筆者が家計相談を受けてきたこの10年で「確実に変わった」と言えるのが、若年層のお金に対する意識だ。

20代後半から30代の若い夫婦の家庭において、会話の端々に出てくるキーワードが2008年頃の「守り」「節約」から、2017年現在「増やす」「投資」へと変わってきている印象がある。

今の子育て世代は、偉い

お金の悩み,富裕層
(写真=PIXTA)

いずれの場合でも、筆者と同年代の顧客である彼らの心の内は、同じ「焦り」がみえる。特に家計を預かることが多い女性のケースのほうが、男性に比べてプライドが低いのか、素直にその「焦り」を話してくれる。

筆者も同じ女性で、しかも平均より10年ほど早く子育てを始めており、仕事上で社会保険料や年金の仕組みを知っているため、気持ちは理解できる。

増え続ける教育費とともに子供を育てていき、自分たちが迎える60代以降の将来が、不安でたまらないのだ。

2008年、リーマンショック直後のデフレ再来時には、生活のあらゆる無駄を削減し、節約に努めることで、何とか家計を守った。2017年、マイナス金利政策発動から1年の今、守りに入るだけでは物価上昇に対応できないことをやっと知った後は、10代~20代では教わることの無かった「投資」について、何とか知識をつけるために、経済紙に目を配り、セミナー参加に躍起になっている。これが多くのケースで見られる傾向だ。彼らを偉いと筆者は思う。

それは自ら「学ぼう」とする姿勢を見ていて、少なくともバブル期や、その後の今よりもずっと「マシな時期」に、社会活動をしてきた年代よりも、ものの見方がシビアで現実的だ。しかし、それは同時に「冒険」を拒否する側面でもあるように感じる。

大怪我をしない方法は、小さな怪我で学習すること

20代、30代の読者の皆さんには、「時間」という武器があることを知っていただきたい。老後の定義が変わるニュースも出たが、少なくとも現行65歳よりも若くなることは考えにくいのだから、運用できる時間が30年~40年以上ある、ということだ。

時間があるということは簡単に言えば「失敗しても元に戻す時間が十分にある」ということだ。運用で「一度も負けたことがない」という人はいないだろう。それは、「自転車のペダルを初めて漕いだ時から、一度も転んだことがない」に等しいのではないかと思う。

転ぶことでケガの痛みを知り、転んだ要因を学び、同じ場面では同じ様に転ぶことはなくなる。その学習は、早ければ早いほどいい。補助輪をつけずとも自力で走れる時間が長いほうが、経験や実績を積む期間が長くなるから。

頭で考えていても、バランス感覚は身につかない。実際にペダルを漕いでこそ、理論ではなく体感で身につくものだ。

3つのポイント まず始めてみることで見える未来

1つ目 として、長期運用の鉄板商品である「投資信託」は、確定拠出年金の活用で始めてみることだ。

60歳までは引き出しができない規約だからこそ、「絶対的な老後資金」になる。注意すべきは商品の「信託報酬」で、運用期間中運用者側に報酬として支払われる手数料だ。

購入時の手数料よりも、この運用期間最大40年間に、日々かかる手数料のほうがずっとコストとしては大きく、インデックス型で0.3%前後が妥当と思われる。

昨年からインデックスファンドブームが続いているが、アクティブファンドが悪いわけではなく、コスト面や運用期間面から考えると、通常の口座で個別銘柄同様に保有すべきだろう。

2つ目 は外貨建ての資産を作ること。コストの安さで言えば、外貨建てMMFだ。リスクはほぼ為替リスクのみに絞られ、いつでも円に替えられるので、流動資産になる。外貨預金は預入期間と満期が決まっているため、変動の激しい為替市場では、預金という名前がつくもののリスクの高い商品となってしまうので、お勧めはできない。
他にも外債や外国株式を保有することも、同じく外貨建て金融商品の保有となる。

言わずとも、「銀行預金では、将来価値が目減りする」という事実があるから、長期運用の投資信託や、為替リターンや自国通貨以外で保有するヘッジ効果で、資産を積極的に増やす行動が必要になるためである。

3つ目 は収入を増やす、ということだ。何はともあれ源泉が無いことには、アセットを増やすことができない。とはいえ、単に給料所得を増やしても、高騰する社会保険料で実質手取りになる可処分所得は、純粋に比例して増えない。

ではどうするか。給与所得だけの人は、事業所得を作る。セカンドビジネスとして、事業を起こしたり不動産収入を作ったり、大げさに会社をつくらなくても、個人でできることがある。

インターネットさえあれば、場所や時間を選ばずにできることは、わずか数年前より格段に増えた。選ぶ目利きが必要にはなったものの、情報も溢れるほどある。既存の枠にとらわれない働き方は、いくらでも作っていけるはずだ。

補助輪が外れることがとっくに決まっている未来を、国任せにしない方法は、自らが学び、実践することで、これは今を生きる世代の一人一人に求められているのだ。

佐々木 愛子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅱ種
国内外の保険会社で8年以上営業、証券IFAを経験後、リーマンショック後の超低金利時代、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。FPとして10代のうちから金融、経済について学ぶ大切さを訴え活動中。 FP Cafe 登録FPパートナー

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