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現在4~6月期のイギリスの実質国内総生産(GDP)が3935億ポンド(約68兆円)となり、ほぼリーマンショックの直前まで回復したと報じられました。経済正常化の目安でよく言われるのが「リーマンショック直前の水準」への回復ですが、先進国の中ではイギリスの景気回復が顕著になったと伝えているメディアもあります。国際通貨基金(IMF)は、6四半期連続で拡大してきたイギリスの2014年の経済成長率を3.2%と指し示し、アメリカやドイツを上回り主要7カ国でも突出した値となっています。

好景気の要因は個人消費の拡大、法人実効税率の引き下げにより功を奏した自動車産業等の製造業回復などがあげられています。日本でも今年6月に閣議決定された「骨太方針2014」で、法人実効税率を現在の36%から20%台まで引き下げることを安倍内閣も目指しています。さて、日本も法人税改革により景気回復への道筋がすみやかに敷かれるのか検証してみたいと思います。


世界2番目の高税率の日本の法人税

日本はこれまでに1998年、1999年、2012年に法人税率を引き下げてきました。しかしそれでも他の先進国と比較すると数%、アジア各国でみると約10%程高い税率で、アメリカに次いで世界2番目の高税率となります。諸外国と比べて高い法人税率やエネルギーコストそして立地コストが影響を与え、グローバル企業の海外移転や空洞化を招いてきました。

法人税を引き下げた場合、海外企業の日本進出の促進、税負担減による設備投資の拡大促進、国内企業の海外流出防止など様々なメリットが生みだされ、事業拡大による業績改善や景気の回復が見込まれます。そこで安倍政権も「日本の立地競争力を強化するとともに、我が国企業の競争力を高めること」を目的に法人税改革に乗り出そうとしています。


法人税改革の課題とは

1.財源の問題
安倍内閣の成長戦略の目玉とされる「骨太方針2014」では、最終的な税率や減税財源をどう賄うかについてはまだ明示されていません。減税により税収が落ち込めば、既にGDP比率で243%と高い日本の政府債務がさらに膨らみ、債券投資家の不安材料ともなります。政府は消費税のさらなる引き上げも検討していますが、国民は一層の負担を強いられるのに、企業支援をさらに手厚くするのは税負担の公平性を欠くという批判にも晒されます。

2.効果が限定的に留まる懸念
実効税率の引き下げで恩恵を受けるのは一部の黒字企業だけで、業績改善が遅れている大半の中小企業には効果がないという意見もあります。実は税金を納めているのは全体の3分の2ほどの企業で、大手複合企業の実効税率はわずか13%にとどまります。過去5年間法人税を支払わなかったトヨタ自動車の例にも見られるように、企業は過去の赤字を利用して何年間も納税額を低く抑えてきました。ロイターの分析でも減税は国内設備投資の拡大に結び付く可能性があるものの、その拡大も限定的とみています。