前週(8/14〜8/17)の東京為替市場では、米朝間の緊迫と米政治の混乱に加えスペインでのテロから有事の円高が進行、6週連続の円高だった。

週末の東京銀行間のインターバンク市場の17時のレートは109円06銭で終え、週間で96銭(0.9%)の円高。ドル円の東京市場での週間高値は16日の110円93銭、安値は18日の109円56銭だった。東京市場でのレンジは1円37銭だった。

海外では18日に円高が進み、108円61銭と4月19日以来の円高水準を付けている。6月14日の108円84銭を抜いた。ドル円は6月14日で円安に方向転換した水準だ。

今週はジャクソンホール待ちで膠着する可能性が高いが、地政学リスクの進展次第では4月のドル円の安値108円14銭を抜くと、トランプラリー後のボックス圏を抜けとなる。

前週(8/14〜8/17)の振り返り

為替展望
(写真=PIXTA)

14日の東京為替市場で円は反騰、17時のインターバンクレートは109円75銭と前週末比27銭の円高となった。

日本が連休中に米朝間関係が緊迫、海外で株は下げドル円は一時4ヶ月ぶりの108円台をつけたあと、109円台前半に反発して引けていた。東京市場でも109円台で始まり、米債利回りが上昇したことで円売りが優勢となり109円台後半をつけた。朝方発表された4~6月のGDP成長率は年率4.0%増とコンセンサスの2.4%を大きく上回ったが材料視されなかった。

15日の東京為替市場で円は反落、17時のレートは110円35銭と前日比60銭の円安となった。

北朝鮮問題で、米政府高官からは武力でなく外交による解決を目指すとの発言が相次ぎ、NYダウは135ドル高と急反発した。警戒感の後退から日本株にも買い戻しが入った。日本時間には金正恩朝鮮労働党委員長が米国の行動を見守るとの報道がありドルの買い戻しが進み、一時110円48銭をつけた。

16日の東京為替市場で円は2日続落、17時のレートは110円87銭と前日比52銭の円安だった。

前日ドルの買い戻しが入り、東京市場でも110円93銭まで付ける局面があったが、日本株は小幅安、米国長期債利回りも伸び悩み、その後のドル円は方向感が出ない展開となった。一日のレンジは38銭と先週で一番動きが少なかった。

17日の東京為替市場で円は3日ぶりに買われ、17時のレートは109円93銭と前日比94銭の円高となった。

米7月のFOMCの議事録で、主要メンバーがインフレ率の低下を懸念していることが明らかになった。FRBの利上げペースがスローダウンするとの見方で米長期金利が低下、日米金利差の縮小から円高となった。

18日の東京為替市場で円は続騰、17時のレートは109円06銭と前日比87銭の円高となった。

トランプ大統領の人種差別発言をめぐり、米経済界重要人物などで構成する大統領助言組織が解散された。トランプ大統領の政権運営に対する不信感が高まっている。また、スペインでの大規模なテロ事件が発生したこともあって投資家のリスクオフ姿勢は強まり、有事の円高が進んだ。

先週の海外動向を振り返る

17日のリスクオフの流れを引き継ぎ、18日にはスペインでのテロもあり、NYダウは一時100ドル以上下げ、ドル円は一時108円61銭と4月19日以来約4ヶ月ぶりの円高をつけていた。

しかし、バノン首席戦略官の辞任が伝わると急速に株とドルに買戻しが入り一NYダウは一時42ドル高に転じた。バノン氏は白人至上主義や移民排斥などの極右思想で知られる大統領の側近で、辞任により米政治混乱が収束するとの期待が膨らんだ。もっとも買いは続かず、引けのNYダウは76ドル安だった。

バノン氏辞任後ドル円は戻し、109円25銭と東京時間引けよりは20銭程度円安となって引けた。

「8/21〜8/25」の為替展望

今週のドル円のメインシナリオは、108円14銭から110円96銭のレンジを想定している。

簡単に地政学リスクと米政治執行リスクは解消しそうにはない。有事の円高傾向が続く可能性がある。

北朝鮮の地政学リスクは、ワシントンが核攻撃の範囲内に入ったと言うことで今までとはステージが違う。北朝鮮では、8月25日の先軍の日、9月9日の建国記念日などの行事があるため、緊張感を完全に解くわけにはいかいだろう。

米国の政治不信はバノン氏が辞任しても継続しそうだ。米議会は現在休会中。米債務上限引き上げがまだ承認されておらず、9月5日の議会再開後29日までに承認しないと10月3日には政府の支払いがストップしガバメントシャットダウンになる。米国のデフォルト懸念や納税者のコスト増につながるだけに回避しなければならない。

米国の12月利上げ観測はかなり後退してきている。米FF金利先物による9月利上げ予想はすでにゼロ。9月FOMCでは金利据え置きがコンセンサス。12月の利上げの確率は38%程度まで低下してきている。年内利上げは見送りとの見方の方が主流だ。米利上げ見送りはドル安・円高材料。

今週の最大の注目材料は、24日から26日の米ジャクソンホール会合だ。年に1回世界の金融政策関係者が集まるシンポジウム。FRBのイエレン議長とECBのドラギ総裁が講演会を開く。ドラギはテーパリングについては語らないとの報道があったが、両者の発言は今後の世界の金融市場の方向性を決める可能性がある。ドラギ発言によってはユーロ高・ドル安となり、クロスレートで円高が進む可能性がある。ジャクソンホール前に相場が大きく動くとは基本的には考えづらい。

テクニカルでは、ドル円のサポートは4月17日高値の108円14銭。もしこれを抜くようなら、トランプラリー前の昨年10月28日の105円53銭まで大きな節はなくボックス圏を抜ける可能性がある。レジスタンスは8月4日の111円04銭。これをブレークすれば21日移動平均の110円40銭が次のターゲット。

今週の重要なイベントは、21日に日本の民進党代表選告示(投票9/1)、21日~31日まで米韓合同軍事演習、24日~26日まで米ジャクソンホール会合。ドラギ総裁の講演は25日。25日は北朝鮮の先軍の日でもある。

経済指標は、日本では21日に7月の百貨店、コンビニ売上高、23日に7月粗鋼生産、25日に7月消費者物価がある。海外では21日の米7月シカゴ連銀全米活動指数、24日に米7月中古住宅販売が注目される。(ZUU online 編集部)

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