NISA(ニーサ)口座は、上手に利用しないともったいない口座です。しかしながら、海外の金融商品で必ずぶつかるのが「為替リスクの問題」です。商品名に記載してある為替ヘッジ「あり」や「なし」とはどういうことでしょうか。

為替ヘッジとは?

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(画像=(写真=katjen/Shutterstock.com))

ヘッジとは日本語で「回避」という意味です。為替ヘッジといえば為替相場変動のリスクを回避するという事です。外国債券を運用する場合には、日本円と投資する外国債券の通貨との間に価値的な変動が起きて、タイミングによって価値が上がったり下がったりします。うまく価値が上がった時に売却すれば利益になりますが、価値が下がれば損失になります。

為替変動によって損失を被る可能性のことを為替リスクといいます。為替変動による不利益を回避する行為が為替ヘッジです。為替ヘッジの方法にはいろいろありますが、最もよく行われる方法は為替先物予約です。為替先物予約とは、あらかじめ期日を確定して当該通貨の売買を予約することによって円転換価額を確定してしまう事です。この時の通貨の価額を為替レートといいます。

為替レートを確定してしまえば、その後為替相場がどのように変動しても損失を被る心配が無くなります。この方法は、貿易の現場では必ずと言っていいほど行われる為替ヘッジの手法です。

為替ヘッジの仕組み

投資信託の為替ヘッジは為替先物予約という方法で行われます。1ヵ月から3ヵ月ぐらいの期日を設定して為替先物予約をすると、予約期間中の円転換レートが固定します。これなら為替変動に神経質にならずに外債を保有することができます。普通為替ヘッジのための為替先物予約は、期日が到来すれば順次期日を延長することができます。しかし、為替予約期間が長くなればなるほどコストがかかります。

円転換レート固定の為に為替先物予約をするということは、言い換えれば通貨を売り、円を買うということです。買った方の通貨の利息を受け取り、売った方の通貨の利息を払わなければなりません。もし、米ドルの為替ヘッジのために3ヵ月後期日で為替先物予約をすれば、アメリカの短期金利で米ドル分3ヵ月分の短期金利を受け取り、日本円3ヵ月分の日本の短期金利を払わなければなりません。

現状、米国の短期金利の方が日本のそれよりも高いので、差し引きマイナスになります。このマイナス分が為替ヘッジコストです。ですから金利の高い国の債券ほど、為替ヘッジコストは高くなります。一方で金利の高い国の債券ほど利回りは有利ですが、為替リスクは高くなるという傾向があります。利回りのいい外債を保有して高い為替リスクを負担するか、または多少利回りは薄くなっても為替が安定した外債を保有するかが思案のしどころなのです。

為替ヘッジのメリット

為替は意外なことを発端にして大きく変動することが有ります。経済事情や紛争はもとより、時には地震や津波のような大災害など全く予測できない事柄が発端となることもあります。

投資信託を保有する人にとって、為替リスクは非常に頭の痛い問題です。為替ヘッジは、早い段階で為替先物予約をして、円転換レートを固定することでこの不安定なリスクを回避することができます。その後は、利回りと価格変動に気を付けていけばいいのです。それに、利回りと価格変動も為替の変動と微妙に影響し合います。場合によっては為替が不利に働くと二重三重に負担を強いられることにもなります。このことを考えると、為替ヘッジは不安要素軽減のためには非常に有効な方法です。

為替ヘッジのデメリット

為替ヘッジは保有する外債の円転換レートを固定化して為替リスクを軽減しようとするものです。このことはとりもなおさず、為替が有利に変動した時の利益を逃すということになります。折角、ヘッジコストをかけて固定化したレートが決済期日を迎えるころには不利なレートになってしまうことが有るのです。もちろん、このことで新しい支払いが増えるわけではありませんが、もし、ヘッジしていなかったら得られたかもしれない利益を逃すことになります。

また為替ヘッジでコストをかけていますから、利回りでそのコストより大きな利益を上げなければ、結局は損を出してしまいます。たとえ為替ヘッジをしたとしても、利回りは順調か?価格変動に異変はないか?などには常に注意していく必要があります。為替ヘッジの期日が到来したら為替動向を再確認して、場合によっては為替ヘッジなしにスイッチした方がいい場合もあり得ます。

NISAの先を見よう

NISAを投資のトレーニングルームと考えると、口座内のすべての商品を為替ヘッジしてしまっては、見慣れないマシンの使い方を知らずに素通りするようなものなのです。実際に触ってみなければ、見慣れないマシンが自分に合うかどうかも分かりません。NISAというトレーニングルームでは、リスクにばかり気を取られすぎず、見慣れないマシンを少しずつ試してみることで、投資への筋力を高めていくことができるでしょう。(ZUU online 編集部)