事業における後継者問題は、今や地場産業(特定の業種の地元資本からなる中小企業群が集中的に立地している産業のこと)や、伝統産業に限った話ではない。我が国の経済を支えている中小企業では、経営者の高齢化に伴って後継者問題が企業の存続を脅かす重大な課題となっている。

いざ自分の事業を後継者へ引き継ごうとしたときに、適切な後継者がいない、という事態に陥らぬよう、経営者はどのように後継者を選び育てるべきなのか。そのポイントを解説する。

後継者のこと、考えていますか?

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(写真=ANDRANIK HAKOBYAN/Shutterstock.com)

経済産業省中小企業庁による「2016年版中小企業白書概要」によると、日本では企業全体の99.7%が中小企業である。

中小企業の経営者のほとんどは次世代への事業承継を望んでいるのだが、引退が現実味を増すまで後継者の育成を怠るケースも少なくなく、いざ事業の引継ぎを行おうとして初めて、後継者不在の問題に直面するパターンも多い。

具体的には、以下のような問題があげられる。

・ 従業員の高齢化が進んで事業の引継ぎが可能な人材がいない
・ 若い世代の離職率が高く経験ある従業員が育たない
・ 後継者として期待していた子供が引継ぎを拒否する

労働政策研究・研修機構による、2013年の「構造変化の中での企業経営と人材のあり方に関する調査」では、企業が競争力をさらに高めるために今後強化すべき事項として「人材の能力・資質を高める育成体系」との回答が52.9%と最も高く、企業経営における人材の育成が重要課題となっていることが読み取れる。

この問題を解決するには、早期からの人材育成、特に後継者候補の選抜と計画的な育成が重要だ。

後継者を選ぶ際のポイント

後継者を選ぶ際に重視すべきポイントは、時代や経営者の在任期間によって異なる。かつて中小企業では経営者が後継者を選ぶ際に「親族であること」を重視してきた。しかし2016年4月に中小企業庁が発表した「事業承継に関する現状と課題」によれば、間近10年において親族内の事業承継は急減。従業員もしくは社外の第三者へと承継する形が6割超にまで達している。一方で在任期間が35年以上40年未満と長い経営者では依然9割以上が親族を後継者に選んでおり、在任期間が短い経営者ほど親族外承継を選ぶというデータもある。

後継者の選び方を考えた場合、親族は自社の事業に精通しており信頼できるというメリットがある。しかし、必ずしも身内に後継者としての資質と意欲を持った人材がいるとは限らない。

また、親族や従業員にかかわらず、後継者としての資質および専門知識を有する社外の第三者を登用するという選択肢もある。

企業の規模や事業内容によって、求められる後継者の資質にはいくらかの違いがあるものの、「事業承継を成功させるために最適な人材は誰か」ということを念頭に、後継者を選ぶことが重要なのである。

優秀な後継者の育て方と注意点

後継者選びと並んで重要なポイントとなるのが、後継者の養成だ。優秀な後継者はどのようにして養成するのか。

効果的な方法の一つは、後継者候補の早期選抜である。後継者が事業を実際に引き継ぐまでの間に、身に着けておくべき知識は多岐にわたる。財務・会計の知識は事業経営のうえでは必要不可欠であるし、自社の事業への理解を深め、業界へも精通しておく必要がある。

そのため、できるだけ早い段階で経営者が後継者養成に着手することにより、いざ事業承継する際に慌てることなく、スムーズにいきやすいというメリットがあるのだ。

しかし、後継者候補となるほどの人材であれば、すでに企業内において重要なポジションについているケースも多い。業務のマネジメントや部下の指導・育成などで多忙を極め、後継者としての養成に充てる時間が足りないなどの問題も指摘されている。

そのため後継者がオーバーワークにならないよう、通常業務と調整しながら養成を進めていくことが重要だ。

今からできる後継者への事業承継

事業承継のタイミングは、必ずしも予測できるわけではない。経営者の健康状態悪化や企業の経営不振などを理由に、経営者の本意でなくても急きょ事業承継が必要となる場面もあり得る。

そのときになって後継者がおらずに事業継続が困難になる、といった事態にならないためにも、今から将来を見据えて後継者選びを進めていくことが大切なのである。(提供: 百計オンライン

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