「お口の恋人」のフレーズで有名な菓子大手ロッテに上場観測が出ているようだ。日本経済新聞は2017年5月17日、ロッテホールディングス(HD)が上場準備を順調に進めていることを報じた。

世界的にも有名な企業でもあり、千葉ロッテマーリンズやチューインガムでもおなじみのロッテが上場ということもあり、金融関係者の間でも大いに話題となっている。

ここではロッテがどのような事業を営んでいるのか、同業他社との売上規模の比較、IPOとしての注目度などを確認していこう。

ロッテグループとは? 業績や競合比較

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(画像=Webサイトより)

ロッテといえば、ガムやアイスクリームを中心としたお菓子の製造・販売、また千葉ロッテマリーンズのイメージが強いが、同社はグループ内において以下のような4つの事業を行っている。

(1)菓子事業(ロッテアイス、メリーチョコレートカンパニー)
(2)スポーツ事業(千葉ロッテマリーンズ、ロッテ皆吉台カントリークラブなど)
(3)外食事業(ロッテリア、銀座コージーコーナー、クリスピークリームドーナツジャパン)
(4)サービス事業(ロッテ物産、ロッテホテルなど)

ロッテのホームページ内の業績開示によると2015年度の売上高がグループ全体で6兆7943億円、日本国内ロッテグループの売上高は3145億円であり、上場実現となれば大規模な案件となりそうだ。

ここで参考までに競合他社(明治HD、ブルボン、森永製菓など)との売上高を見て比較してみよう。日本で上場する菓子メーカーの競合他社の15年度の売上高を紹介しておく。

明治HD(連結):1兆1161億円
ブルボン:1049億円
森永製菓:1779億円

売上規模から見ると、ロッテの国内グループのみの規模で判断しても日本の大手菓子メーカーとほとんど変わらない規模の売上高があることがわかる。認知度も高く、上場時には注目度の高いIPOになるだろう。

ロッテ上場(IPO)なら「ディフェンシブ株、株主優待」の側面に注目

ロッテは、菓子(食品)を扱う企業ということもあり、ディフェンシブ株として注目されることになる。ディフェンシブ株とは、景気動向に左右されにくい安定した業績の銘柄を指す。金融市場が不況で沈んでいる時にも一定の業績が見込まれるため、投資家からの資金流入が安定して見込めるタイプの株式群のことである。

例えば市場が暴落した際にも、なかなか株価が下がらずに下値が堅い株式となることも予想される。もし長期投資をしたい投資家であるなら、ディフェンシブ株の一つとして注目する価値はあるだろう。

また菓子を扱う企業のため、上場時、もしくは上場した後には、株主優待を実施する可能性も高い。株主優待でも投資利回りの高い優待や独自の優待を実施している企業は、個人投資家から支持を集めることも多い。

もし優待が実施されるとなれば、自社商品の詰め合わせの進呈やグループ内外食事業の飲食券配布などが予想される。菓子メーカーの場合、優待を実施している企業は多いので、仮にロッテが上場した場合にも投資する上での一つの注目ポイントとしておさえておきたい。

上場(IPO)ならロッテ株は買い? 過去の大型上場の初値分析

企業が株式市場に上場することを一般に「IPO(新規上場)」という。

IPOは新しく上場する企業の株価を前もって割安に設定した上で広く新規の投資家を募集する。上場前に申し込みで獲得することができれば、上場後に市場で初めて値段がついた時(初値という)にある程度の利益が出ている場合も多い。

特にロッテのような有名な大手企業の場合、注目度が高くなるので初値形成時に株価が意外高することも多いのだ。幾つかここ数年で有名かつ比較的規模の大きな企業が上場した際の、上場前株価と上場後の初値の差異(利益)を紹介しておこう。

(企業名、公募価格、初値、利益の順。利益は最低単元株数を公募獲得した場合)

  • 日本郵政:1400円、1631円、+23万100円
  • ゆうちょ銀行:1450円、1680円、+2万3000円
  • かんぽ生命:2200円、2929円、+7万2900円
  • LINE:3300円、4900円、+16万円
  • JR九州:2600円、3100円、+5万円

規模が大きい企業だとIPO時に公募価格を割ることもあるが、注目度の高い企業の場合には上記のように上々の結果を残していることがわかる。上記はその好例として覚えておきたい。

谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学法学部を卒業後、証券会社にてディーリング業務に従事。Yahoo!ファイナンスにてコラムニストとしても活動。日経BP社の「日本の億万投資家名鑑」などでも掲載されるなど個人投資家としても活動中。個人ブログ「 インカムライフ.com 」。著書に「超優待投資・草食編」がある。