近年は節税の為に海外移住を検討している人は随分多いようですが、海外移住した場合の相続と贈与に関して勉強したいと思います。
贈与の種類
贈与といっても色々なタイプの贈与が有ります。
生前贈与はごく一般的な贈与です。現在生存している人が、自分の財産を与えることです。死因贈与は贈与する人が生前に贈与の約束をして死亡とともに実行される贈与のことです。遺贈とよく似ているのですが、死因贈与は、贈与者、受贈者双方が合意した契約が必要で、場合によっては仮登記をすることもあります。そのため、贈与者の事情で一方的に取り消す事はできません。
遺贈は遺送者の意志だけで決めるので取り消す時も遺送者の意志だけで取り消せます。税務上は、死因贈与も遺送と同様の扱いになり相続税の対象になります。ただし、死因贈与と遺贈に関しては「続税の2割加算の規定」が適用されます。
相続税の2割加算の規定とは、受贈者が配偶者、または一親等の親族以外の場合、相続税の20%を加算するというもので、加算後の税額はその人の相続税額の70%程度を上限とします。
負担付贈与
贈与の条件として受贈者に何らかの負担を要求するものなので、契約は双務契約となります。贈与税の課税対象額は、贈与額から負担額を差し引いたものになります。
贈与は相続税の計算にどのように反映するのでしょう
誰でも、課税控除額以上の財産を人からもらったら、それが相続でも贈与でも税金はかかります。贈与税の税率は下の表の通りです。
基礎控除後の課税価格
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税率
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控除額
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基礎控除後の課税価格
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税率
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控除額
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200万円以下
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10%
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-
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600万円以下
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30%
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65万円
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300万円以下
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15%
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10万円
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1,000万円以下
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40%
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125万円
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400万円以下
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20%
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25万円
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1,000万円超
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50%
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225万円
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(例)贈与財産の価額の合計が400万円の場合
基礎控除後の課税価格 400万円-110万円=290万円
贈与税額の計算 290万円×15%-10万円=33.5万円
出典:https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4408.htm 2014,1,28
相続が発生した場合には、被相続人の死亡前3年以内に贈与された財産は相続税の課税対象になります。この場合の贈与額は実際に贈与(基礎控除額の110万円も算入)した金額です。ただし、配偶者控除額に相当する金額、非課税の適用を受けた教育資金、非課の適用を受けた住宅取得資金は加算する必要はありません。
被相続人からの借入金に関しては無利子の場合利子相当額を、返済していない場合には借入金すべてを贈与とする場合もあります。また、相続時精算課税の適用を受けた贈与金額も加算します。
相続時精算課税とは65歳以上の親が20歳以上の推定相続人に贈与をする時に、贈与時に贈与税を払い、相続が発生した時に相続税から、以前払った贈与税を差し引く制度です。
相続時精算課税制度の適用を受けるためには、①受贈時日本に住所が有ること②日本国籍が有り受贈者又は贈与者が5年以内に日本に住所が有ること③受贈者が日本国籍を有しない場合には贈与者が日本に住所を持っていることという条件を満たさなければなりません。
相続時精算課税を選択した場合、その後の贈与すべてに適用され撤回はできません。贈与額と遺産額を加算したものが正味の遺産額でそこから基礎控除額を引いた額が相続税の課税対象になります。
これを図で表すと下の図のようになります。
出典:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4102.htm 2014,1,29
国外財産の相続税を回避するためには?
国外財産の贈与税は受贈者の住所によっては回避できることもあります。相続人、被相続人が普通に日本で暮らしている場合は国外で資産形成した財産も相続税の対象になります。国外財産に対して相続税を払わずに済む人は、相続発生時日本に住所が無いことが絶対条件になります。この場合、「日本国籍が有れば被相続人、相続人双方が過去5年以内に日本に住所が無いこと、「日本国籍が無ければ、被相続人が死亡時に日本に住所が無いこと」が条件になります。
受贈者
贈与者
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国内に住所あり
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国内に住所なし
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日本国籍あり
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日本国籍なし
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5年以内に国内に住所あり
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5年を超えて国内に住所なし
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国内に住所あり
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国内財産及び国外財産
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国内財産及び国外財産
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国内財産及び国外財産
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※ 国内財産及び国外財産
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国内に住所なし
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5年以内に国内に住所あり
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国内財産及び国外財産
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国内財産及び国外財産
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国内財産及び国外財産
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国内財産
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5年を超えて国内に住所なし
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国内財産及び国外財産
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国内財産及び国外財産
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国内財産
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国内財産
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出典:http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4432.htm 2014,1,29
普通、相続の時期は予測できないので、相続税の節税で海外移住を検討する場合は、一刻も早く行動を起こさなければなりません。また、贈与財産に関して相続時精査制度を利用することと、国外財産に関して贈与税、相続税の課税を受けないための居所住所に関する条件は相反する部分が多々あります。何を優先するかを慎重に判断しなければなりません。
世界に視野を広げて
日本の課税状況や金利状況は富裕層が資産を子や孫に伝えて長期間保全していくには不利な状況です。世界には相続税や贈与税が無い国がたくさんあります。
スイス、香港、中国、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、マレーシア、シンガポール、イタリア、タイ、モナコ、リヒテンシュタイン、ロシアなどです。
また、これらの国でオフショア制度がある国はスイス、リヒテンシュタイン、モナコ、香港、シンガポールなどです。移住先で悠々自適生活をするのか、何らかの事業をして所得を得るのかでも選択肢は変わってきます。
また、世界でも比較的治安がいいと言われている国は、アイスランド、北欧諸国、ニュージーランド、オーストリア、スイス、カナダ、ベルギー、アイルランド、ドイツ、オーストラリア、シンガポール、ブータンなどです。
この他にも、天災が多い国や医療制度が整っていない国は避けたいですよね。教育問題などを考えると、移住先から違う国へ留学するような場合もごく普通に起きうることです。日本国籍を離脱したからといって日本と縁が切れるわけでもありませんし帰国できないわけでもありません。タフな心で世界に視野を広げれば、日本国内で悶々としているよりは、資産の保全は確実なものになると思われます。
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