豪ドルが買いを集めている。7月18日には対円で89.3円と15年12月以来1年7ヶ月ぶりの高値をつけた。主要国通貨ではユーロやポンドを上回る上昇率だ。豪ドルといえば資源国通貨の代表でもある。世界景気の拡大と資源価格の上昇が人気を牽引しているが、急騰には他にも様々な背景があるようだ。豪ドルの現状と今後の見通しに迫ろう。

豪ドル 対円で年間12.3%上昇

豪ドル見通し,通貨
(写真=PIXTA)

豪ドルは7月19日に対ドルで0.79ドルと15年5月以来2年2ヶ月ぶりの高値を付けた。対円では18日につけた89.31円が1年7ヶ月ぶりの高値だ。

17年6月末時点の主要通貨の対円での年間騰落率を見ると、豪ドルは12.3%の上昇率となっている。米ドルは8.9%、ユーロは12.0%、英ポンドは6.6%の上昇だ。豪ドルの上昇率はユーロを上回る。ユーロは、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁のテーパリング(量的緩和の終焉)に対するタカ派発言で6月以降急騰しているが、豪ドルの上昇はユーロを上回る。

主要国通貨の中ではトップレベルの上昇で、豪ドルを上回るパフォーマンスは、ロシアルーブルの18.4%、南アランドの22.7%など資源国通貨しか見当たらない。

豪ドル高はリスクオンで加速

豪ドルが7月になって急騰したのにはいくつかの複合的な理由があった。基本的に資源国通貨は世界景気に敏感な通貨と言われる。

(1)資源価格の回復基調
現在、世界の主要地域の製造業購買担当者指数(PMI)は上向きで世界景気は完全な拡大局面にある。鉄鉱石や石炭といったオーストラリア経済に影響の大きい資源の価格も回復基調だ。今年前半から豪ドルは買われやすい地合にあった。

(2)米国の利上げペーススローダウン観測
急騰のきっかけとなったのは、7月12日に米連邦準備制度(FRB)のイエレン議長が年内の利上げに対してハト派的とも思える議会証言をしたことだ。米利上げペースがスローダウンするとの観測が拡がりドルが売られた。米長期債利回りは低下し、低金利の継続期待から米国株は急騰し、世界の金融市場はリスクオンとなった。 リスクオンは、高金利通貨の買い要因となる。

(3)資源国カナダの利上げによる連想買い
同日にカナダ銀行(中央銀行)が7年ぶりに利上げしたことでカナダドルが急騰した。同じ資源国通貨として豪ドルにも連想買いが入った。

(4)豪州準備銀行(RBA)の景況感に曇りなし
18日には豪州準備銀行(RBA)が7月4日開催の金融政策理事会の議事録を発表した。内外の景況感に曇りはないとの認識で、RBAの利下げ懸念は完全に払拭され、豪ドル高を牽制する議論もなかったことが確認されたため、これも豪ドルの一段の買い支援材料となった。

豪ドル高と同時に円安が進行したことから、低金利が継続している円で資金を調達し、高金利通貨である豪ドルで運用するキャリートレードの残高を機関投資家が積み始めた可能性が高いとの指摘も多かった。1ヶ月で豪ドルの対円での上昇率は5%を超えた。

オーストラリアの17年のGDPは3.1%増と加速する見通し

世界通貨基金(IMF)の17年の世界経済見通し(17年4月時点)では、世界景気は16年の3.1%増から17年には3.5%増に拡大する。先進国が1.7%から2.0%、新興国が4.1%から4.5%に加速する。その中でオーストラリアも2.5%から3.1%への拡大が見込まれている。

中央銀行のこれまで利下げの効果もあって労働市場が回復しており、消費、住宅といった非資源セクターが堅調に推移している。資源セクターも市況の回復で調整していた設備投資が出はじめた。

オーストラリアの資源で原油やガスのシェアは低い。中心は鉄鉱石と銅だ。輸出品目では、鉱物・燃料系が約6割を占め、鉄鉱石と石炭が約4割を占める。原油価格は足下では弱いが、中国の景気後退懸念で16年初には30ドル割れまで売られ資源関係の設備投資は一気に冷え込んだ。その局面から比較すると原油は完全な回復基調にある。鉄鉱石や銅の価格も原油と歩調を合わせるように回復している。

日豪の政策金利の動向から、豪ドル高が続きそう

リーマンショック前の08年にオーストラリアの長期金利は6.5%だった、豪ドルは高金利通貨として人気があり、日本の好配当の分配型の投資信託にもずいぶん組み込まれた。

その後、リーマンショック後の世界景気の後退で、オーストラリアのRBAが度重なる利下げによる景気刺激をおこなったため、長期金利は2%程度まで下がっている。それでも先進国の中ではまだまだ高金利通貨である。

オーストラリアの消費者物価の上昇率は、17年後半にはRBAが目標とする2-3%のレンジに到達しそうで、RBAは少なくとも17年いっぱいは政策金利を現行の1.50%で据え置き利下げは行わない見通しだ。

日銀は当面は量的質的緩和を続ける見込みで、日豪の金融当局のスタンスからは豪ドルの対円相場は当面堅調に推移する可能性が高いだろう。次のターゲットは15年11月の90.72円。もしそこを超えれば、14年12月以来の対円で100円乗せが視野にはいる。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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