頑張る理由として、
一般人は、生活のために稼ぐ
小金持ちは、豪遊するために稼ぐ
大富豪は、世の中のために稼ぐ

(本記事は、冨田和成氏の著書『大富豪が実践しているお金の哲学』(クロスメディア・パブリッシング 2016/5/2)の中から一部を抜粋・編集しています)

大富豪はいずれ原点に立ち返る

大富豪のお金の哲学,冨田和成
(写真=PIXTA)

「大富豪の生活ぶり」と聞いてどのようなイメージを持たれるでしょう。毎晩、銀座や六本木で飲み明かして、週末は葉山でヨットとシャンパンといった感じでしょうか。あながち間違いではありません。

とくに30代、40代の立身出世型の方は派手な生活をされる方が多く、「仕事もバリバリやりながら、よく遊ぶ体力があるなあ」と感心してしまうこともよくあります。

冒頭の節で取り上げた年収2000万円のサラリーマンと違って、すでに何十億円もの資産を築いた大富豪からすれば、コップから溢れた水を飲んでいる限り出費は痛くもかゆくもありません。つまり、そこは趣味の世界。豪遊すること自体を否定的に捉える理由はありません。

ただ非常に興味深いことに、若いときに豪遊三昧だった人でもどこかのタイミングで必ずと言っていいほど我に返ります。

50代を過ぎて遊びまくっている人はたいてい遅咲きだった人で、若いときに成功を収めた人はその年齢にもなれば遊び尽くした感覚を持ち、派手な生活に虚しさすら覚えるようになる人もいます。好き放題やってきた人が、家庭に回帰したり、自分が得た利潤を社会や地域に還元しようという意識が湧いてくるのです。

企業経営でも似た現象があって、成長期の間は経営者も規模拡大ばかり考えますが、会社が大きくなるとCSR活動(会社の社会的責任を果たすための活動)を強めていきます。

社会貢献の形として最もわかりやすい例が財団でしょう。大企業、またはそのオーナーで財団を持つことはよくある話で、日本ではサントリーやベネッセなどが有名です。

世界で最も有名な慈善基金団体はマイクロソフト創業者のビル・ゲイツが家族とともに立ち上げたビル&メリンダ・ゲイツ財団で、基金の規模は396億ドル。貧困問題やエイズ、マラリアなどの根絶、教育の拡充などに貢献しています。ちなみにその基金の半分は、同じく世界を代表する大富豪のウォーレン・バフェットからの寄付でなりたっています(奥様へ資産を譲渡するつもりだったのが奥様に先立たれたため、この財団を選んだそうです)。

ウォーレン・バフェットは自分の資産の85%は寄付すると宣言しており、ビル・ゲイツ自身も自分の死後、資産の95%は寄付すると明言しています。圧倒的な資産を築いた大富豪は、世の中のためにお金を還元するのです。

近年ではフェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグが立ち上げた慈善団体が有限責任会社(LLC)という形をとっているため「ただの節税対策じゃないか」と非難を浴びています。

しかし、彼としては自分が本当に支援したい分野にただお金を出すのではなく、積極的に関与していきたい、本気で状況を変えたい、と思って新形態の手段を採用したと考えるのが正しいでしょう。これをインパクト投資と言います。自ら起こした事業によって世の中を変えてきた彼ならではの発想だと思います。

綺麗事だけを言うつもりもありません。大富豪が社会貢献に関心を持つ背景のひとつには、世間からの風当たりを少しでも和らげたい気持ちもあると思います。

とくに地方在住の大富豪にもなると、地元の名主として崇められる一方で、ムラ社会独特の妬みも生まれます。神社仏閣にいくとやたらと寄付者の個人名が目につくのは、そういった理由があるのでしょう。

大富豪は成功の過程で敵を作らないことが、いかに重要であるかを知っているので、計算高いセルフブランディングとまではいかなくても、少しでもイメージを上げるべく社会還元しているという側面は否定できません。

そうは言っても事業家として大富豪になる人のほとんどは、やはり「人のために何ができるか」を常に考えています。たとえば、優秀な営業マンであれば「お客様は何に困っているんだろう」「自分に何ができるんだろう」という視点を必ず持っています。「どうやってこいつを騙せるか」などと考えている人が成功するわけがありません。

「あいつは強欲だ」「あいつは好きになれない」と周囲から言われ続ける人(や会社)は、一時的にうまくいったとしても、最終的には淘汰される運命なのです。大富豪が原点に立ち返ることは自然なことだと思います。

『冨田和成氏の著書『大富豪が実践しているお金の哲学』(クロスメディア・パブリッシング 2016/5/2)』画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
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あなたは会社からどのくらいの距離に住んでいる?

