送った直後の「しまった!」をなくす!

ミス,失敗しない,メール術
(写真=The 21 online)

今やなくてはならない連絡ツールであるものの、手軽さゆえのうっかりミスや、対面でないことでのコミュニケーションミスが発生しやすいのが「メール」。小さなミスをきっかけに相手との関係が悪くなったり、場合によっては企業イメージを損なう大きな問題につながることも。そこで、ささいなメールミスをなくすためのコツを、日本ビジネスメール協会の平野友朗氏にうかがった。

やってしまいがちな「メール送信時」のミス5

①TOのミス

アドレス帳は危険!? 過去のメールを探して返信をする

アドレス帳やオートコンプリート機能(最初の文字を入力すると自動的に候補を列挙してくれる機能)は、実は送信先ミスの大きな原因の一つ。同じ名字や似たような名前の人が複数いて、"ついうっかり"の選択間違いが意外に多いのです。最も間違いが生じにくい確実な方法は、受信フォルダから相手の過去のメールを検索し、それに返信する方法。件名・文面を消して新規メールのように作成します。あるいは、過去のメールの署名に書いてあるメールアドレスをクリックして新規メールを立ち上げてもいいでしょう。これなら実際に受け取ったメールアドレスを使うので、送信先ミスはまず起こり得ません。

② C C のミス

1人に返信する際にも「全員へ返信」を習慣づける

CCで送られてきたメールは、"関係者全員で共有したい"という送り手側の意図があるので「全員へ返信」で返すのがルール。しかし、うっかり送信者のみにしか返信していないことがよくあります。この単純ミスをなくすには、日頃から、1人に返信するメールも「全員へ返信」ボタンで返信する習慣をつけること。ちなみに、CC欄に複数の人が入っている場合、3人以上ならば、送信者以外は「CC:関係各位」とまとめてしまってOK。名前や肩書き、順番などでミスを犯すリスクをゼロにできます。

③ BCC のミス

大きなミスのもと! BCCは使ってはならない

社外への一斉送信にBCC機能は使用しないことを強く勧めます。BCC に入力するつもりがCCに入力してしまう失敗は結構多く見られ、BCCとCCの間違えを100%防ぐことは不可能。社外メールであれば、情報漏えいという取り返しのつかないミスになってしまいます。一斉メールを送るなら「メール配信サービス」を利用するのがお勧めです。たとえば「エクメルン」は、1回500円で一斉送信メールを送れます。BCCで情報漏えいして関係各所にお詫びをする手間と信用リスクを考えたら、必要コストといえるでしょう。

④添付のミス

「送りました」ではなく「添付しました」と必ず記す

添付ファイルをつけるときは、本文に必ず「添付にてお送りします」「添付いたしました」と書き入れましょう。「書類をお送りします」では、メールなのか郵送なのかわからず、勘違いによるミスが生じがちです。また、もし添付をつけ忘れていたら、送り先の相手が気づいてくれるメリットも。厄介なのは、B社宛の請求書をA社に送ってしまうような「ファイル選択ミス」。これは、ファイル名を「請求書」などと簡略化しているのが大きな失敗要因の一つ。「20170701_B社様_請求書」などと、日付と中身がわかるファイル名をつけることを習慣化すると、間違える確率がグンと低くなります。

⑤宛名のミス

相手のメールからのコピペで対応

間違われた相手はすぐ気づきますが、送った当人はなかなか気づかない、重大かつ自覚しにくいミスを防ぐ方法はたった一つ。「文字入力」を極力避けることです。社名や名前は、相手のメールの文面や署名からコピー・アンド・ペースト(コピペ)をしましょう。初めてメールする相手であれば、名刺などを見て慎重に入力を。メールでの失敗で「てにをは」の誤字はさほど大きな問題ではありません。一方、「名前、社名、日付、金額」は絶対に間違えてはいけない情報です。この部分に関しては、送信前にかならず念入りに見直しすることを肝に銘じましょう。

