平成29年7月の九州北部を襲った集中豪雨の被害は甚大なものだった。「記録的短時間雨量情報」という聞きなれない発表があり、観測史上の記録を上回る大雨になった。火災保険には加入しているが、こうした水災から果たして我が家が守れるのか、不安に感じた人も多いだろう。
今回は、火災保険ではこのような水災は補償の範囲なのかどうかも含めて整理していく。
「火災保険」の対象に「水災」は含まれるのか
保険加入時には、万が一の場合と思い入ったものの、異常な雨の降り方では、いつどこで床上浸水や土砂崩れの被害が起こるのか分からない。実は、「水災」は火災保険の補償に含まれる。
火災保険は、大きく分けて火災・落雷・破裂・爆発の「火災リスク」をはじめ、「風災リクス」、「水災リスク」、給排水の「水漏れ・盗難」リスク、「破損」リスクなどに対応している。
保険会社の中には、一定の内容をセットにしたものや、オーダーメイドで選べる契約のところがある。オーダメイドの場合、「水災」を含まない契約があるため、注意が必要だ。
「水災」の補償は地震のリスクには対応していない
注意しておきたいことは、火災保険では地震のリスクには対応できないことだ。地震・噴火・津波を原因とする損害に備えるためには、地震保険に加入する必要がある。しかも、地震保険は単体で加入できないため、火災保険とセットで加入しなければならない。
たとえば、地震による津波でマイホームに被害が生じても、保険金を受け取ることができない。
また、どんな水災でも補償されるわけではない。保険の対象である建物が、床上浸水または地盤面より45センチを超える浸水の場合、または保険対象に再取得価格の30パーセント以上の損害が生じている場合に保険金が支払われる。床には、土間やたたきの部分は除かれる。もしも、実際に被害を受けた場合には、外観や家の傾き、浸水の深さ、倒壊の割合など一定の基準をもとに保険会社の鑑定人による損害額の評価が行われる。
火災保険の対象は建物と家財だ。家財を対象とする火災保険に加入していても、併用住宅ではない場合には、設備や什器、商品・製品は補償されない。さらに自動車は保険の対象外なので注意したい。
防災情報の入手方法と水災リスクを知る
一体、水災はどのような場所で起きるのだろうか? 一般的には、土地の低いところや地下や半地下になっているところだ。また、堤防から水があふれたり決壊したりする場合に、家屋の浸水や流出をもたらすところや、山間部の川の流れが速いところと言われている。
しかし、具体的に自分の今いる場所がどうなのかを知る方法が、国土交通省のハザードマップポータルサイトだ。各自治体が出している「わがまちハザードマップ」と「重ねるハザードマップ」を見てみよう。「重ねるハザードマップ」では、道路の冠水・土砂崩れ・洪水浸水などの想定箇所と写真を重ねることができる。これを利用することによって、災害の危険度がわかるようになっている。さらに、国土交通省の「川の防災情報」のページを参考にすると、現時点の川の水位がどうなっているのかを知ることができ、緊急時には大変役立つ。
今後も、地球温暖化に伴う気候変動で今までに経験したことがない災害が起こる可能性がある。加入している火災保険がどんな補償範囲になっているか、保険会社のホームページで重要事項説明書を見たり、証券を確認してみたり、再点検をしてはいかがだろうか。被害に遭わなかったから良かったではなく、自分の身に起こったらどうするのか考える機会にしてほしい。
池田 幸代
お金と老後のお困りごとコンシェルジュ
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業を営む傍らで夫の両親の介護に従事。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに、2016年にFP業務で株式会社ブリエを設立し、福岡を中心に活動中。
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