この時期になると、投資家の方の頭を悩ませるのが『確定申告』。

やらなくていいのならやりたくない…けれども、そういうわけにはいきません。少なくとも、どのくらい還付の可能性があるのかはきちんと計算しておく必要がありますよね。 そんな年末年始の頭痛の種、確定申告について、本日はお話をしたいと思います。

確定申告はなぜ必要か?

まず確定申告とは、その年の1月から12月までに得た収入と税金の金額を計算し、所得税などの納税を行うことを指していいます。

所得がまったく人は確定申告の必要はありません。しかし、以下の所得のどれか1つでも当てはまれば、確定申告をしなくてはいけない可能性が高くなります。

  • 給与所得…給与やボーナス、役員手当など
  • 雑所得…年金収入や原稿料・講演料
  • 配当所得…利益の配当金など
  • 一時所得…満期保険金や、賞金・懸賞当選金など
  • 事業所得…商工業・サービス業・農業などから生じる所得
  • 不動産所得…土地・建物の貸付などによる所得
  • 利子所得…預金などによる利子
  • 譲渡所得…不動産・株式の譲渡・ゴルフ会員権などの所得
  • 退職所得…退職金など
  • 山林所得…山林を伐採・売却した所得など

投資家のみなさんが関係してくるのは、『配当所得』と『譲渡所得』でしょう。また、投資を副業で行い、本業でサラリーマンをしている人は『給与所得』が関係してきますね。 さて、「確定申告をしなくてはいけない可能性が高くなる」と曖昧な表現をしてしまった、その理由をお伝えします。 結論から言えば、配当所得の申告は、必ずしもしなくてはいけない、というわけではありません。

配当所得の項目に該当し、給与所得が低い人の場合は、税金が戻ってくるケースがあります。どの程度還付されるかについては、計算して確認したほうがいいでしょう。 現在、配当所得にかかる税金は10%です。課税総所得が330万円以下の人は、還付される可能性が非常に高いと言えます。 これを、『配当控除』と言うのです。

特定口座と一般口座の違い

ほとんどの投資家は証券会社に口座を開設し、そこへ利益が入ってくるようなシステムを取っていると思われます。 その口座には2種類あり、それが『特定口座』と『一般口座』です。 特定口座とは、端的に言うとあなたに代わって証券会社が税金を収めてくれるシステムの口座のことです。 ただし、納税をしてくれるかどうかは、その特定口座が源泉徴収を行っているか行っていないかで変わってきます。

源泉徴収を行っている場合は、税金の処理を代行して行ってくれるので問題ないでしょう。また、損失の繰越控除を受ける場合を除き、確定申告の必要はありません。(損失の繰越控除については、後ほど説明しましょう。) 特定口座で収めている税金は、利益がプラスになる度に証券会社が天引きしています。 自動で引き落とされていくので煩わしい計算の必要がなく、かなり便利なシステムですが、特定口座で源泉徴収をすると、税金を多く支払ってしまうパターンがあるので注意が必要です。

特定口座を開設して源泉徴収を行わない場合

株式投資の譲渡利益が20万円以下の場合は自分で確定申告を行わなければいけません。ただし、確定申告に必要な書類などは証券会社が作成してくれるので、比較的ラクに作成できると言っていいでしょう。

また、源泉徴収の有無にかかわらず、特定口座を開設する場合には口座開設時に届け出を出す必要があります。 さて、 『一般口座』一番のメリットは、譲渡損失の繰越控除などの優遇税制が可能となる点です。 その一方で、取引ごとに送付される取引報告書を元に、自分で年間取引報告書を作成する手間があります。取引回数が多ければ、この作業がかなり手間となってしまうので覚悟をしておいてくださいね。

そのほか、特定口座も一般口座も開設にかかる費用は一切必要ありません。しかし、事前に申し込みをしないと特定口座を解説できないケースもあるので、取引のある証券会社へ相談をしておくことをオススメします。

確定申告の前準備

確定申告をする前に、まず揃えておかなければいけない書類がいくつかあります。 それは、取引をしている証券会社すべての売買履歴。これを、取り寄せなければいけません。オンラインで投資管理をしている場合は、証券会社のマイページなどからこれらの履歴をプリントアウトできることもありますが、郵送でしか手に入れられないこともあります。

常にノートやパソコンで取引報告書を作成していれば改めて売買履歴を取り寄せる必要もありませんが、もし日頃の管理を無い場合は、改めて取引報告書を集めておきましょう。

確定申告する前に!譲渡損失の繰越とは

まず覚えておきたいのは、確定申告は税金を納めるためだけにあるものではないということ。株の譲渡所得を申告して、扶養控除や配偶者控除、住宅ローン控除・国民健康保険・住民税にも深く関わってきます。 利益の分岐点は、20万・35万・38万と分かれ ていますが、まず確定申告を行う前に、申告した場合どの分岐点に影響が出るかをしっかりと把握しておく必要があるでしょう。 たった1万円の節税を行ったばかりに、5万10万の増税になるというパターンもあるのですから。

さて、先に挙げた譲渡所得の繰越とは、その年の損失を将来的に繰り越して還付を受ける制度のことです。しかし、この譲渡損失の繰越控除を受けるためには、最低でも2回の確定申告が必要となってきます。 この譲渡損失の繰越控除を受けられる対象者は、上記で上げた特定口座で源泉徴収をすでに済ませている人に限ります。繰越控除の金額が大きければ、確定申告をして失った税金を取り戻す価値はあるでしょうが、自分が行う確定申告の手間・時間を比べて、行うかどうかを判断したほうがいいでしょう。

配当控除で税金を取り戻そう!

課税所得が330万円の以下の場合、配当控除によって所得税・住民税を取り戻すことができます。そのために必要なのは、配当金の支払通知書と確定申告書Bの2種類のみ。 支払通知書を元に計算された金額を、それぞれの項目に記入して申告をすれば、あとは還付を待つだけです。

通常、利益が20万円以下場合は確定申告を行う必要はありません。 けれども、それ以上となった場合には、確定申告を行うのは義務になってくるので気をつけてくださいね。

photo credit: Alan Cleaver via photopin cc