仕事ができる人とできない人の違いはどこにあるのだろう。たとえば高学歴であれば誰でも仕事ができるかと言うと、そうとは限らない。
産業能率大学総合研究所の考察によると、現代の職場で仕事を上手く進めるには「仕事センス」が重要だという。
6割が「仕事センスがない人いる」
同研究所では2017年5月に「仕事センスに関する意識調査」結果を発表している。調査対象は新卒2年目社員150名と6~12年目社員150人。有効回答数はあまり多くないが、参考までに見ていこう。
「あなたの職場に、知識やスキルは高いにも関わらず仕事を上手く進めるセンスがない人がいるか」との質問に対しては、60.0%の人が「いる」と回答している。「センスがないと思う理由」について聞いてみると、「頭はいいが、その場に適した仕事の順序がつけられない」「空気が読めず、状況把握できない」「要領が悪い」などの具体例が挙げられた。
「どれだけ知識や技術があっても、調整する力や共感力など仕事センスがなければいい結果は出ない」と調査結果のコメントでは述べている。周りにいるのは「仕事ができる人」なのかどうか、人は案外チェックしているものだ。その際の判断材料としては、知識やスキルに加えて「仕事センスがあるかどうか」が重視されていることが分かる。
「仕事センス」がある人の特徴は?
では「仕事センス」がある人には、具体的にどのような特徴があるのだろうか。
「仕事センスがある人に見られる特徴は?(3つまで回答可)」の質問では、「自分で判断して行動する力がある(69.3%)」「相手に明確に説明することができる(62.3%)」「人柄のよさ(45.3%)」「関係者を調整することが得意(37.0%)」「相手の言動から状況を察知できる(36.3%)」などが上位となった。
仕事を進める上では、「自分なりに判断して行動する」「自分の言葉で明確に説明できる」といった判断力や理解力を持つことが重要だと考える人は多いようだ。調査コメントでも、「『仕事センス』がある人のイメージは“自分で判断できること”」だとしている。
経験によってとらえ方は変わる
2年目社員と6~12年目社員では、「仕事センス」のとらえ方に差があることも分かった。たとえば、「関係者を調整することが得意」と回答した人の割合は、2年目男性社員では28.0%だが、6~12年目の男性社員では46.7%だった。「自分で判断して行動する力がある」と回答した人の割合は、2年目女性社員では54.7%だが、6~12年目の女性社員では73.3%もあった。
これらの結果から、「社会経験を積むと、『周囲との調整』や『状況察知』の大切さに気づく」「経験によって、捉え方は変化する」ということができるだろう。
「仕事センス」は伸ばせるもの
知識やスキルがあればある程度の成果を出すことができた時代は終わり、新しい価値観を持たなければ生き残れない時代がやってきている。仕事や働き方の多様化は進み、「仕事ができる人」という認識にも少なからず変化はあるだろう。しかし、「仕事ができるかどうか」が問われていることに変わりはない。
同調査の結びとして、仕事センスとは「仕事を遂行していく上で必要なあらゆる力」「誰しもが見出し伸ばすことのできる能力」だとしている。仕事センスとは、生まれ持った不変的な力ではない。積み重ねた経験や情報によって、磨いたり伸ばしたりすることができる能力なのだ。(渡邊祐子、フリーライター)