「送信・返信時」にやりがちなミス3

①返信忘れ・返信遅れ

返信できないならいっそ「見ない」

返信忘れ・返信遅れの失敗は「返事を保留」してしまうのが一番の原因です。このミスをなくすには「読んだら即返信」を原則にすること。なぜなら、「あとで送ろう」と記憶したつもりでも、忘れてしまうことが意外と多いからです。その場で返信ができない内容のメールは「フラグをつける」「未読に戻す」などして、メールソフトを立ち上げたときパッと目につくように応急処置を。つまり、メールを読んだら、読みっぱなしはNG。仕事が忙しく即返信できない状況であれば、いっそのこと「メールを見ない」と決めてしまうのも返信忘れを防ぐ有効な手段です。

②用件の回答し忘れ

「とり急ぎ」返事をしてからフラグを

1つのメールに複数の用件が書かれている場合、回答に時間を要する用件が紛れていることがあります。返事を急ぐ場合であれば、まず回答できる用件だけ返信し、残りは遅れる旨を伝え、メールにフラグなどを立てておくと回答漏れを防ぐことができます。しかし本来は、1メールにつき用件は1つであるのがベスト。少なくともこちらが出すときは1メール1用件にするように心がけましょう。もし1メールに複数の用件を書く場合は、冒頭に一番伝えたい重要度の高い用件を書くなどの順番の工夫をすると、相手に伝わりやすい内容に整理できます。

③コピペミス

書き換えるべきところを「●」で記す

複数の相手に同じ内容のメールを送るとき、最初に書いたメール文をコピー・アンド・ペーストするのは避けましょう。名前や数字などを修正し忘れてしまうことがあるからです。定例会議の案内など、同じ内容のメールを複数、あるいは定期的に送ることが多い場合、テンプレートを作成しておくといいでしょう。その際、名前、日付、場所、時間、議題など、メールごとに書き換える部分は「●」など目立つ伏せ字にしておき、忘れないように。テンプレートはテキストエディタで編集して、用件ごとにファイル分けして関連フォルダ内に保存しておくと、仕事の時短にも一役買ってくれます。

メールを送った相手からこんな反応があったら、どうする!?

何度も質問がくる

原因は「情報が足りない」か「情報が多すぎる」かのどちらかです。たとえば、アポイント日時を決めるときに、候補の日にちだけ送るのではなく、時間や場所なども同時に提案すれば、やり取りの回数は格段に減ります。次に、相手に聞かれそうなことを先回りして書いておくとより良いでしょう。とはいえ、盛り込みすぎもNG。メールに情報が多くなりすぎるとポイントがわかりづらくなるので要注意。わかりやすいシンプルなメールを心がけてください。

なかなか返事が来ない

返信がこない原因は、メールサーバーの不具合で届いていない、メールを見落としている、返信の必要がないと思い込んでいる、用件が多すぎるなどさまざまな可能性が考えられます。原因となりそうなことを一つひとつ洗い出し、自分に落ち度がないか確認をしたうえで相手に催促してみましょう。なお、返信の期限を設定している場合は、期限を過ぎたら即催促してもOK。期限を設定していなければ、送信から丸2日ほどあけて催促メールを送るのが適切です。

相手が怒っている?

メールの文面から相手の怒りや苛立ちを感じたら、自分が送ったメールの内容や表現にミスがないか、相手のメールの内容を見落としていないかを確認しましょう。相手の表情や声色から意図を読みとれないメールは、誤解を生みやすいツール。相手の態度がおかしい理由がわからないままメールのやりとりをすると誤解や溝が深まっていく一方。メールでのコミュニケーションに不安を感じたら、電話や対面に切り替えて、直接会話をするのが一番の解決法です。

平野友朗(ひらのともあき)日本ビジネスメール協会代表理事
1974年生まれ。筑波大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2003年に日本で唯一のメルマガコンサルタントとして独立。ビジネスメール教育の第一人者として知られ、メールマナーに関するメディア掲載400回以上、著書24冊。メールスキル向上指導、組織のメールのルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などを手がけ、官公庁、企業などへのコンサルティングや講演、研修回数は年間100回を超える。近著に、『仕事が速い人はどんなメールを書いているのか』(文響社)。(取材・構成:麻生泰子)(『 The 21 online 』2017年6月号より)

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