本土株式市場に異変が起きている。11日の主要株価指数の騰落率を見ると、大きく明暗を分ける形となっている。上海市場に上場する銘柄の内、時価総額が大きく、流動性の高い上位50銘柄で構成される上海50指数は0.8%上昇、2015年8月14日以来の高値(終値ベース、以下同様)を更新した。

また、上海、深セン市場に上場する銘柄の内、時価総額が大きく、流動性の高い上位300銘柄で構成される滬深300指数は0.47%上昇、2015年12月31日以来の高値を更新した。

本土株式市場を代表する指数で、上海市場に上場する全銘柄で構成される上海総合指数は0.3%下落、終値は3203.04ポイントであった。上昇相場、下落相場を判断する一つの指標とされる200日移動平均線は3158ポイントで、下方にある。

年初来安値は5月11日の場中で記録した3016.53ポイントであるが、11日の終値はそこから6.2%高い位置にある。また、年初来高値は4月7日の場中で記録した3295.19ポイントであるが、そこまで後2.9%の水準にある。

一方、高い成長性が期待される新興企業によって構成される創業板指数は1.1%下落、1783.91ポイントとなった。200日移動平均線は1964ポイントで、遥か上方にある。6月2日には2015年6月を大天井とする下げ相場における最安値となる1745.93ポイントを付けているが、あと2.1%下げれば最安値を更新してしまう。

ポイントを絞って簡潔に整理すると、大型株が買われ、小型株が売られる相場展開であり、それが極端に進んでいる。大型株が買われ、小型株が売られる理由について、いくつか考えられる。

株価バリュエーション訂正、MSCI新興市場指数採用銘柄入りが大型株の買い材料

中国市場
(写真=PIXTA)

第一に、株価バリュエーションに大きな格差があること。

11日の市場平均PER、市場平均PBRについて順に示すと、上海50指数は11.0倍、1.22倍、滬深300指数は13.6倍、1.51倍、上海総合指数は18.2倍、1.74倍、創業板指数は51.8倍、4.8倍となっている。単純にデータだけを見ると、割安な大型株が買われ、割高の小型株が売られている、すなわち、株価バリュエーションの水準訂正が起きているといった見方ができる。

ただし、本土市場は国内投資家が主体の市場であり、海外市場と比べ株価バリュエーションは特異である。例えば、上海総合指数の長期チャートを見る限り、経済成長率、企業業績と株価の間に確かな関係性が認められず、市場平均PERは8倍弱から60倍超の間を無規則に動いている。

市場平均PERに何か適正水準のようなものが存在して、株価はそれを中心に上下に動くといったような発想をする投資家は少ない。また、なぜ、これほどまでバリュエーションに格差が出てしまったのかの説明もできない。こうした格差が原因で株価の水準訂正が起きていると言い切ることはできないのである。

第二に、A株がMSCI新興市場指数採用銘柄入りしたこと。

MSCIは6月20日、2018年6月からA株を新興市場指数構成銘柄に算入すると宣言した。まずは、大型株222銘柄が選ばれる見通しであり、その後、段階的に組み入れ株数は拡大し、最終的には400銘柄程度まで増える見通しである。来年以降、ETFや新興国ファンドによる買い需要が発生するだろうが、それを見越し、買いに入る外国人投資家、国内投資家がいるだろう。その影響が出るのは、大型株だけである。

ただし、外国人が直接A株を買うことのできるシステムである滬港通、深港通による資金流入額を見ると、決定前後で、大きな変化はない。上海総合指数では制度上、1日の買入限度額(ネット)は130億元であるが、6月20日以降で、比較的流入額(ネット)の多かったのは6月27日、29日だが、それでもそれぞれ20億元、22億元程度である。深センについても、上海よりも少し多い程度である。QFIIなどを通じた売買もあるので、断定はしにくいが、決定的な影響があったとは思えない。

銀行検査の厳格化、金融レバレッジ縮小政策などが小型株下落の要因