この先、急成長が期待されている産業として、AI(人工知能)が挙げられよう。モバイルインターネット、スーパーコンピューター、センサー付き無線ネットワーク、脳科学などの領域において、飛躍的に技術が進歩したり、新たな理論が打ち立てられたりしている。

こうした変化が世界の経済・社会を大きく変えようとしている。教育、医療、老人福祉、環境保護、都市機能、司法サービスなど、広範囲の領域で、AIが大きな変化をもたらそうとしている。

中国は、人工知能の領域において、国際科学技術論文の発表件数、特許件数で世界第二位であり、一部の領域では、コアとなる関連技術に関して既にブレークスルーしている。たとえば、語学認識、視覚認識の技術では世界のトップレベルにあり、深層学習、直感感知、総合推理、ハイブリッド知能、群衆知能などは発展の初期段階に差し掛かっている。また、中国語情報処理、監視・コントロール、生物の特徴識別、工業用ロボット、サービス用ロボット、無人運転などでは実用段階に差し掛かっている。

7月8日、AI国家発展戦略を発布、3段階で目標設定

AI戦略,中国
(写真=PIXTA)

中国はAI産業の育成・発展を国家重点研究発展計画の重点プロジェクトとしている。国務院は2016年5月に“インターネット+”人工知能三年行動実施方案を発布したが、さらに、2017年7月8日付で「新一代人工知能発展計画」を発布している。この計画では3段階に渡って、より具体的な戦略目標が設定されている。

第一段階では、「2020年までにAIの全体技術、応用技術を世界の先端水準に引き上げ、AI産業を新たな重要経済成長点とする」などとしている。AI核心産業の売上規模を1500億元、関連産業では1兆元を超える規模に育てる計画である。

第二段階では、「2025年までにAI基礎理論において、重大なブレークスルーを起こし、一部の技術・応用技術について世界をリードする水準に引き上げ、AIを産業のレベルアップ、経済構造転換の主要動力とする」などとしている。AI産業をグローバル・バリュー・チェーンに組み込み、製造、医療、都市、農業、国防などの領域において広く普及させ、AI核心産業の売上規模を4000億元、関連産業では5兆元を超える規模に育てる計画である。

第三段階では、「2030年までにAI理論、技術、応用技術など全体として世界をリードする水準に引き上げ、世界の主要なAI・クリエーション・センターに育てあげる」などとしている。AIを生産・生活、社会・ガバナンス、国防など各方面に対して、深く大きく浸透させ、コア技術、カギとなるシステム、支援プラットフォーム、AIを応用した産業チェーン、ハイエンド産業群を形成し、AI核心産業の売上規模を1兆元、関連産業では10兆元を超える規模に育てる計画である。

6つの重点任務を設定、資金支援、法整備などを進める