将来を考えるとき、
一般人は、年収2000万円をあきらめる
小金持ちは、年収2000万円で満足する
大富豪は、年収2000万円を通過点と考える
(本記事は、冨田和成氏の著書『大富豪が実践しているお金の哲学』(クロスメディア・パブリッシング 2016/5/2)の中から一部を抜粋・編集しています)
手元のキャッシュから新たなキャッシュを生み出すのがお金持ち
日本で年収が1000万円以上の人の割合は約5%。給与水準が高い業界で働いている人なら役職がつかなくても到達できます。ただ、これが2000万円以上となると約0・4%まで下がります。「年収が2000万円もあれば大富豪だろう」と信じてやまない人が多いはずです。
しかし、現実は違います。年収2000万円前後の大富豪はほとんどいません。資産どころか借金を抱えている人もいます。その原因は浪費で、このケースに陥りやすい典型例は外資系企業などに勤める若いエリートサラリーマンです。
勉強もできて仕事もできるのでしょうが、彼らは所詮、雇われの身。お金に対する考え方は市井の人と大差ありません。そういう人の口座に毎月百万円以上も振り込まれると感覚がおかしくなるのでしょう。2000万円を使い切るのは簡単です。
たとえば、都内には高級タワーマンションがたくさんあります。月々の家賃が60万円などザラで、広告を見れば「セレブ」「エレガント」「プレステージ」など扇情的な言葉が並んでいます。そこに反射的に飛びついてしまうわけです。
しかし、冷静に考えれば家賃だけで年間720万円。それ以前に税金と社会保険で600万円以上取られ、手元には680万円しか残りません。
豪華な家に住んで慎ましい生活を送ろうとする人はいないでしょうから、食費、交際費、車、ファッション、海外旅行と支出が止まりません。
見栄ほどコストのかかるものはありませんからね。これでは貯金ゼロになって当然です。お金を増やしたいならインとアウト(収入と支出)の両方をコントロールしなくてはいけないことは誰でも分かる話です。しかし、インが増え始めるとアウトに対する意識がとたんに薄れてしまうのが人間の弱いところです。逆にアウトを徹底して管理できれば年収1000万円未満の会社員でも金融資産を1億円以上にすることもできます。そうはいっても極端な倹約生活はこの本の主題ではないので、いったん置いておくとしましょう。
大富豪になる人は、自分が若くして年収2000万をもらう立場になったら将来のさらなる飛躍のために有効に使います。起業のためにお金を貯める人もいるでしょうし、自分に投資する人もいるでしょう。もちろん、余剰資金を確保して資産運用をはじめることも忘れません。
そうやって元本を大きくしていき、放っておいてもお金が増えるレベルまでなったらはじめてそこから得られる利益で贅沢な暮らしをすればいいと考えるのが大富豪の考え方です。ロバート・キヨサキ氏は、ベストセラーとなった『金持ち父さん、貧乏父さん』(筑摩書房)のなかで「コップの中の水を飲むのではなく、コップから溢れた水を飲みなさい」と説いています。
手元に1000万円のキャッシュがあるからといってすべて消費するのではなく、1000万円分の贅沢をしたいなら1000万円を元手に新たな1000万円を生み出してから行いなさい、ということです。
そもそも人間はステージが上がるにつれ目標も上がるはずです。たとえば、本が好きな学生からすれば出版社で働くことは夢でしょう。でも、いざ働き出したら普通のことになって、10万部のヒット作を夢見る。でも、それも実現してしまえば今度は100万部売りたくなる。これが自然ですよね。
私も初対面の方からよく「なぜ業界最大手だった証券会社を辞めたんですか。給料もいいのに、もったいない」と言われることがあります。
でも私からすれば「それが目標ではなかったので……」としか言いようがないのです。大富豪になる人たちはこうした目標のアップデートを誰よりも頻繁に繰り返しているにすぎません。そうやって高い目標を持ち続け、自ら思い描く未来にワクワクしながら、自分の可能性を常に広げているのです。人は現状で満足した時点で成長が止まります。そして、未来でなく今や過去を生きることに専念しだします。
年収が2000万円もあるのに一向に資産が増えない人は、その年収を「ゴール」だと考えている可能性が高いのではないでしょうか。ゴールだと思うとわざわざ水が溢れるのを待つ意義がなくなるので、目の前の水をガブガブ飲み干してしまっても不思議ではありません。
あなたの、お金持ちのイメージは?
イメージとして、
一般人にとって、大富豪は「ずる賢い人」
小金持ちにとって、大富豪は「優秀な人」
大富豪にとって、大富豪は「まっとうな人」
金銭教育先進国のアメリカでは幼稚園からお金について学びはじめ、大富豪はアメリカンドリームを体現した人物として崇められます。
ひるがえって日本。大富豪と聞くだけで「ずるい」だの「人のお金で云々」と眉をしかめる人が多いのは、文化や教育の影響が少なからずあると思います。
金融教育をタブー視しすぎたために、お金を稼ぐ行為はあたかも「他人から搾取して、ひとりだけ良い思いをすること」という独善的なイメージを持たれてしまう傾向があるのではないでしょうか。
また、もうひとつ大富豪のイメージが悪い原因として、真っ当にお金を稼いでいる人には世間が興味を持たない世俗的な背景もあるでしょう。実際は真っ当な商売人の方が圧倒的に多いにも関わらず、マスコミで大富豪が話題になるのは、富裕層ランキングが発表されるときか、嫌味な成金キャラを演じている「自称セレブ」がネタにされるときか、悪いお金の稼ぎ方をした人がつかまったときがほとんどです。
お金持ちへの道「成功するまで、当たり前のこと当たり前にやる」
これでは世間の大富豪に対するイメージが悪くなる一方です。まっとうなことをするだけで、大富豪になることはできます。私の知る大富豪を見ても、または世の中で成功したビジネスモデルを見ても、結局のところ誰よりも早く消費者のニーズを読みとったか、誰よりも早く行動を起こしたか、誰よりも完璧なサービスを提供できたか、のいずれかです。
以前とあるIT長者に事業成功の極意をたずねたところ、こう言われました。「インターネットが伸びることは誰でも容易に想像できたはずです。伸びると分かっている市場であれば、当たり前のことをやるだけで当たり前のように結果は出せるはずなんですよ。ただ、それを人よりも少しだけ早く気づいて、少しだけ早く動いて、人よりたくさん努力しただけです」
パナソニックを創業した松下幸之助氏の言葉で「成功の秘訣は、成功するまで続けること」という名言もあります。私が最も好きな言葉のひとつです。
どんなに失敗を重ね、暗いトンネルの中で心が折れそうになっても、成功するまでやり続ければ最後は必ず成功する。当たり前のことをただ愚直に実践することの重要性を教えてくれる、とても重い言葉です。
冨田和成(とみた・かずまさ)
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。