アジア太平洋およびインド洋地域の国・地域を対象に、「現金」の流通傾向を調査したところ、2015年から2020年の間で「最も現金が使われなくなる比率が高まる国」が日本であることが分かった。
現金流通高の年平均成長率(2015-2020年)
上位8カ国は以下のとおり。上位にいくほど現金流通高が減る、つまりキャッシュレス化が進むということだ(年平均成長率とは、複数年にわたる成長率から1年あたりの幾何平均を求めた数値をさす)。
8位 インド 11.9%
7位 中国 7.5%
6位 南アフリカ 4.4%
5位 シンガポール 2.9%
4位 韓国 2.8%
3位 サウジアラビア ▲1.1%
2位 オーストラリア ▲2.1%
1位 日本 ▲6.5%
キャッシュレス化に熱心なのに、現金流通量が5割増えるインド
世界40カ国・地域を対象に調査を行った米決済情報サイト「PYMTS」がまとめた「グローバル・キャッシュ・インデックス」 によると、2015年のアジア太平洋地域の「現金」流通量は5兆6000億ドル(約623兆1680億円)。2020年には、総額8兆1000億ドル(約901兆4490億円)に達する見込みだ。
トップ8カ国のうち、インドや中国では、政府がキャッシュレス化に積極的であるにも関わらず、現金の流通量は対GDP比で増えるようだ。
PYMTSはこうした傾向を、両国共の「現金に愛着のある文化」に起因するものとと分析すると同時に、他国・地域に比べて現時点における現金流通量が多いことも、影響するのではないかと推測している。インドの現金流通高のGDP比は51.8%、中国は33.9%と、日本(4.2%)や豪(11.7%)などより遥かに高い。
多くの国・地域でキャッシュレス化の動きが高まっているにも関わらず、人口の増加が現金の流通を押し上げるというわけだ。
経済成長の差が現金流通量に反映?
PYMTSはレポートの中で、「キャッシュレス化とGDP成長率は関連性がある」との見解も示している。2010年以降、インドに代表されるアジア新興国のGDP成長率が好調な伸びを維持している一方で、キャッシュレス化が進むと予想されている日本のGDP成長率は頭打ちしている。経済成長の差が現金流通量に反映しても、けっして不自然ではないだろう。
GDP成長の期待されている中国では、独自のデジタル通貨開発が報じられているほか、インドは突然高額紙幣を廃止するなど、確実にキャッシャレスの基盤を築く試みが成されている。
キャッシュレス化に時間を要する国や地域も多数あるだろうが、「最終的に総体的な現金流通量が減る」と、PYMTSは結論づけている。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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