相続税対策や土地の有効活用でアパート経営が注目されている。各建築業者がアパート経営をCMで謳っているため、馴染みのある方もいるだろう。しかし世間で流されている情報を鵜呑みにしてはいけない。「こんなはずでは……」と頭を抱えるオーナー(アパート経営者、本文では「オーナー」で統一する)もいるのだ。

ここでは元銀行員の実体験からアパート経営失敗のリアルを紹介する。

一括借上(サブリース)の落とし穴 家賃は次第に下がっていくもの

不動産投資,アパート経営
(写真=PIXTA)

建築業者の営業トークとして「弊社には一括借上(サブリース)があります」と言う場合がある。一定期間建築業者がアパートを借り上げて、入居者の募集などオーナーに代わって面倒なことを代行し、毎月家賃から手数料を差し引いた金額をオーナーの口座に振り込むというものだ。

この仕組みをオーナーが聞くと、「なんだ、決まった金額が毎月口座に振り込まれるのか。安心だな」と思うかもしれない。しかしこれこそが一括借上の落とし穴である。

通常一括借上を行う場合はオーナーと建築業者側で契約を交わす。そして契約の条項には大抵振り込まれる家賃について「○年ごとの更新」といった記載がある。つまり更新ごとに振り込まれる金額が変動する可能性がある。

更新のたびにアパートは古くなっていくから、家賃は次第に下がっていく。契約当初の家賃が保証されると勘違いしていたオーナーは、ここで「こんなはずでは……」と頭を抱える羽目になる。ちなみに家賃に関しては建築業者とトラブルになりやすい。

なお銀行側からアパート経営について慎重に検討するようにアドバイスすることはほぼない。銀行は1円でも多く融資したいし、建築業者の提案にケチをつけるようなことはしたくない。ケチをつけると今後銀行へ融資の相談が来なくなるからだ。一部の銀行が建築業者に顧客を紹介する代わりに手数料を受け取っていたことが2017年4月23日付の日本経済新聞電子版で報じられている。こうした「持ちつ持たれつ」の側面があることは知っておいた方がいいだろう。

返済が難しくなったら?

アパート経営を行う場合、オーナーの多くは銀行から融資を受ける。そして銀行は融資する際にいくらか金利を引き下げるのが一般的だ。もちろん銀行は「この顧客はお金を延滞なく返してくれるだろう」という信頼の元に金利を引き下げている。

しかし返済が難しくなれば、銀行は金利の引き下げを止める。そしてオーナーの返済能力が元に戻るまで毎月の返済額を一時的に減らすことが多い。

オーナーが心理的に辛くなるのはこの局面である。オーナーは定期的に銀行に経営計画を提出しなければいけない。経営計画とは、例えば「経営を立て直すためににいつまでに○○をします」とった具合だ。

筆者も銀行員時代、返済が難しくなったオーナーを見てきた。こうしたオーナーは様々なことを自分でしなければいけない。あるオーナーは自身でアパートの外壁を掃除していた。またアパートに入居者が入るよう不動産会社を回ったりもする。

銀行は経営計画通りに進捗しているかをチェックするのだが、お金も少なくできることも限られる中で再建は難しいというのが正直なところだ。地方でもアパート建設の話は少なくないが、人口が減少しているので今後はこのような事例が増えてくると思われる。

ちなみにこの段階になると建築業者にできることは少ないように思う。彼らも多くの管理アパートを抱えているし、1物件にのみかかり切りになることはできない。それでなくともアパートの建築数は増えているのだ。あまり多くを期待しないのが賢明だろう。

注意すべき3つのポイント

ここまで事例を挙げながらアパート経営の失敗について見てきた。もちろんアパート経営全てが悪いというのではない。以下に挙げるポイントを押さえてから経営を始めてみても遅くはないだろう。

(1)そのアパート建設は本当に必要か
相続税対策としてアパート経営を始めるオーナーもいるが、都心部ならいざ知らず地方では路線価が低く相続税が想定ほどかからない場合もある。手元に納税できるだけのお金があるのなら、建設の必要性は低い。

(2)一括借上のデメリットを認識しているか
一括借上は入居者募集など面倒なことを建築業者が代行してくれる。その反面、契約当初の家賃が保証されるわけではないから、空室が続くと家賃収入が減る可能性がある。

(3)アパート建設に適した場所か
入居する一つの判断材料として利便性が挙げられる。最寄駅から徒歩何分か、周辺にスーパーや病院はあるか……などだ。所有(またはこれから購入)している土地が利便性が低いと、思うような家賃で入居者の募集をかけにくい。今一度適した場所かを確認するのが良いだろう。(沖見 傑、元銀行員)

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