世界銀行が発表した最新版の世界経済見通しで、2017年の世界全体の経済成長率は2.7%と予測され、2016年の2.4%から成長が加速すると見ていることが明らかになった。日本の成長率は1.5%と予測され、輸出の持ち直しを背景に、1月時点の予測から0.6ポイント上方修正された。
新興国が成長をけん引 日本は先行き不透明
世界全体の経済成長率は2016年に2.4%まで落ち込んだが、2017年に2.7%、2018年と2019年は2.9%の成長へゆるやかに回復していく見込みだ。要因は製造業と貿易の好転、商品価格の安定等が挙げられている。特に貿易に関しては、2016年は伸び率が金融危機後最低となる2.5%にまで落ち込んでいたが、2017年には4.0%にまで回復する見込みである。
成長をけん引するのは引き続き新興国となる。2017年の経済成長率は先進国の1.9%に対し、新興国は4.1%となっている。更に2018年には先進国が1.8%成長へ減速する事に対し、新興国は4.5%成長への加速が予測される。7大新興国(中国、ブラジル、メキシコ、インド、インドネシア、トルコ、ロシア)については、2018年には1990年から2008年までの長期平均成長率を抜く事が見込みであると指摘されている。
日本については、1月時点での予測から0.6ポイントの上方修正が加えられ、2017年は1.5%成長が見込まれている。昨年の1.0%から成長が加速する。世界経済の持ち直しやドル/円相場が110円台近辺で推移している事等により、輸出が伸びると見られる。しかし、先行きには不透明感が漂う。2018年は0.2ポイントの上方修正が加えられたが1.0%成長と減速が見込まれる。賃金の増加ペースが鈍く、個人消費の伸び悩みが影響する。2019年は消費増税が加わり、0.6%成長へと更に減速する。
米国については、2017年の成長率は2.1%と見込まれる。足下の消費支出の低迷等を受け、1月時点での予測から0.1%の下方修正となる。しかし、2018年の成長率は2.2%に上方修正される等、緩やかな経済回復基調が継続するとの見通しだ。
リスクは保護主義と各国財政状況の悪化
世界銀行は今後のリスクについて、各国の保護主義の台頭を挙げている。トランプ米大統領が中心となり、貿易規制等の保護主義政策が各国で取られた場合、経済成長の妨げとなりかねないと指摘する。「パリ協定」離脱のような判断を経済分野で下さないよう注視する必要がある。
また、新興国を中心に財政状況が悪化している点もリスク要因である。新興国の半数以上で2007年と比べ、政府債務座高が対GDP比で10%以上上昇している。
世界銀行の見通しは1月時点での前回見通しと比べるとポジティブな印象を受けるが、他の予測と比較すると慎重な見通しとなっている。国際通貨基金(IMF)が4月に発表した見通しによると、2017年の世界経済は3.5%成長と予測されている。経済協力開発機構(OECD)の2017年3月の予測は3.3%である。統計や予測手法の違いもあるが、これらの予測と比較すると、控えめな数字となっている。
一方、日本については世界銀行の強気の見通しが際立つ。2017年の成長率はIMF、OECD共に1.2%の成長を予測しており、世界銀行の今回の予測はそれらを大きく上回る。予測時期が異なる事も理由であると見られるが、今後IMFやOECDの見通しの修正に注目が集まる。
世界銀行は同見通しについてのプレスリリースで「世界経済は明るい見通しに支えられている」との言葉を使用している。リスク要因も多くあるが、「明るい見通し」が維持されるよう期待したい。(ZUU online編集部)