然に盛り上がり、しばらく営業の近況などについて2人で話していたのですが、ふと彼は視線を落とし、何も言わずに私の靴をじっと見つめていました。不思議に思って自分の足元を見ると、私の靴底に雑草がこびりついて両側からはみ出していたのです。

恥ずかしさと情けなさでいっぱいになった私は、駅のトイレにかけこんで雑草を靴からはぎとりました。営業見習い期間とはいえ、「郊外を担当していた私はドサ回りで、中央区を担当していた彼は花形だー」と思って、うらやましく感じていました。

私は講演やセミナーなどの場で、営業マンたちから、その頃の私同様の不満や不平を聞かされることがよくあります。「会社から与えられた担当地区が悪いので、成果を出そうにもできない」「競合他社に比べて、自社の商品やサービスの性能が悪いので売れない」「会社の知名度がないので、お客様に信用されない」

こうしたことを言う営業マンの気持ちは、私も営業でしたので痛いほどわかります。

たとえば、担当地区に関して言えば、営業マンにとってそれはとても重要です。いい担当地区なら売上を立てやすくなりますが、よくない担当地区だと売り上げに苦労するからです。

しかし、すべての営業マンは、限られた経営資源の中で営業しています。だから、発想を変えて、「会社から与えられたものを最適な形で利用して、最高の結果を出していこう」と考えることが大事になります。

一流の営業マンは、できないことをいくら考えても何も変わらないし、時間のムダだとわかっています。そして、自分にできることを最大限やることが成果に結びつくことを知っているのです。

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さらなる高みが一流を育てる

成長するために

残念な営業マンは、目標に向けて努力する
できる営業マンは、目標を達成する
一流の営業マンは、困難な仕事に挑戦する

私が見てきた一流の営業マンの多くは、会社目標を上回る個人目標を設定することで、トップセールスになっていました。

私も現場の営業マンだった8年間、毎年会社から与えられる目標の2倍を自分の目標にしていました。「会社目標の2倍くらい達成しないと、自分は成長できない」と思って、あえて高い個人目標を立てていたのです。

会社目標は8年間連続で達成できましたが、残念ながら、その2倍の個人目標は3回しか達成できませんでした。残りの5年間は未達です。

ただ、2倍という高い個人目標を設定して挑戦したことで、私は未達の年に、「達成できなかったのは、自分に何が足りなかったからなのか? 」と自分を振り返ることができ、自分をよい方向に変える経験にすることができたのです。

一流の営業マンになるためには、次の3つの能力が高いレベルにあることが必須です。

1「責任」:自分に課せられた責任を自覚し、率先して仕事に取り組み、リスクにも適切に対処して業務を行っている

2「理解・判断」:問題と原因を理解して、正しい判断を行っている

3「専門性」:新しい知識やスキルの取得・向上に努力し、仕事に必要な専門性を発揮して、業務を行っている

4「変革・挑戦」:1・2・3の3つの能力をより高い次元にレベルアップさせて、自分を新たなステージにレベルアップする工夫と努力をする

とくに一流の営業マンは、この4「変革・挑戦」が優れています。

たとえば、私が会社目標の2倍の売上を個人目標にした取り組みが、4に当たります。あえて困難な仕事に取り組み、新たな発想をしたり、革新的な方法をとったりしなければ、目標達成できないような状況に、自らの身を置くわけです。

会社目標の2倍ともなれば、見込み客を通常の2倍以上に増やしたり、お客様への提案時間を2分の1以下に短縮したりするなどが必要になります。これを実現するためには、これまでのルーチンワーク的なやり方では不可能で、革新的な方法を見つけ出して、試行錯誤しながら実践しなくてはなりません。

多くの失敗をするでしょうが、失敗からたくさんのことを学べるので、新たな発想や革新的な方法手に入れることができるのです。ですから、あえて困難な仕事に挑戦して自分をレベルアップする機会とするのです。

高野孝之
スマートライン株式会社代表取締役社長兼CEO

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