前週(8/07~8/10)の日本株は北朝鮮の地政学リスクの高まりから4週続落となり、日経平均の週間の引け値は1万9729円74銭と前週末比222円59銭(1.1%)安で商いを終えた。
週間で1%以上下落するのは米ロシアゲート事件と北朝鮮のミサイル発射で地政学リスクが高まった5月2週以来約3ヶ月ぶり。1万9700円台での引けは5月3週以降で初めて。
週間高値は2万0085円90銭(8/7)、安値は1万9660円22銭(8/9)。日経平均は6月以降、2万0300円と1万9800円のボックスレンジ内での展開だったが、レンジを下離れる形となった。
日本は11日が山の日で休場だったが、海外市場ではリスクオフが進展し、日経平均先物の夜間取引では1万9300円まで一時売られた。
前週(8/07~8/10)の振り返り
7日の日経平均株価は3日ぶりに反発、前週末比103円56銭(0.5%)高と2万円を回復し2万0055円89銭で引けた。
4日発表の米7月の雇用統計がコンセンサスを上回る好結果となり、NYダウは9日続伸した。米景況感の高まりからドル円は買い戻され、前週末の110円程度から110円台80銭程度まで円安が進んだ。日本株には円安感応度の高い自動車セクターを中心に買い戻しが入った。
8日の日経平均は反落、前日比59円88銭(0.3%)安の1万9996円01銭と2日ぶりに2万円割れで引けた。
前週末の国連の北朝鮮制裁決議に対し、北朝鮮が決議を非難し核開発を止めることはないとの声明を発表したため、ドル円は有事の円高で110円60銭程度となり、日本株も反落した。円高の進行で、日銀はETFを733億円買い入れて株式市場をサポートした。
9日の日経平均は続落、前日比257円30銭(1.3%)安の1万9738円71銭と大幅下落した。5月18日以来の下げ幅となり、5月31日以来2カ月半ぶりの安値だった。
米ワシントンポスト紙が8日、北朝鮮が核弾頭の小型化に成功したと報じた。小型核弾頭はICBMに積めるため、米国政府の許容範囲を完全に越えることになる。地政学リスクの高まりからNYダウは11日ぶりに下落した。北朝鮮がグアム周辺へミサイルを発射する計画と報じられ、ドル円は一時109円74銭と2ヶ月ぶりの水準まで売られた。日経平均の下げ幅は一時300円を超え、東証1部の8割あまりの銘柄が下落する全面安となった。日銀は2日連続でETFを733億円買い入れた。
10日の日経平均は小幅ながら3日続落、前日比8円97銭(0.1%)安の1万9729円74銭で引けた。
ドル円は110円を挟んで有事円高での展開。3連休前とあってポジション調整の売りも出たため日経平均は一時50円安まで下げたが、好決算に支えられて押し目買い意欲も強く、下げ幅を縮小して引けた。日銀は3日連続でETFを733億円買い入れた。
先週の海外動向を振り返る
10日の海外市場では、米朝の緊迫度が増し、NYダウは204ドル安と大幅安で3日続落、ドル円は109円15銭と一時6月14日以来2ヶ月ぶりの円高となった。北朝鮮のグアム周辺へのミサイル発射計画に対し、トランプ大統領が報復を示唆する強硬発言を繰り返した。
11日は、東京市場は山の日の祝日で休場となる中、海外市場では地政学リスクによる円高が進みドル円は一時108円72銭と4ヶ月ぶりの円高水準をつけた。だた、ロシアと中国が北朝鮮情勢の沈静化のために介入する姿勢だとの報道もありドル円は109円25銭と反発、NYダウも4日ぶりに14ドル高と小反発して引けた。
11日の日経平均先物の夜間取引は1万9390円だった。連休前木曜日の大阪先物の引け値比では320円安だが安値の1万9300円からは下げ幅を縮小している。
「8/14~8/18」の株式展望
今週の日経平均のメインシナリオは、1万9500円から2万円でのレンジを想定している。
全ては地政学リスク次第の展開になりそうだ。地政学リスクを予想することは困難で意味はないためここでは避けるが、北朝鮮のグアム周辺へのミサイル発射計画は米中緊張関係のレベルを大きく変えることだけは間違いない。
