確定申告,繰越控除

株で損をしても、3年間は繰越控除ができるらしい、でもNISAはできない、と最近よく耳にします。それでは、損失の繰越控除とはなんでしょうか。

今回は、確定申告のうち、投資活動において損失が出た場合の、損失の繰越控除についてお伝えします。株式投資を中心に他のパターンもみてみましょう。

目次

  1. 繰越控除できる期間
  2. 繰越控除できる条件など
  3. 株式投資以外の繰越控除の対象、できるグル―プできないグループ
  4. 外貨建て資産の繰越控除?
  5. 住宅ローンと不動産投資
  6. 繰越控除で上手に節税

繰越控除できる期間

株で損をしたら、繰越控除ができるらしいとまではわかりますが、なぜ3年という長い期間が許されているのでしょうか。これは、損失の金額が多すぎて一度に損益通算しきれない場合があるからです。オーバーしたぶんを翌年も繰り越せますという意味ですね。こう考えるとこの制度は、なかなか大きな節税効果があるようです。

この3年とは、もし平成25年に株式投資で損失を出したら、26、27、28年の確定申告の際に申告できるという事です。平成25年には日本株で損失を出した方は少ないかもしれませんが、26年は株式市場も荒れていますので、来年の確定申告に向けて予習をしておきましょう。

14-02-23

(図は、国税庁のホームページより)

医療控除と同じように、損した(医療は払った)ら還付申告をすることで節税ができるわけですが、申告を忘れてしまった場合でもやはり医療費のように還付申告は期限後にできることがあります。これには5年という期間が設けられています。もし「4年前にすごく損をしたな」と思ったら、まだ間に合いますので確認してみましょう。特にサラリーマンの方は普段は確定申告をしないので、うっかりしてしまいそうですね。

この確定申告の「失念」は例外ですが、サラリーマン投資家の方も投資活動をしていると、確定申告は必要な事が多いです。繰越控除も3年間できる場合は3年のあいだ毎年、確定申告が必要ですので注意しましょう。

繰越控除できる条件など

繰越控除するためには、確定申告が必ず必要です。株式口座の特定口座「源泉徴収あり」の場合でも、損失があれば、あらかじめ源泉徴収された分も還付申告をすれば戻ってきます。株取引は、NISA口座以外のどの種類の口座で損失を出しても、繰越控除はできます。

また、国税庁のページには「株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得の金額」とあります。売買時の利益だけでなく配当からも控除してもらえます。

株式投資以外の投資先はどうでしょうか。投資信託を持っていらっしゃる方も多いと思いますが、株式を組み入れた株式投資信託は損益通算できますが、公社債型の投資信託は損益通算ができないので注意が必要です。他に主な投資活動別にみてみましょう。

FXは店頭取引であってもくりっく365などの取引所取引であっても、損益通算できます。売買益もスワップも両方できます。先物取引、CFD取引もFXと同じで雑所得として損益通算できます。

株式投資以外の繰越控除の対象、できるグル―プできないグループ

金融商品には税法上のグループ分けがされています。まず分離課税のグループと総合課税のグループです。損益通算できなおかつ繰越控除が可能なのは、分離課税と覚えておくといいかも知れません。この分離課税の投資商品もまた二つに分かれています。

国内上場株式、外国上場株式、両ETF、REIT、公募株式投資信託、それらの配当金、がひとつめのグループで「上場株式等グループ」です。次に、取引所と店頭FX、商品先物取引、株価指数先物、有価証券先物取引、オプション取引、上場カバードワラントで「デリバティブグループ」です。

「上場株式等グループ」は譲渡所得です。これには非上場の株式の所得は含まれませんので注意しましょう。

「デリバティブグループ」は雑所得です。所得の種類が違うので、違うグループは損益通算ができず、当然繰越控除もできません。

言い方を変えれば、同じグループ内なら損益通算ができるということです。

外貨建て資産の繰越控除?

銀行の外貨預金などはどうでしょうか。これは「総合課税」の「いろいろな投資商品グループ」になります。外貨預金の利益は同じグループ内での損益通算が可能です。しかし繰越控除ができません。総合課税のもうひとつのグループ、「いろいろな投資商品グループ」である金、プラチナ、(総合課税を選択したときの)配当金なども同じです。

海外の株式に投資していて損益が出た場合、さきほどの上場株式等グループに準じます。もし外国で源泉徴収された場合、外国税額控除制度があり、3年間の繰越控除も同じように適用されます。

住宅ローンと不動産投資

住宅ローンを組んだ一年目には還付申告をすることができます。条件が合えば繰越控除もできる場合があります。https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3377.htm

また、投資家にとって不動産投資の税金も気になるところです。個人でアパートを経営の場合は所得の種類が違うので損益通算も繰越控除もできません。しかし、法人化すると事業所得となってその両方ができるようになります。譲渡所得の欠損金を譲渡益と損益通算でき、控除も繰り越せるのです。これは面倒そうですが大切な節税方法ですから、一考の価値はあると思います。

繰越控除で上手に節税

このように、繰越控除できるパターンが数多くあります。確定申告は頭の痛い問題と思われがちですが、払いすぎた税金をそのままにしては株で損をして税金でも損をする事になってしまいます。ぜひ一度投資履歴を洗い出して、期限の残っている件に関しては繰越控除を申請しましょう。

paul bica via photopin cc