香港市場は本土市場と比べ、株価変動の要因がわかり易い。特にセクター間、銘柄間の動向については、足元の業績、先々の見通しによって左右され易い。中国関連が香港市場の主要銘柄となっている現在、香港市場で上昇しているセクター、下落しているセクターを調べることは、中国経済の実態を知るうえで意味がありそうだ。

まず、昨年最終取引日と今年6月27日の終値を比較すると、ハンセン指数は17.5%上昇しており、NYダウの7.8%、TOPIXの6.6%、上海総合指数の2.8%を大きく上回っている。上半期(ただし6月27日まで)のハンセン指数はこの4指数の中でもっともパフォーマンスが良かったといえる。

2016年1年間の騰落率を見ると、NYダウがトップでハンセン指数はTOPIXを僅差でかわして第2位となっている。決して前年の相場が悪かったから今年前半のパフォーマンスが良かったわけでない。ちなみに、2015年最終取引日と直近とを比較した場合は、NYダウがトップだが、僅差でハンセンが続いている。

日本人が知らない中国最前線(10)では、香港市場が活況な理由について、堅調な企業業績のほか、(1)本土からの資金流入、(2)欧米機関投資家のリスク選好、(3)ドル安傾向などが挙げられると指摘した。需給要因もあるとはいえ、香港市場は欧米機関投資家の取引ウエートが大きく、国際的な市場である以上、業績面で不安のある市場には資金が入りにくい。

世界の投資家が中国経済全体の見通しに不安を感じているというようなことは今のところなさそうである。

不動産価格コントロール、金融リスク縮小政策に逆行、不動産が上昇

中国経済
(写真=PIXTA)

上半期に相対的にパフォーマンスの良かったセクターをみると、興味深いことがわかる。電子部品は、大幅な仕様変更が予想されるiPhone8に対する需要が大きく、さらに中国系スマホメーカーの台頭により、本土部品メーカーの受注は好調だ。

家電、自動車は需要拡大に支えられており、空運は業界再編計画が進んでいる。海運は運賃に底打ち感が出てきた。また、医薬品は、薬価改定の悪影響が薄まっている。ガスや、ガスを利用したクリーン発電などは、共産党のガス利用拡大政策の恩恵を受けている。

違和感のあるのは、不動産、マカオカジノである。

不動産では、恒大地産(03333)、融創中国(01918)、碧桂園(02007)、雅居楽地産(03383)、中国海外宏洋集団(00081)などが大きく買われている。

全国不動産開発投資(累計)の伸び率を見ると、2016年7月をボトムに上昇傾向を示しており、5月(累計)については8.8%と少し鈍化しているが、4月(累計)は9.3%まで上昇している。

個別企業ベースでみると、1-5月累計の契約販売額がいずれも好調だ。たとえば、恒大地産は65.7%増、融創中国は90%増(予約販売含む)、碧桂園は155.7%増、雅居楽地産は49.9%増、中国海外宏洋集団は64.8%増と、大幅増を達成している。

マクロベースでは、厳しい不動産価格コントロール政策や、金融レバレッジ縮小政策が打ち出されているが、ここで示した不動産会社の業績には影響が出ていない。厳しい政策は2件目住宅への投機を排除することである。彼らが提供する質の高い中・高級物件に対する実需は非常に強く、供給が不足している。株価は、こうした業績の良さ、手元の開発案件の豊富さから買われている。

マカオカジノでは、メルコ・インターナショナル(00200)、ウィン・マカオ(01128)、銀河娯楽(00027)、澳門博彩控股(00880)などが買われている。

業界全体のカジノ月間売上高を見ると、2015年2月の48.6%減を底に回復基調となっており、2016年8月からプラスに転じている。マカオカジノ最大の顧客は本土中国人であるが2014年に入り、汚職取り締まりが厳しくなると、顧客数が大きく減少し、業績が悪化した。しかし、その影響も既になくなっている。各社の上期業績は回復に向かっている。

共産党の厳しい汚職取り締まりはひと段落しており、マネーロンダリングなどのグレーな資金の動きが活発となりつつある。贈り物、接待・宴会需要として本土で根強い人気のある白酒なども、既に業績が回復し始めて1年以上経つ。本土A株であるが、貴州マオタイ(600519)、五糧液(000858)といった主要白酒メーカーの株価は2016年春以降、しっかりとした上昇トレンドを形成している。接待需要についても、通常の状態に戻っている。

不振セクターは、産業構造変化、政策変動などが要因

一方、この半年間で株価軟調が目立ったセクターは、食品、アパレル、電力機械、太陽電池関連などである。

食品では低インフレ化で値上げが難しい中、需要の伸びが低く、競争が激化している。アパレルでは国際的な大競争が進展、寡占化が進んでいる。昨年は業界全体で不良在庫の処理が終わったことで買われた銘柄が多かったが、今年はその反動が出ている。電力機械、太陽電池関連では、省エネ環境対策に大きな波があり、前年は積極的な政策が実行され、今年はその反動が出ている。

香港株式市場、金融政策次第では調整の可能性も

最も懸念されるのは、金融レバレッジ縮小政策の動向であるが、いまのところ実体経済への影響は軽微である。政策の趣旨は、実体経済に影響を与えることなく、投機を抑制することである。

ただし、7月に入っても中国人民銀行が銀行間取引金利の高め誘導や、資金供給量の抑制などを続けるとすれば、投機の抑制のみならず、正常な不動産取引や、適正な設備投資、財務体質の弱い零細企業の資金繰りなどに影響が出るかもしれない。今後の金融行政には、十分注意したい。

田代尚機(たしろ・なおき)
TS・チャイナ・リサーチ 代表取締役
大和総研、内藤証券などを経て独立。2008年6月より現職。1994年から2003年にかけて大和総研代表として北京に駐在。以後、現地を知る数少ない中国株アナリスト、中国経済エコノミストとして第一線で活躍。投資助言、有料レポート配信、証券会社、情報配信会社への情報提供などを行う。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。東京工業大学大学院理工学専攻修了。人民元投資入門(2013年、日経BP)、中国株「黄金の10年」(共著、2010年、小学館)など著書多数。One Tap BUY にアメリカ株情報を提供中。HP: http://china-research.co.jp/

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