カード社会の韓国では、あまり現金を持ち歩かない人が多く、なかには全く持ち歩かない人もいる。デビットカードに相当するチェックカードやクレジットカードは、1000ウォン(約98円)以上の買い物で利用できる。カード払いができないケースは、ごく少額の買い物や一部の露店など限られている。

韓国全域に広がる首都圏の交通カード

韓国経済,電子マネー
(写真=Chokchai Suksatavonraphan/Shutterstock.com)

Tマネー(ティーマネー)カードは、ソウル市が出資した韓国スマートカードが発行する交通カードである。2004年7月から導入され、当初は首都圏電鉄と路線バスのみの利用だったが、コンビニエンスストアなどでも電子マネーとして利用できるようになった。なお、首都圏電鉄とはソウル市等が運行する地下鉄と韓国鉄道公社が首都圏で運営する近距離路線の総称である。

日本で近いのは、域内の電車やバス、加盟店等で使用できる首都圏のSuicaやPASMO、関西圏のICOCAなどだろう。

Tマネーカードは、首都圏電鉄とバスに加えて、タクシーでも使え、多くのコンビニエンスストア等での代金決済にも利用できる。地下鉄駅のコインロッカーやソウル市が2015年から運営を開始したソウル自転車もTマネーによる支払いが基本だ。

TマネーはSuicaと同様、駅やコンビニエンスストアなどでチャージするプリペイド方式を採用しており、地下鉄やバスは100ウォン引、タクシーは100ウォン増となる。首都圏電鉄とバス、あるいはバス相互間の乗換え時には、乗換え割引が適用される。

首都圏電鉄を除く韓国鉄道公社の路線は、窓口での決済には利用できるが、Tマネーカードで乗車することはできない。

2005年以降、交通カードとしてTマネーを採用する自治体が増え、韓国内の多くの地域で運行される地下鉄や路線バスで利用できるようになった。全国で使えるカードへの更新が行われ、2014年12月30日からは高速道路でも使用可能となっている。

OKキャッシュバックカードはTポイントカードみたいなもの?

OKキャッシュバックカードはSKテレコムが運営するポイントカードで、加入数は延べ3000万人を超えている。携帯電話などポイント積立加盟店で貯めたポイントを割引加盟店の支払いに充当する共通ポイントカードで、Tポイントカードに近い。

Tポイントカードとの違いは、ポイントの使い方だろう。Tポイントは貯めたポイントを商品交換等に利用できるが、キャッシュバックカードは加盟店で提示すると1ポイント1ウォンで商品代金の10〜20%に充当できる。

OKキャッシュバックカードはSKテレコムの携帯電話加入者が対象で、KTも携帯電話加入者を対象に同様のサービスを提供している。

2016年にはハナカードが、クレジットカードで貯めたポイントをカード利用代金の決済に利用できるサービスを開始し、追随するカード会社も現れている。

現金を使わないソウル市民

ソウルの会社員は、Tマネーカードを使って電車やバスで通勤する。昼食代はチェックカードやクレジットカードで支払い、食後はキャッシュバックカードを利用できるカフェに行く。アフターファイブの飲食の支払いもちろんカードだ。遅くなったらタクシーを利用し、Tマネーで支払う。

利用記録が残るカード払いは、利便性に加えて小売店等の脱税を防止する目的もあり、個人がカードで払った消費代金はカード所得控除の対象となっている。

日常生活で現金を使う機会はなく、現金が必要なのは、現金で値段交渉をするときとプリペード式のカードにチャージするときくらいだ。(佐々木和義、韓国在住CFP)