自宅を、
一般人は、郊外に買う
小金持ちは、高級住宅街に買う
大富豪は、会社の近くで借りる

毎月の固定費として最も大きな支出になりやすい自宅について、大富豪はどのような考え方をもっているのでしょうか。私の現在の交友関係は30代や40代の経営者が中心になるのですが、みんな揃いも揃って自分の会社の近くに住んでいます。

保有する会社の株の価値だけで何十億円もの資産を持っているのにママチャリで通勤する社長もいますし、オフィスが入っているビルの別フロアに住居を構える「徒歩0分」の猛者もいます。そういった社長たちに起業する前の住居を聞いてみると、やはりというべきか、勤めていた会社の近くに住んでいた人の割合が異様に高いのです。

サラリーマンの身で会社の近くに住むとなると家賃の負担が大きいので、ボロボロのアパートや極小のワンルームに住んでいたという人がほとんどです。

なぜ住環境を犠牲にしてでも会社の近くに住むのか。理由は明快で、通勤時間ほどムダなものはないと思っているからです。終電を気にせず働けますし、都会に住んでいれば人付き合いも活発になりますし、ラッシュでクタクタになることもありません。

オフタイムに仕事のことなど考えたくもない普通の感覚の人なら、こうした発想は異様に見えるでしょう。「会社の近くに住んだら四六時中仕事のことを考えてしまうじゃないか。わざわざ社畜になるのか」と。

ただ、社畜という言葉は仕事をイヤイヤやっている人が使うものであって、仕事が楽しくてしょうがない人には関係のない話です。そして、大富豪になる人やビジネスで成果を出す人は、むしろ四六時中仕事のことを考えられる環境にいたがります。20代であればまだまだ修行の身。そこで大きな成長を遂げる人は、徹底して修行に集中できる環境を求めようとします。

必死に土壌をつくって種を撒いておくべき時期に、「広いマンションに住みたい」だの「プライベートを充実させたい」だのと収穫の話をすることは、(まったく考えないとまでは言いませんが)少なくとも優先順位が違うと考えています。

いま毎日、長時間電車に揺られている若い方がいたら、ためしに会社の近くの物件を検索してみてはどうでしょうか。「この値段で、こんな都会に?」と思える物件が意外と多いことに驚くと思います。できればそのとき、そこに引っ越したと仮定して生活がどう変わるか現状と比較してみるとよいでしょう。

比較する尺度は、「いかに仕事のパフォーマンスが上がるか」、そして「自己研鑽のチャンスが増えるか」です。収入はあとからついてくるものなので、今は考えなくても構いません。また自宅選びといえば賃貸か分譲かは常に論争の的になります。若い経営者のほとんどは賃貸です。今後、家族が増える可能性もありますし、いつ海外にビジネス拠点をうつすかもわかりません。

将来が不確定なら賃貸の方が合理的です。第一、マイホーム派の主張としてよく聞く「ローンを払ったほうが将来資産になるので得だ」という意見は、あまり正確ではありません。35年ローンで郊外に木造一戸建てを買ったとしても、ローンを完済したときの建物の資産価値はゼロです。半額でも1/4でもなく、ゼロです。

となると実際の価値は土地代になるわけですが、地方に限っていえば今後空き家が増える可能性が高いわけですから、地価が大きく上がるケースは考え辛いと言えるのではないでしょうか。

それに、分譲の最大のデメリットは低い流動性です。ローン返済中に突発的な事情で引っ越しを余儀なくされたとしましょう。ローンが2000万円残っているのに資産価値が1000万円まで下がっていれば、売りたくても売れない(まとまった1000万円を用意できない)ケースもよく聞きます。このように、もし家を買うのであれば実際にそれを処分するときのことまで念頭に置く必要があります。

大富豪が別荘を購入する本当のワケ

別荘を、
一般人は、買う余裕がない
小金持ちは、老後のために用意しておく
大富豪は、もてなしの場として使う

総務省による調査では、自宅以外に家を所有している人の割合は7・3%。仕事場として使ったり、貸し出すために買ったり、ご子息の家族のために用意したりする人も含まれるとはいえ、意外と多い数字ですよね。別荘については定年退職後にご夫婦で本格移住をする前提で購入される方が多いように感じます。現役のときから休日は別荘で過ごし、地元の方たちと仲良くなっておいてからスムーズな移住を図るのが目的です。大富豪の場合はどうでしょう。

大富豪は、別荘を「老後のため」や「家族とゆっくり時間を過ごすため」という目的より、「究極のおもてなしの場」として活用している方が圧倒的に多いのが特徴です。家族と休日を過ごしたい、東京の喧騒を忘れたいというのであれば、彼らにはハワイの会員制リゾートなどがありますからね。そこまでおもてなしを特別視する背景には、大富豪によるインナーコミュニティー重視の考え方があります。

それなりの資産を築く方々は考え方や趣味、関心領域、生活スタイルなどが多くの人とは違います。となると、自然と同じような大富豪と付き合う機会が増えてくるわけですが、そこがまた居心地がよくて刺激にもなるので、ますます閉ざされたコミュニティーの結束が高まっていくわけです。

その点、別荘はホテルと違って自分がホストで相手がゲストであることが明確です。そこに別荘特有の特別感や非日常性が相まって、心ゆくまでおもてなしができます。ただ、遠方まで足を運んでもらうのも心苦しいので、東京から比較的近い軽井沢や三浦半島、湘南、伊豆などが人気なのです。そういえば安倍晋三首相も山梨県の河口湖畔に別荘をお持ちで、政財界関係者や記者などを招待している姿を時折ニュースで見かけます。

「インナーコミュニティー」、そして「おもてなし」といえば、富裕層がクルーザーを買う理由も別荘と同じです。都内でパーティーを開くとなるとどうしても商売っ気全開で寄ってくる参加者が混じる可能性が高いですが、メンバーを厳選しないといけないクルーザーであれば一切の邪魔が入りません。

参考までに、クルーザーはあらゆる世代の大富豪に人気ですが、若い大富豪は別荘にあまり関心を持たない傾向が強まっています。仮に買っても海辺のリゾートマンションや海外物件など。時代は少しずつ変わっています。

冨田和成(とみた・かずまさ)
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。