ロシアでLINEの使用が規制されている。ロシアのインテルファクス通信が報じたところでは、スマートフォンによるLINE使用ができなくなっているが、一部のWi-Fi環境ではつながったという情報もあるようだ。

同通信は、規制の理由を、ロシア当局が顧客情報の提供を求めたのに対して、LINE側がそれを拒否したためとしている。規制がいつまで続くのか不明だが、LINEはロシアでも若者を中心に人気があり、反発の声が高まっている。

ネット規制法の禁止条項に触れた?

LINE,ロシア
(写真=kai keisuke/Shutterstock.com )

ロシアの連邦通信・情報技術・マスコミ監督庁は4月28日、LINEを含むいくつかの通信サービスを禁止リストに掲載。通信各社は5月に入って、スマートフォンを使ったLINEなどへのアクセスを順次ブロックする措置をとっている模様だ。

ロシアのネット規制法では、SNS事業者に対して、ロシアの顧客の個人情報を国内に保存し、当局が求めた場合は提出することを義務づけている。LINEはこの条項に違反していると判断されたとみられる。報道によると、禁止サービスの一覧には新たに、「LINE」のほかに「BBM」「Imo.im」「Vchat」が加えられたという。

ネット規制は第3次プーチン政権誕生以来強まる

第3次プーチン政権が2012年に誕生以来、比較的自由な言論が許容されていたネットの統制が進んでいる。具体的には、ネット上の発言の中の「過激主義」を取り締まり対象とする新法を施行した。軍と特務機関、大手通信会社は14年7月、ロシアのネットを外界から遮断する演習を行い、有事の際のネット隔離も視野に入れているという。

トランプ大統領は今年1月、米大統領選を狙ったサイバー攻撃にロシアが関与したとされた問題について、「ロシアがやったと思う」と、ロシアの関与をほのめかしている。

ロシアではまた昨年11月、米国のビジネス向けSNS・LinkedInが同様の理由でブロックされ、双方の主張が対立したまま解決されていない。

TwitterやFacebookも規制か?とのつぶやきも

ネット規制法で禁止されるサイトは、公式には児童ポルノ、麻薬、自殺に関するサイトだけ。サイト管理者が異議を申し立てるには、裁判所の判断が求められる。判断が出るまでは、言うまでもなくサイトは禁止されたままである。

ネットユーザーは、国家機関が禁止対象を決める権限を持つことに疑問を投げかけている。日本では、Twitterなどネット上で、「まるで中国のようだ」「TwitterやFacebookも規制されるのでは」とつぶやかれている。

ロシア連邦通信・情報技術・マスコミ監督庁によると、メッセンジャーのサイトは、アプリへのアクセスも制限される。ネット規制法は、必要とされれば接触先のデータを提出する義務がある。「これに従わない場合、ネットはブロックされる」(監督庁)。今回のLINE遮断騒動はこの方針の一環であり、収拾までには時間がかかりそうだ。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)