5月入り後のドル円相場は、欧州政治リスクの後退や米国の6月利上げ観測から一旦ドル高に振れた後、トランプ政権のロシアとの不透明な関係を巡る疑惑(ロシアゲート)への懸念等からドル売りが強まり、足元は111円台前半で推移している。

トランプ政権の運営は順調とは言い難く、今後もロシアゲート情勢も含め、先行き懸念がドルの上値を抑える要因になる。批判が厳しくなれば、トランプ政権が挽回に向けて保護主義姿勢を強め、ドル高けん制を繰り出してくる可能性も高まりかねない。一方、米金融政策はドル高の推進力となりそうだ。最近の米経済指標には弱いものが目立つが、一時的な減速に留まり、勢いを取り戻す可能性が高い。6月利上げの後も、9月利上げ観測やFRBのB/S縮小議論を受けて、緩やかな円安ドル高に向かうだろう。3ヵ月後の水準は1ドル114円前後と予想している。逆に言えば、FRBが金融引き締めを躊躇せざるを得ない経済状況になれば、ドル高の推進力が消滅することになる。今後数ヵ月は米経済の真価が問われる時間帯になりそうだ。

ユーロ円は、仏大統領選終了に伴って欧州政治リスクが後退したこと、ECBの緩和の出口が市場で意識されていることなどから、125円付近まで上昇している。今後もECBの出口が意識されることや英仏議会選が無難な結果に終わりそうなことはユーロの下支えとなるが、これまでの急上昇の結果、既に過熱感があり、ECBの出口開始も当分先の話であることから、今後は上値が重くなりそうだ。3ヵ月後も現状と大差ない水準に留まると予想する。

長期金利は、リスク回避姿勢の後退などから、0.0%台半ばに上昇している。今後は米国の金融引き締め(及び観測)を背景に米金利の上昇が予想され、限定的ながら上昇圧力が波及するだろう。3ヵ月後の水準は0.0%台後半を見込んでいる。(執筆時点:2017/5/23)

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上野剛志(うえの つよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

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