クックパッド <2193> といえば、言わずと知れた「料理レシピのコミュニティサイト」を運営する企業だ。

1997年、同社の前身である有限会社コインとして設立、2009年には東証マザーズにIPOを果たし、2011年には東証1部に市場替えと順調に成功の道を歩んできた。2015年には時価総額で一時3000億円を超えたこともある。

しかし、現在の株価は3年ぶりの安値に沈んでいるほか、時価総額も1000億円を割り込むなどピークの3分の1にまで落ち込んでいる。今回は「クックパッドの苦悩」に迫ろう。

クックパッドは「内紛」から「原点回帰」へ

前述の通り、クックパッドは「料理レシピのコミュニティサイト」として広く知られるが、経済メディア等では経営方針をめぐる「内紛」「お家騒動」がこれまで繰り返し取り沙汰されてきた側面もある。まずは、その経緯を簡単に振り返ってみよう。

クックパッドに転機が訪れたのは、2012年3月のことだ。すなわち、創業社長である佐野陽光氏の退任が発表され、その後任に「プロ経営者」として知られる元カカクコム社長の穐田誉輝氏を迎え「時価総額拡大路線」に舵を切ったのである。

穐田氏は、海外レシピサイトのM&Aで海外へ布石を打ち、国内においても多角化を推進した。みんなのウェディング <3685> のM&Aのほか、スーパーの特売情報提供や食材の宅配といったEコマース分野への進出、電子書籍のイーブックイニシアティブジャパン <3658> との資本業務提携、子育て支援の日本テクトといった新規事業への進出を矢継ぎ早に打ち出し、スピード感に満ちた「時価総額経営」を進めた。その結果、同社の時価総額は2013年の400億円から2015年には3000億円を超えるに至ったのである。

創業者の佐野氏は、穐田社長のもと海外部門などを担当していた。しかし、料理サイトの充実に「こだわり」を持つ佐野氏は次第に穐田社長との溝を深めたとされている。

最終的には、穐田氏が退任するとともに佐野氏が社長に復活することで「内紛」「お家騒動」は幕を閉じることとなった。

クックパッドは、料理サイトを中心とした事業展開という「原点回帰」に軌道修正し、多角化部門であるみんなのウェディングとは提携を解消し持ち株を売却、Eコマースのセレクチャー株も売却している。

月間アクティブユーザーは前期比で減少

クックパッドの業績を見てみよう。5月10日、同社発表の2017年12月期の第1四半期(1〜3月)決算は売上が10.7%減の36億6600万円となり、本業の利益を示す営業利益も4.9%減の19億7200万円に落ち込んだ。この背景には、Webサイトを運営するうえで指標の一つとなる月間アクティブユーザー(MAU)の減少が指摘される。

第1四半期のMAUは6134万人と前年同期比では1.6%増ながら、前期比では4.4%減(282万人減)となっている。広告収入も伸び悩んでいるほか、先に述べたみんなのウェディング等を売却した影響も売上減に表れている。

ただ、クックパッドの投稿レシピ数は前期末と比較して7万品増加の266万品と順調に拡大しているほか、有料プレミアム会員も第1四半期末で前期比3万8000人増の195万8000人と増加している。このため、同社はMAUの落ち込みは季節性と主要検索エンジンのアルゴリズム変更が影響しているとの見方を示している。

ちなみに、Googleが大規模なアルゴリズム更新を実施したのは今年3月のこと。それまでは、料理名を検索するとGoogleでもYahoo!でもクックパッドのサイトが上位に表示されていたが、アルゴリズム変更後は上位に表示されないケースも増えているという。その理由については諸説あるが、いずれにしてもMAUの落ち込みが今後も続くのか気になるところだ。

動画コンテンツで主導権を握れるか?

筆者は、動画の対応が後手に回ったことも、MAUの伸び悩みの原因ではないか、と考えている。料理レシピの投稿ではクックパッドが圧倒的シェアを誇っていたが、いまやレシピが動画で投稿される時代になり激戦状態と化しているのだ。

もちろん、クックパッドも「クックパッド料理動画」というサイトを設け動画コンテンツの強化を進めている。しかし、料理レシピの動画コンテンツでは 「7カット・レシピ」や「KURASHIRU(クラシル)」、「Videlicio(ビデリシャス)」「mogoo(もぐー)」「DELISH KITCHEN(デリッシュキッチン)」「Life THEATRE(ライフシアター)」「Tastemade japan(テイストメイドジャパン)」といったサイトが乱立している。

SNSで人気のインスタグラムでも、料理レシピの動画がかなり投稿されている状態だ。クックパッドが動画コンテンツで主導権を握るのは、そう簡単なことではないだろう。

株価はピークから70%以上も下落

クックパッドの株価は4月17日に年初来安値の831円を付けた。2014年7月以来3年ぶりの安値であり、2015年8月の史上最高値2880円から1年半で70%以上も下落した計算だ。

当面は、国内レシピサイトのファン増加、レシピサービスの海外展開、料理に関連するCtoCプラットフォーム開発の3本を柱に成長を目指していく。「時価総額拡大路線」から「原点回帰」へ……クックパッドの動向を見守りたい。(ZUU online 編集部)