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本記事は2017年5月23日収録、テレビ東京「モーサテ経済ワード第34回」をもとに構成しています。解説はソシエテジェネラル銀行の鈴木恭輔氏です。

同じモノについた価格なら通貨が違っても価値は同じ?

秋元 今日の為替相場の見通しのなかで「ユーロが割安である」というお話がありました。そのなかででてきたワード「購買力平価」と、長期金利をあわせたグラフで、ユーロの位置を教えていただきましたが、購買力平価というのが私は苦手で。その概念をあらためて教えていただけますか。

鈴木 分かりました。モノには価格がありますね。たとえば日本で売られているりんごが100円だとします。アメリカで売られているりんごが1ドルとします。モノは同じだから価格も一緒だよねと。そうすると、為替レートは1ドル100円じゃないかというのが購買力平価の基本的な考え方なんですね。

いろんなモノ、たとえば食料品、建物をたてるときの資材など、いろんなモノの統計を集約してまとめているのがOECDが出している購買力平価というデータです。ただ為替はモノを貿易するときに発生するレートなので、実際、統計に入っているデータには、貿易できないモノ、たとえば医療や教育が入り込んでいます。実は購買力平価も為替を考える上で完全なものはないんです。実は。

でも実際そういう統計をみたときに手がかりになるのは、今ある購買力平価、マクロデータではそれしかないので、参考にしているわけです。

秋元 実際に購買力平価がどうであろうと、為替がまったく違う動きをする可能性もあるけれども、一つの参考の指標ということなんですね。

鈴木 購買力平価に収斂(しゅうれん)していくというよりは、今の各通貨の位置がどうなっているかというのをパッと見て確認する。それだけではなく今日、グラフで軸を横にとった実質金利の位置と(縦の)購買力平価をみたときに、違和感があるバラツキになっていないか。いろんなアングルでみることが大事になってくると思うので、今日はあの2つの尺度を使って通貨のバラツキをみたんですね。

「絶対的購買力平価」と「相対的購買力平価」な違いは?

秋元 購買力平価っていうと、絶対的購買力平価と相対的購買力平価がありますよね。これはどういうふうに見分ければいいんですか?

鈴木 相対的のほうは、物価っていう概念が入ってくるんですね。たとえばアメリカのインフレ率が3%に対して、日本のインフレ率が1%。こういう違う物価の状況の中で出してくるのが相対的購買力平価です。りんごの話が絶対的(購買力平価)だとすると、少し概念が違ってくるんですね。

秋元 両方とも、現実に考えるとそうはならないこともあるけれども、一つ参考ということで。OECDが出しているのは絶対的購買力平価なんですか?

鈴木 そうですね、まさにそれをまとめている指標があるんです。

秋元 ただ通貨のポジションを見ていくうえでは、今日も鈴木さんに出していただいたみたいに、実質的な長期金利というものもあわせてみたほうがもうちょっと具体性が出てくるんですか?

鈴木 実質金利が高いか低いかっていうのは、投資家がその通貨を買うか売るか選択する重要な尺度になってくるので、それによって、安ければ適正、高ければ実質金利がどの位置にあるかによっては、割安割高っていうところを考えることになります。

秋元 今日みたいにあわせたほうが、実際の通貨が今いるところっていうのが、だいたい分かってくる。

鈴木 ある程度バラツキも、右上から右下に、こう並ぶようにバラついていたと思うんですが、だいたい頭の中で浮かぶ画と同じようなバラツキになっていたと思うんですね。ただユーロなんか見ると、実質金利の位置と割安の位置とが、あまりに他の通貨と比べると、ややおかしいところにあるなというのが分かるので、「ひょっとするとこれ割安なのかな」という感じで、ヒントになったかなと思いますけどね。

秋元 ユーロが上昇したとか、そういうのは分かるんですけれど、なかなか他の通貨と比べたときの現在の通貨の位置ですとか、割安感とか割高感とか、とらえるのは難しいなって。

鈴木 いろいろな通貨、為替があるので、割安か割高かの判断は非常に難しいんですけれども、いろいろな指標、尺度を使ってみていくといいと思います。

秋元 なるほど。今日は鈴木さんに「購買力平価」についてうかがいました。以上、「モーサテ経済ワード」でした。

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