結果の概要:雇用増加数は予想を大幅に上回る20万人超に加速

7月7日、米国労働省(BLS)は6月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+22.2万人の増加(1)(前月改定値:+15.2万人)となり、17年4月以来となる20万人超の増加ペースに回復、市場予想の+17.8万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回った(後掲図表2参照)。

失業率は4.4%(前月:4.3%、市場予想:4.3%)とこちらは前月、市場予想を上回った(後掲図表6参照)。一方、労働参加率(2)は62.8%(前月:62.7%)と3ヵ月ぶりに増加に転じた(後掲図表5参照)。

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(1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
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2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
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結果の評価:失業率は上昇も、事業所調査、家計調査ともに堅調な労働市場を確認

6月の非農業部門雇用者数が、再び20万人超のペースに回復したほか、過去2ヵ月の数値も上方修正された結果、4-6月期の月間平均増加数は19.4万人増となり、1-3月期の16.6万人増から加速した。また、年初来でも18.0万人増と、16年平均の18.7万人増に迫るペースとなっており、完全雇用に近づいている中でも、依然として力強い雇用拡大が続いていることが確認された。

また、家計調査では、失業率が5ヵ月ぶりに上昇に転じたものの、労働力人口が顕著に増加し、労働参加率が改善する中での上昇であり、労働需給の悪化を示している訳ではない。

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一方、6月の時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比で+0.2%(前月改定値:+0.1%、市場予想:+0.3%)と、+0.2%から下方修正された前月は上回ったものの、市場予想は下回った。前年同月比も+2.5%(前月改定値:+2.4%、市場予想:+2.6%)と、こちらも+2.5%から下方修正された前月を上回ったものの、市場予想は下回っており、賃金はやや期待外れの結果となった(図表1)。

このようにみると、6月の結果は賃金の回復はもたついているものの、雇用の伸びには足元で再び加速がみられるほか、家計調査も労働需給の改善持続を示しており、労働市場が依然として堅調であることを確認できる結果と言えよう。

一方、原油価格が軟調となる中で物価上昇ペースは鈍化しているものの、労働市場の回復が確認されたことから、FRBの年内残り1回の政策金利引き上げや、年内のバランスシート縮小開始などの金融政策方針は維持されるとみられる。

事業所調査の詳細:広範な業種で雇用の伸びが加速

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事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門が前月比+16.2万人(前月:+14.6万人)と、前月から伸びが加速した(図表2)。

サービス部門の中では、人材派遣業が前月比+1.3万人(前月:+1.7万人)と前月から伸びが鈍化したこともあって、専門・ビジネスサービスが+3.5万人(前月:+5.6万人)に鈍化したものの、医療サービスが+3.7万人(前月:+2.1万人)となったほか、娯楽・宿泊サービスも+3.6万人(前月:+2.5万人)と、前月から伸びが加速した。さらに、小売業も+0.8万人(前月:▲0.7万人)と、前月から増加に転じた。

財生産部門は、前月比+2.5万人(前月:+1.3万人)と、こちらも前月から伸びが加速した。製造業が+0.1万人(前月:▲0.2万人)と小幅ながら増加に転じたほか、鉱業+0.8万人(前月:+0.6万人)、建設業+1.6万人(前月:+0.9万人)など広範な分野で前月から伸びが加速した。

政府部門は、前月比+3.5万人(前月:▲0.7万人)と前月から大幅な伸びとなった。内訳をみると、連邦政府が+0.4万人(前月:+0.8万人)と前月から伸びが鈍化した一方、州・地方政府が+3.1万人(前月:▲1.5万人)と前月から大幅なプラスに転じたことが大きい。

前月(5月)と前々月(4月)の雇用増(改定値)は、前月が+15.2万人(改定前:+13.8万人)と+1.4万人上方修正されたほか、前々月が+20.7万人(改定前:+17.4万人)とこちらも+3.3万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+4.7万人の上方修正となった(図表3)。

なお、BLSの公表に先立って7月6日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+15.8万人(前月改定値:+23.0万人、市場予想:+18.8万人)と、+25.3万人から下方修正された前月から伸びは鈍化、市場予想も下回った。6月のADPと雇用統計は不整合な動きとなったものの、3ヵ月平均でみた月間増加ペースは、5月まで両統計の乖離が7.5万人程度ADPが多かったのに対し、6月は1.5万人程度まで乖離が縮小した。

6月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が26.25ドル(前月:26.21ドル)となり、前月から+4セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.5時間(前月:34.4時間)とこちらも前月から+0.1時間増加した。その結果、週当たり賃金は905.63ドル(前月:901.62ドル)と前月から増加した(図表4)。

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家計調査の詳細:労働力人口が36万人増加、労働参加率も3ヵ月ぶりに改善

家計調査のうち、6月の労働力人口は前月対比で+36.1万人(前月:▲42.9万人)と、前月の大幅な減少から一転、大幅な増加となった。内訳を見ると、就業者数が+24.5万人(前月:▲23.3万人)と前月から大幅な増加に転じたほか、失業者数も+11.6万人(前月:▲19.5万人)と5ヵ月ぶりに増加した。一方、非労働力人口は▲17.0万人(前月:+60.8万人)と、4ヵ月ぶりに減少した。この結果、労働参加率は62.8%(前月:62.7%)と3ヵ月ぶりに漸く増加に転じた(図表5)。

失業率は5ヵ月ぶりに上昇したものの、労働力人口が大幅な増加に転じたほか、労働参加率も改善しており、失業率の悪化を心配する必要はないだろう(図表6)。むしろ、過去4ヵ月の低下局面では非労働力人口の増加を伴っており、労働市場からの退出者が増えることで表面的に失業率が改善した可能性には注意が必要だ。

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次に、6月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、166.4万人(前月:166.3万人)となり、前月対比では+0.1万人(前月:+3.7万人)と2ヵ月連続で増加した。また、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは24.3%(前月:24.0%)と、こちらも2ヵ月連続で増加した。一方、平均失業期間は24.7週(前月:24.7週)とこちらは前週から横這いとなった(図表7)。

最後に、周辺労働力人口(158.2万人)(3)や、経済的理由によるパートタイマー(532.6万人)も考慮した広義の失業率(U-6)(4)をみると、6月は8.6%(前月:8.4%)と前月から+0.2%ポイント上昇した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は4.2%ポイント(前月:4.1%ポイント)と、こちらは前月から+0.1%ポイント拡大した。

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(3)周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
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4)U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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