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「外貨預金と外貨MMFの課税関係について」

一昨年来のアベノミクスの恩恵で、お手持ちの金融商品の確定申告の必要性に、頭を抱えている投資家も多数いらっしゃることと思います。この項では、外貨預金と外貨MMFの課税関係を簡潔にご説明させていただきます。

尚、内容に万全を期すことは申し述べるまでもありませんが、今後の課税関係の変更(2014.2執筆)や、より詳細な内容の記述は国税庁発行の各種パンフレットと変わらなくなることなどの事情をご理解いただき、ご自身の確定申告のご理解に繋がることを願います。また筆者の個人的な感想となりますが、国税庁HP上の「確定申告書作成コーナー」にて、データー等をご入力いただき参考にされることをお勧めいたします。


「外貨MMF]は申告の必要なし!

外貨MMFにのみ投資をされていた方は、確定申告の必要はありません。

外国籍の投資信託の分配金(インカムゲイン)については、お取引された金融機関により「利子所得」として、源泉分離課税されます。

※国15%+地方5%+(平成49年まで復興特別加算税)が加算され、合計20.315% 以下本項では、国+地方=20.315%と表記します。

また、外貨MMFの為替差益(キャピタルゲイン)については「非課税」となります。このため「投資金額の大きい方」「為替差益重視の方」にとっては、外貨MMFは大きな魅力となります。


「外貨預金」は複雑な課税方法。利子と為替差損の両方を考える

預金と言う言葉のイメージから、外貨預金も簡素な課税をイメージされる方もいらっしゃると思いますが、お取引方法により複雑な構造となるので注意が必要です。

「わたしは銀行におまかせよ」・・・これは外貨預金には通用しません。

外貨預金は課税の構造が複雑であること、為替レートや手数料が割高であること、時間的制約があることなど、知れば知るほどFX(外国為替証拠金取引)のレバレッジ1倍の方が、断然有利に思われます。

外貨預金から生じる損益には、利子と為替差損益がありそれぞれが課税対象となりますから、分けて考える必要があります。また購入時に為替予約をしているか否かによっても、課税方法や税率に違いがあり理解と注意が必要です。

①利子について

②為替予約を行っていて利益が出た場合

③為替予約を行っていて損失となった場合

④為替予約を行わず利益が出た場合

⑤為替予約を行わず損失となった場合

①(必須)+②③④⑤(②~⑤の中から1つ)=必ず2つの視点が必要になります。


「外貨預金」の税率は、人によって違う

<例>

1ドル=100円のときに、1万ドル(100万円相当)を外貨預金した(金利は5%とする)として、以下のケースに当てはめて計算します。

①外貨預金の利子に対する課税

外貨預金の利子は、お取引の金融機関により「利子所得」として源泉徴収(税率20.315%)され、他の所得とは分離課税されます。「利子所得」である以上、他の株式やFXなど(こちらは雑所得と区分される所得)の金融商品との損益通算はできません。源泉されて課税関係は終了しているので、利子に関しては確定申告は不要です。

◎1万ドルの利子が、500ドル(5%)

500ドル × (満期時または解約時の)為替= 利子

利子から20.315%が徴収(納税済み)され、残りが受け取れる。申告不要

②為替レートの設定(為替予約)をして利益となった

外貨預金の満期または解約時には、利子とは別に為替差損が生じます。そのリスクを避けるために購入時に予め、満期時の為替レートを設定していたケースの説明です。

為替予約して利益となった場合は、雑所得としてお取引の金融機関により源泉徴収=納税済み(20.315%)されて課税関係は終了です。確定申告は不要または不可能です。

◎1万ドルを1ドル=120円で換金。

1万ドル×120円=120万円

購入時に比べて、20万円の利益となり20.315%を雑所得として源泉徴収され、課税終了・申告不要。

③為替予約をしていて損失となった場合

この場合は、雑所得となり他の同一カテゴリーの所得と相殺が可能となります。損失のみでは課税対象となりませんが、他の所得と相殺して利益が出る場合は、確定申告が必要です。税率は超過累進税率が適用され、国(5~40%)+地方10%+復興特別加算税が課税されます。

◎1万ドルを80円で換金。

1万ドル×80円=80万円

20万円の損失は、同一のカテゴリーの雑所得と相殺が可能となります。合算して利益が出ると申告が必要です。

④⑤為替予約をしていない

損益にかかわらず雑所得となり、他の同一カテゴリーの所得と損益通算が可能です。

合算後に利益が出れば、確定申告が必要です。税率は超過累進税率が適用され、国(5~40%)+地方10%+復興特別加算税が課税されます。

◎換金時の為替レートにかかわらず、損益通算して利益が出れば申告が必要です。

※③④⑤のケースでサラリーマンの場合は、年間20万円以下の雑所得であれば申告の必要はありません。

外M・外貨預金課税関係一覧

※雑所得の計算は、区分毎により行われます。外貨預金の差損は他カテゴリーの雑所得(公的年金、事業以外の講演料、FX等の他の金融取引など)と単純な合算ではありませんのでご注意してください。

確定申告は、自分で行うと課税の仕組みの理解が進むとともに、投資商品の優位性の理解や比較が容易になるというメリットもあります。練習も含めてご自分でチャレンジされるのも一考です。

photo credit: Pain Chaud via photopin cc