銀行株が力強さを増してきた。欧米で金融緩和からの出口戦略が現実味を帯びるとともに、日本の長期金利に対する将来的な上昇期待が株価を押し上げつつある。一方、中には昨秋以降の「トランプ・ラリー」の局面でしこりを残したものもあり、銘柄選別にはファンダメンタルズ(基礎的条件)や投資尺度のほかに、需給的な要素を踏まえることが必要だ。

為替展望
(写真=PIXTA)

日本の10年債利回りは足元0.080%を付け、直近の底に当たる4月の0.010%から切り上げた。既に利上げを繰り返している米国に加え、欧州でもドラギECB(欧州中央銀行)総裁が早期の金融引き締めへの転換を示唆。こうした状況を受け上昇する欧米金利に、日本の金利も連動した形だ。

銀行にとって、金利上昇は事業環境の改善につながる。1割前後に上る6月のメガバンク株の上昇率(高値時点、前月末比、日経平均株価は3%)にも反映された。PBR(株価純資産倍率)などバリュエーションの面でも日本の銀行株は相対的に割安感が強く、こうした局面で見直し買いが向かっている。

日銀は短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に操作する市場調節を維持している。このため、現状では長期金利の上昇余地は限られる。その一方で、世界ではEU(欧州連合)や英国、米国のほかにも豪州が利上げに傾くなど、逆行しがたい大きな流れが形成されつつある。

総務省が6月30日に発表した5月の全国消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年同月比0.4%増と5カ月連続で上昇し、上昇幅もわずかながら前月(0.3%)から拡大している。日銀の掲げる2%の目標にはまだ遠いものの、「出口」へ向けた道筋とも言える。

ただ、銀行株がこのまま上げ一辺倒となるかという点には不透明感がある。例えばみずほフィナンシャルグループ <8411> は昨年12月に225.3円の高値(現値は205.9円)を付けており、当時の出来高を踏まえると現物の含み損を抱える投資家も少なくないだろう。三井住友トラスト・ホールディングス <8309> なども同様で、今後正念場を迎える可能性がある。

ここから参戦する場合の選別要素としては、PBRや配当利回りに加え、トランプ・ラリー時の高値に対する現値の位置を重視したい。メガバンクでは、りそなホールディングス <8308> が昨年12月高値を今年3月に上抜いている。その後調整を挟んだものの、足元では再び騰勢を強めており、3%台の配当利回りも魅力的だ。三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> も2月高値に迫っている。

あおぞら銀行 <8304> は配当利回り4.3%。足元で高値を更新するなど、需給面で有利な状態だ。地銀では投資尺度にある程度の割安感が残り、トランプ・ラリーの高値も奪回している東和銀行 <8558> や琉球銀行 <8399> が狙い目だ。(7月7日株式新聞掲載記事)

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