ドル円予想レンジ112.50-115.20

「2%の“物価安定の目標”の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、“長短金利操作付き量的・質的金融緩和”を継続する」-。これは7/10の日銀全国支店長会議での黒田総裁発言だ。異次元緩和の継続宣言である。

FRB人事で見えたイエレン証言の矜持(プライド)

7/12-13のイエレンFRB議長議会証言で注視したのは2点。ひとつはFRBの資産規模(約4兆4千億ドル/約500兆円)の縮小開始時期について、「経済が見通しどおりであれば年内に始める。私の考えでは、比較的、早く始めるだろう」と述べたこと。

もうひとつはトランプ政権が掲げる3%の経済成長に対し、「達成は極めて難しいと思う」と、異議を唱えたことだ。前後するが7/10にトランプ米大統領は、FRB副議長(金融規制担当)に、元財務次官のクオールズ氏を指名する人事を発表。金融規制緩和の姿勢を一段と鮮明にする配置だ。

また、一部報ではイエレン議長の後任候補として、国家経済会議委員長のコーン氏が浮上。トランプ大統領の意向を反映させる人事である。これらを踏まえると、イエレン議長は拙速とは言い難いが、矜持(プライド)の観点で任期中に資産規模縮小・利上げの姿勢を一層強めてくるだろうと読めるのである。

推しメン強化で黒田日銀総裁は微笑みか

7/7、日銀は3回目となる「指値オペ」を実施。指値オペとはその名の通り、日銀指定の利回りで国債を買い上げ、長期金利をコントロールする政策である。筆者はこれを実質、債券市場での“介入”と見ている。円金利上昇を抑制することで日米金利差を拡大させ、金利面で円買いインセンティブを後退させる目論みだ。

加えて筆者は7/20、日銀金融政策会合後の記者会見で黒田総裁の微笑を想像している。それは毎会合時、慎重意見を唱えている審議委員2氏が今回を最後に「リフレ派」に交代する人事があるからだ。これを以て、次回9/20の政策会合では安倍政権下で選任された“推しメン”一色となる。つまり、アベノミクス支持派が日銀会合を占め、黒田総裁の“センター位置”がより明確になるのだ。都議選敗退で「経済最優先」の原点回帰を安倍政権が強めるなら、日銀出口論は封殺された格好となる。

7月第3週のドル円上下焦点

上値焦点は7/12高値圏113.98、7/11高値114.51、3/15高値114.90、115円節目、3/14高値115.205。3/10高値115.52、1/19高値115.635が期待値。下値焦点は7/13-5-4安値圏112.85-82-73、月足雲上限112.675。割れると7/3急騰起点の112.50圏、112.20圏、週足雲上限112.05が意識されると推考。

為替見通し7-14

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト