ブロックチェーンはパソコンやインターネットに匹敵する技術革新との声も

IT技術の進展により、紙で記録されてきた多くの情報が電子化された。しかしその間も、大事な情報の記録・保管方法については、変化していない。大事な情報とは、お金や権利、プライベートなどに関する情報だ。誤って記録されても、消えても、改ざんされても、システムが止まってもいけない。

これまで大事な情報の信頼性は、「管理者」が「特定の場所」に記録・保管するという構造で担保されてきた。例えば、預金の情報は「銀行(管理者)」が何重もの対策を施した「銀行のサーバー(特定の場所)」に記録・保管し、データの正確性や安全性、システムの安定稼動を保証している。

しかしブロックチェーンは、インターネット等を通じて「複数の場所」で情報を共有するなどの「仕組み」を構築することで、大事な情報を「管理者」がいなくても記録・保管することを可能にした。従来は「管理者」が担保してきた正確性や安全性を「仕組み」で代替したことがブロックチェーンのイノベーションである。

最大のメリットはコスト削減、新興国で先行的に導入される見込み

現在は「管理者」が巨大なデータサーバーに何重もの対策を施すことで、システムの安全性や安定稼動を保証している。一方、ブロックチェーンは、「複数の場所」で情報を保管しているため、1ヶ所が止まってもシステムは稼動し続ける。改ざんが極めて困難な「仕組み」のため、セキュリティ費用も安くすむ。また、ブロックチェーンでは、情報が共有されることで、複雑な事務プロセスを簡素化することができ、事務コストを削減できるメリットもある。現在は「特定の場所」でしか情報を保管していないため、「管理者」を経由するなど複雑なプロセスが発生し、その都度、情報の確認・照合が必要とされることも多い。システムコストより事務コストの方が削減効果が大きいとの見方もある。

一方、ブロックチェーンには課題も多い。ブロックチェーンは高速・大量処理が苦手で、データの修復が困難である。また、すでに大規模なシステムが構築されている分野では移行コストが大きく、ブロックチェーンを導入するのは容易ではないとの指摘もある。

そのため、インフラが未整備だったり、政府の汚職などで「管理者」が信頼できなかったりする新興国や経済規模の小さな国で、ブロックチェーンが先行的に導入されていく可能性が高い。ブロックチェーンでは、新興国で最初に導入され、それが先進国市場に逆流し席巻する「リバース・イノベーション」が十分想定される。

ブロックチェーンの応用分野は広い、「スマートコントラクト」に注目

ブロックチェーンはFintech(フィンテック)の中核技術とされ、金融業での注目が特に高い。しかし、応用が期待される分野は広く、権利証明やサプライチェーン管理、シェアリングサービスなど想定される用途も様々だ。

中でも注目したいのが「スマートコントラクト」である。ブロックチェーン上に契約を書き込み、条件が満たされれば、契約を自動執行する仕組みだ。従来のデリバリーを約束する契約では、契約の執行が契約の相手方に委ねられるため、相手方が信頼できるか、第三者保証がないと、契約は成立しづらい。「スマートコントラクト」では、契約が機械的に執行されるため、相手方への信頼や第三者の保証は不要となる。契約・執行プロセスが自動化されることで、様々な契約を有機的に結び付けることも可能となり、新たな市場が生まれるという期待も大きい。

ブロックチェーンは、中長期的には世界に変革をもたらすかもしれない

ブロックチェーンはすでにビットコインなどで実用化されており、将来的に社会を変革する可能性がある。しかし、まだ発展途上の技術であり、今すぐに本格的に普及するような段階ではない。パソコンやインターネットも、本格的な普及には時間がかかった。

世界経済フォーラムは、ブロックチェーンが社会に変革をもたらすのは2027年との調査結果を示している。言い換えれば、専門家の多くは、ブロックチェーンが私たちの生活の一部となるのは、10年後だと見ている。ブロックチェーンは、遠くない将来に世界を変える可能性があり、今後の動向が注目される。

佐久間誠(さくま まこと)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部

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