ICBMの成功に続き小型核弾頭を開発したということは、ワシントンが核のターゲット圏内に入ることになり、米国の許容範囲を完全に越える。グアムは米国領で米軍基地がある。国内経済が失墜しているトランプ政権にとって、アメリカ・ファーストが脅かされる北朝鮮の計画には強硬発言を繰り返さざるを得ない。
もし、北朝鮮がグアム計画を強制的に執行するとしたら、8月15日の祖国解放記念日、8月25日の先軍の日、9月9日の建国記念日などが要注意日との見方もある。国連や世界各国首脳は、武力行使によらず会話での緊張を解決するように発言を繰り返している。
世界の株式市場のボラティリティが低下し、米国はゴルディロックス相場による株高が続いていたが、米朝緊迫でボラティリティが一気に上昇した。米S&P500指数のボラティリティ指数で恐怖指数とも言われるVIX指数は10日に前日比4.93ポイント(44.4%)高の16.04ポイントを付けた。昨年11月8日の米大統領選時以来の水準。
7月下旬には8.84ポイントと過去最低まで下落しており、米朝鮮問題緊迫前は10ポイント前後だった。日経平均のVI指数(ボラティリティ・インデックス)も先週末に16.26ポイントと7月6日以来の高さになった。
日米ともにボラティリティ・インデックスが20ポイントを超えると危険水域と言われている。東京市場はお盆真っ盛りの週で市場参加者は限定的なだけに、地政学的な材料次第では上にも下にも一気に動く可能性があるだろう。
もっとも、米国の12月利上げ観測はかなり後退してきた。米FF金利先物による9月利上げ予想はすでにゼロ。9月FOMCでは金利据え置きがコンセンサス。12月13日のFOMCでの利上げの確率は、一時50%程度だったのが36%程度まで低下してきている。すなわち年内利上げは見送りという見方の方が多くなってきている。米国も日本も企業業績は好調なだけに、地政学リスクさえ落ち着けば米低金利を背景とした上昇相場はまた活況を取り戻す可能性は高い。
テクニカルでは、日経平均は6月以降、2万300円と1万9800円のボックスレンジ内での展開だったが、レンジを下離れる形となった。8月9日には日経平均は中期のサポートと考えられる75日移動平均線(1万9889円)を割り込んだ。75日移動平均割れは4月25日以来3ヶ月半ぶり。75日移動平均を上から下に割り込んだのは3月22日以来。3月22日はその後4月17日の1万8224円まで約1ヶ月下げた。チャートはよくない。
サポートは26週移動平均線の1万9569円、5月18日安値の1万9449円がある心理的抵抗線の1万9500円。そこをブレークした場合長期サポートである200日移動平均線の1万9181円。上値のレジスタンスは心理的抵抗線でもある2万円、75日移動平均線の1万9889円があり、25日移動平均線も2万0011円と2万円前後にはレジスタンスが集中している。
今週の重要なイベントは、15日に日本で終戦記念日、北朝鮮で祖国解放記念日、15日に米FOMC7月分の議事録、15日から20日までNAFTA再交渉初会合(米、カナダ、メキシコ)、17日(未定)から日米外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会などがある。今後の大きなイベントとして浮上するのが、24日から26日の米ジャクソンホール会合。FRBのイエレン議長とECBのドラギ総裁が講演会を開く。9月にはドイツ総選挙がある。
経済指標は、日本では14日に4~6月のGDP速報値、17日に7月の貿易収支、18日に7月のスーパー売上高。海外では14日にユーロ圏6月の鉱工業生産、中国7月の固定資産投資、小売売上、鉱工業生産、15日に米7月小売売上、NY連銀製造業景況指数、16日に米7月住宅着工、16日にユーロ圏4~6月GDP改定値、17日に米7月の鉱工業生産、8月のフィラデルフィア連銀製造業景況感指数、18日に米8月ミシガン大学消費者信頼感指数がある。欧米の経済指標次第で為替が上下する展開が続きそうだ。(ZUU online 編集部)
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