将来有望なエネルギー源として開発中のメタンハイドレートから、メタンガスの取り出しに成功した。経産省・資源エネルギー庁が発表した。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構が5月4日、愛知、三重両県の沖合での水深1000メートルの海底から、さらに350メートル掘削したメタンハイドレート地層からガスを連続抽出することに成功したという。

メタンハイドレートは、低温、高圧下の天然ガスと水が結合してシャーベット状になった天然資源である。日本列島の太平洋と日本海の近海に大量埋蔵していると推計されている。4年前に初めてガスを抽出したが、技術的なトラブルがあって6日間で作業を中止して以来、2度目の成功である。

「燃える氷」には単位容積当たり大量のメタンガス含有

メタンハイドレート,エネルギー問題
地球深部探査船「ちきゅう」(写真=PIXTA)

メタンハイドレートは「燃える氷」といわれるように、1立方センチメートル、角砂糖ほどの体積に、1気圧で164立方センチメートル、牛乳瓶1本相当ものメタンガスが含まれ、燃え尽きれば水しか残らない。メタンハイドレートは低温、高圧下でしか固体の状態を保てず、揮発しやすいので海底や永久凍土層にしか存在しない。

日本周辺では20世紀末に、東海沖から四国、宮崎沖や下北半島、富山湾など海底の10-100メートルの厚さの地層に広く分布していることが分かってきたが、本格的な開発が始まったのは2013年に、世界初のガス生産実験を実施して以降のことである。

今回は渥美半島から志摩半島(東部南海トラフ)の沖合50kmに、地球深部探査船「ちきゅう」が4月7日から作業を行っていた。断続なくメタンガスが抽出されれば、2018年度に商業化への初期段階に入る技術的整備を開始される。資源エネルギー庁は,2023年から2027年の間に、民間企業主導の商業化プロジェクト開始を視野に入れている。

資源量は豊富、5年後の商業化を視野に

東部南海トラフ海域のメタンハイドレート賦存量(原始資源量といわれる資源の単純な総量で、可採埋蔵量とは異なる)は1.1兆m3、日本の年間ガス消費量の10年分以上に相当する。日本近海全体のメタンハイドレートのそれは、1996年は天然ガス換算で7.35兆m3と推定されている。

資源エネルギー庁初め関係者は、そのエネルギー源の開発に意欲的を示す。世界は石油資源の先を見つめて、新しいエネルギー資源の開発に努力している。太陽光発電、風力発電など再生可能なエネルギーに加えて、米国ではシェールガスの開発が商業化段階にある。メタンハイドレートも新しいエネルギー源として注目されるわけだ。

忘れてはいけない、商業化までには問題山積

しかし、メタンハイドレートの商業化は容易ではない。コスト削減を伴う技術開発や可採埋蔵量の特定、生産コストの引き下げなど課題は山積している。特にEPR(エネルギー収支比)の観点から、問題提起する専門家も少なくない。

EPRとは、取り出すエネルギー(出力)/取り出すのに必要なエネルギー(入力)のことで、この数値が大きいほどエネルギーとして質が良く益が大きい。標準となる石油は自噴している時を100とすれば、1970年代には8まで低下している。原子力発電のそれは6前後。注目の太陽光発電だが、日中はいいが雨の日や夜間はEPRが2前後に落ちる。メタンハイドレートのEPR計算はまだ出ていない。果たして期待通りの効率を出せるか、開発へのかけ声は大きいが、自信を持って「有望」と断定できる人はまだいない。 (長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)