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景気の現状判断DI(季節調整値):5ヵ月ぶりの改善

景気ウォッチャー調査,現状判断DI,一進一退
(写真=PIXTA)

5月11日に内閣府から公表された17年4月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DI(季節調整値)は48.1と前月から+0.7ポイント上昇し、5ヵ月ぶりに改善した。ただし、節目となる50を2017年に入り下回っており、景況感は弱含んでいる。内閣府は、基調判断を「持ち直しが続いているものの、引き続き一服感がみられる」に据え置いた。

今回の調査では、家計動向関連は、引き続き好調なインバウンド需要に加え、停滞感のある国内消費にも持ち直しの兆しがみられ、景況感を押し上げた。企業部門においては、製造業や建設業を中心に受注が増加したことが景況感を押し上げた。一方で、受注が増えたものの、人手不足や長時間労働の是正により対応が追いつかない企業やコスト負担を受注価格に転嫁できていない企業も見受けられた。

好調なインバウンドに加え、国内客の消費も持ち直し

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連(前月差+0.7ポイント)、企業動向関連(同+0.3ポイント)、雇用関連(同+1.4ポイント)のいずれも前月から改善した。家計動向関連では、サービス関連(前月差+0.1ポイント)、小売関連(同+0.4ポイント)が小幅な改善となったが、飲食関連(同+3.3ポイント)、住宅関連(同+2.9ポイント)が大きく改善した。

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コメントをみると、家計動向関連では「これまでは、訪日外国人の売上増加が日本人向けの売上低下をカバーしている状況であったが、日本人のマイナス幅が徐々に縮減してきている」(南関東・百貨店)や「外国人観光客に引っ張られている構図は依然として変わらないが、国内の客の動きも手ごたえを感じる」(九州・都市型ホテル)など、好調を維持しているインバウンド需要に加え、国内客の消費も回復に向かいつつありそうだ。

一方で、「4月からエコカー減税の基準が厳しくなっており、新車の販売量が伸び悩んでいる」(東北・乗用車販売店)や「決算の3月には呼び込みをかけて集客を図るため、例年4月には販売台数の落ち込みが発生する」(近畿・乗用車販売店)など、決算期である3月を終えたことや減税基準が厳しくなり、自動車の販売台数が落ち込んだというコメントがみられた。

住宅関連では、「受注量が安定しない。個人が住宅を希望しても資金的に厳しい場合や、企業間の競争が厳しい場合もある」(北陸・住宅販売会社)と住宅購入に慎重なコメントがみられたが、「住宅展示場の来場数が前年比で伸びている」(近畿・その他住宅)など住宅展示場の来場客が増加したことに言及するコメントも目立った。

企業動向関連では、製造業(前月差+0.5ポイント)、非製造業(同+0.2ポイント)ともに4ヵ月ぶりに改善した。コメントをみると、「新規の取引先から、新年度前半の加工予定があるとのことで、その手始めの受注量が増え始めている」(南関東・金属製品製造業)などのように、受注の増加に言及するコメントが目立った。

一方で、「作業戦力不足や長時間労働是正への取組から受注を制限せざるを得ないケースがあり、これまで同様の対応ができていない」(中国・輸送業)と受注増加への対応が追いつかないといったコメントや「年度末の工事が終わったが、建設資材の高騰や技能労務者不足であると同時に、相変わらず受注価格の激しい競争が続いている」(近畿・建設業)とコストの増加を受注価格に転嫁できていないとのコメントもみられた。

雇用関連では、「海外進出や事業拡大に際してのノウハウを有するシニア人材の獲得、未経験者を採用しての技術者育成等、これまでにないターゲットの獲得を急いでいる」(中国・民間職業紹介機関)や「当社、周辺企業共に、新卒採用を行っている企業が多い。定期採用をしていない企業でも、今年は新卒を採用したという話も耳にしている」(南関東・求人情報誌製作会社)など、人手不足感が高まる中、多様な人材を確保しようとする動きが強まっているようだ。

景気の先行き判断DI(季節調整値):2ヵ月ぶりに改善も、一進一退の動き

先行き判断DI(季節調整値)は48.8(前月差+0.7ポイント)と2ヵ月ぶりに改善した。先行きの景況感は2017年に入り一進一退の動きが続いている。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連(前月差+0.3ポイント)、企業動向関連(同+0.8ポイント)、雇用関連(同+2.2ポイント)のいずれも改善した。

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家計動向関連では、「ビール類よりも単価の低い酎ハイ等のリキュール類が売れるようになっている。まだまだ消費者には低単価志向が強い」(東海・コンビニ)など、消費者の節約志向を懸念するコメントが引き続き目立った。一方で、「人手不足が続き、地方においてもアルバイト等の賃金上昇が若干感じられる。まだまだ全体の所得向上にはつながっていないが、消費動向に追い風となることを期待している」(四国・商店街)など、賃金の上昇に伴う消費の回復に期待するコメントもみられた。

企業動向関連では、「現状よりも、新規案件の見積受注が更に増えている。案件数、仕事量共に増加傾向にある」(近畿・プラスチック製品製造業)などのように、受注の増加が今後も継続する見込みであるとするコメントが多く寄せられた。一方で、「価格転嫁ができず、これ以上の維持は困難な状況が続いている。今後も価格が改定されないと、受注を見送る方向となる」(東海・電気機械器具製造業)といったように、受注の増加が収益の向上を伴わず、受注を断らざるを得ない状況もみられる。

雇用関連では、「人材確保、雇用維持のため、小幅ながら企業の賃金改善への取組が進みつつある。ベースアップ実施の効果もある」(東海・職業安定所)や「前年同時期と比較して、新卒求人の待遇の上昇や採用数の増加が見られ、企業や団体の経済規模が拡大している」(中国・学校[短期大学])など、労働需給が逼迫するなか、待遇改善が今後進んでいくとするコメントがみられた。

景況感は2017年に入り弱含んでいるが、先行きは改善の兆しもある。地政学リスクや欧州の政治リスク、トランプ新政権の政策運営など海外情勢の不透明感は依然高いものの、過度な不安は後退しており、4月中旬以降の株価は上昇基調に転じている。仕入れ価格の上昇や人手不足が企業経営の足枷となる懸念はあるが、好調な受注や賃金の緩やかな上昇を背景に持ち直しに向かっている消費も景況感の押し上げに貢献することが期待できる。

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白波瀨康雄(しらはせやすお)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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