自分がいつから年金制度に加入したかわかるだろうか? 社会人になってから? 親が払ってくれていたのかも? 定かでない人も多いだろう。
国民年金の保険料は、20歳から60歳までが納付義務期間
以前は、20歳以上の学生は国民年金に任意加入だったが、平成3(1991)年4月から強制加入となった。任意加入していない20歳以上の学生が障害になったときには、障害基礎年金が受けられなくなる。そういうことを防ぐ目的で改正された。
現在は、収入の有無に関わらず「20歳以上60歳未満の日本国内に住んでいる人」は、全員国民年金に加入することになっている。国民年金には高齢になったときに受け取れる老齢基礎年金だけでなく、病気やケガで障害が残ったときに受けられる障害基礎年金や、働き手が亡くなったときに家族を支える遺族基礎年金の制度がある。
20歳になったら、国民年金の加入手続きをしなくてはならない。手続きの必要がないのは、会社などで働いていて、すでに厚生年金保険に加入している人か、厚生年金保険に加入している配偶者に扶養されている人(配偶者の会社で手続きをする必要がある)。それ以外の人は手続きをして、国民年金保険料を納めることになる。
しかし、学生には、月に1万6490円(平成29年度)の国民年金保険料の負担は重いだろう。そこで活用したいのが、「学生納付特例制度」だ。
学生の納付特例を受けず、未納期間になると……
学生で保険料を納めることが厳しい場合は、「学生納付特例制度」が利用できる。この制度は、所得の少ない学生が、国民年金保険料の納付を先送りできる制度。
学生納付特例制度の手続きをしておくと、万が一病気やケガで障害が残ったときに障害基礎年金を受けることができる、将来、老齢基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間に算入される、などのメリットがある。保険料が払えなくてそのまま放置すると、「未納」になってしまう。「未納」の場合は、万が一の場合にも障害基礎年金を受けられないし、受給資格期間にカウントしてもらえない。保険料が納められない場合は、学生納付特例の申請をしたほうがいい。
ただし、この特例を受けている期間は、将来の年金額は増えない。特例期間が過ぎた後、10年以内ならさかのぼって納付することができる。未納だと、2年前までしかさかのぼって納められない。社会人になって少しでも特例適用期間の保険料が納められれば、将来受け取る年金額を増やすことができるのだ。
この制度を利用できるのは、大学、大学院、短大、高等学校、高等専門学校、専修学校、各種学校(学校教育法で規定されている修業年限が1年以上の学校)などに在学する学生で、本人の前年所得が一定額以下の人。年間所得の目安は、118万円+(扶養親族等の数×38万円)とされている。扶養親族がいない場合は、年間所得118万円以下。収入でなく、所得(収入から控除や必要経費を引いたもの)である点に注意。該当するかどうかわからない場合は、市区町村役所の申請窓口や年金事務所に問い合わせよう。
学生納付特例制度は、申請者本人の所得の基準のみが条件となり、家族の所得については問われない。
申請時点の2年1カ月分までさかのぼって申請できる
手続きをするには、まず、市区町村役所の国民年金窓口か年金事務所、日本年金機構のホームページで申請書を入手。申請書に記入して、住民票を登録している市区町村役所の国民年金窓口、年金事務所、在学中の学校が代行事務を行う許認可を得ている場合は学校へ提出する。郵送も可。申請の際には、学生証や在学証明書など、学生であることを証明するものが必要になる。
今年度の平成29年4月分~平成30年3月分までの期間にかかる申請ができるのは、平成29年4月~平成31年5月末まで。申請時点の2年1カ月前の月分までさかのぼって申請ができる。申請が遅れると、障害基礎年金が受け取れないなどの事態になるので、早めに申請しておくのがいいだろう。
申請後、日本年金機構から「承認通知書」が届く。承認期間は4月~翌年3月の1年間。次の年の分は、再度申請が必要となる。「却下通知書」が届いた場合は、特例利用ができなかったということなので、保険料を納付する必要がある。
20歳を過ぎて学生でなく、保険料を納めるのが厳しい場合は、全額免除、一部免除などの納付猶予制度が利用できる。
老齢基礎年金の納付期間が25年→10年へ 大事なことは?
これまでは、老齢基礎年金を受け取るためには、原則として保険料の納付期間等が25年以上必要だった。しかし、平成29年8月からは10年以上の受給資格期間があれば受け取れるようになる。
保険料を納めていないことは同じでも、学生納付特例を申請していれば、その期間は受給資格期間にカウントされる。老齢基礎年金を受け取れるかどうかの条件となる受給資格期間は、長いにこしたことはない。
わが家の長女(3人兄弟の真ん中)も今年20歳になる。上の子の分も含めて2人分の大学の学費の負担が厳しいので、学生納付特例の手続きをしようと考えている。
▶元お笑い芸人FPの「笑って役だつマネークリニック」は こちら
生島典子(いくしま・のりこ)フリーライター
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。主な執筆テーマは、マネー、子育て、住まい、働き方など。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。子どもを持つ保護者として、学童クラブの父母会活動、PTA活動に参加。「居場所づくり」がこれからのテーマ。