たまたま金融機関で「○○ファンド」などの名前ですすめられても、それがコーラブル債であるとはすぐにはわからない事もあります。今回は、このコーラブル債がどのようなものか、持つ意味が果たしてあるのかを考察してみたいと思います。

①こんな債券です

"コーラブル債は仕組債の一種で、簡単にいえば「投資家が受け取る利子が高い代わりに発行体が満期前に償還できる」債券です。投資家からすると「この利子(クーポン)なら嬉しいけど満期前に償還されると元本割れをおこすかも」という債券です。仕組債とはデリバティブ商品であって、いろいろな仕組みを持つ債権なのでこう呼びます。また、債券ではなく、コーラブルタイプの預金もあります。いずれも、発行体が繰り上げ償還する権利を持っていますので、投資家は好きなときに償還させる事ができません。現金にかえづらいのです。債券というのは「投資家が発行体にお金を貸した際の借用証書」です。お金を貸すときの原則は「信用できない借り手からは利子を多くいただきますよ」ですから、このコーラブル債も利子が多めに設定されている以上、リスクも少なからずあるという事です。しかし、この低金利の時代にお金を銀行に寝かせておくわけにもいきませんので、コーラブル債をもう少し検証してみましょう。

参照 日本証券業協会 http://www.jsda.or.jp/sonaeru/risk/shikumisai/

②コーラブル債のしくみとは

発行体は、他の金融機関にコーラブル・スワップを売って、投資家に支払う利子を手に入れます。コーラブル・スワップは期間の違うものを組み合わせてスワップション(スワップのオプション)として金融機関に売却します。このスワップションにプレミアム(オプション料)が付いていますので、これで投資家に市場よりも高い金利を支払う事ができるわけです。
この金融機関は、スワップ契約の解約権を持っています。ですから、もしスワップションの売却先の金融機関が、金利低下により権利行使してしまうと金利スワップ契約は解消となります。そうすると、発行体は投資家にも金利を支払えなくなります。ここでコーラブル債は、投資家に償還がされるのです。

③投資家目線でみた特徴

どんな債券かが、どうも掴みづらいかもしれません。ここで、別の見方をしてみましょう。コーラブル(collable)という言葉はコール可能という意味ですので、投資家が、発行体に「コールオプションを売る」と考えるといいかも知れません。
コールオプションは買う権利です。という事は、発行者は自分が有利な時に買い戻すことができ、10年もののコーラブル債でも2年後に買い戻されてしまう可能性があります。10年間、定期預金よりもたくさんの利子が受け取れるぞと思っていたのに途中でそれが終わってしまうし、よく計算してみたら償還された金額も元本割れというのが起こりえます。

④では、どう利用すればいいのでしょうか

繰り上げ償還の権利を持っているので、当然ながら金利が上昇する局面では発行体は買い戻しません(償還しない)。ですから投資家からすれば他の有利な投資をするチャンスを逃す事になります。ここで、コーラブル債を持ち続けるのと他の投資先と比べてどちらがいいかは、投資家それぞれの考えによるでしょう。そして、金利が下がる局面では、発行体が償還してしまうので、これまでもらえていた高い金利は受け取れなくなり、もしかして額面を割ってしまっているかも知れません。こちらも、それまでに受け取った利子が十分であれば、まあ文句は言えないわけです。発行体がコールできる回数で種類もあって、1回だけが「ワンタイムコーラブル」、2回以上は「マルチコーラブル債」、いつでも可能なものが「エニータイムコーラブル債」と呼ばれます。このあたりも、債券を買う時にしっかり押さえないと利益の期待値の計算が変わってきます。

⑤すこし整理してみましょう

メリット

  1. 今どきの定期預金よりも利子が高い
  2. 自由に動かせないのでついいろいろな投資をして、結局あまり増やせない人には向いているかも

デメリット

  1. 金利上昇の局面でコーラブル債になっているお金をもっと魅力ある投資に振り向けられない
  2. 繰り上げ償還されると、元本が額面割れの可能性がある

投資家としてじっくり検討して欲しいコーラブル債

コーラブル債は上級以上の投資家の方には、一考の価値のある投資方法かも知れません。コールやプットオプションの概念を持っていないと仕組みがわかりにくいですし、他の金融商品以上に目論見書や運用報告にしっかりと目を通していただきたいからです。
また、手持ち資金のなかからも、「遊ばせておくよりはやってみようか」と思える金額に限定されるほうが良いでしょう。政策金利が据え置かれたまま動かない局面では、繰り上げ償還の可能性が低く、貯金感覚でいても問題ないように思います。しかし、今後はどうなるでしょうか。
現在、2014年ですが、日銀もインフレ目標を掲げて、政策金利も上がる方向とみていいでしょう。コーラブル債やコーラブル預金は、これまでの20年に及ぶ低金利時代に銀行の定期預金よりも多い金利で注目を浴びていますが、今後の政策金利の上昇リスクもかんがみて、せめて償還期間の短いものの方が良いのでは? とも感じます。

ところで、銀行が「ステップアップ預金」などの名称で売り出している定期預金もコーラブルタイプの定期預金で、債券と違う所は、原則として償還時の元本割れがない事です。いちおう、こちらも参考に並べて検討するのが賢明ではないかと考えます。

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