シンカー:アベノミクスに対する批判はその根拠を徐々に失ってきている。企業の売上高経常利益率は過去最高の水準まで上昇してきた。円安の恩恵を受ける製造業よりも、生産性と収益率が弱いと言われ続けた非製造業の方が改善が顕著である。アベノミクスは日銀の大規模な金融緩和による円安の効果だけで、構造改革が進展していないのが景気回復の妨げになっているという二つの典型的な論調は否定される。若年層を含め雇用環境は大幅に改善し、失業率は3%を下回り、有効求人倍率はバブル期を越え、正社員の有効求人倍率も1倍となり質も向上してきた。そして、内閣府の潜在成長率の推計は2016年1-3月期の段階で+1.0%になっていたことが確認された。アベノミクスが始まる前の2012年の+0.8%程度から上昇している。1年前の内閣府の推計では、潜在成長率は2012年の0.5%程度から2016年の0.3%程度まで下がってしまっていて、アベノミクスによる効果が全く見えなかったのが政策への批判につながっていた。アベノミクスの成果として日本経済がしっかり回復している証拠が明らかになってきており、失業率が2%台で定着する中で、これから賃金の上昇と内需の拡大をともない実感が急に生まれてくると考えられる。2%の物価目標は達成していないが、物価は持続的に上昇できる環境になっており、デフレ状態ではなくなっている。物価の上昇があまり強くないのは、潜在成長率が思ったより上昇していたからだというポジティブな理由であるとも考えられる。景気拡大の実感が強くなるに従い、来年の自民党総裁選挙と衆議院選挙に向けて安部内閣の支持率は持ち直し、政権は維持されると考える。
![SG証券・会田氏の分析](https://cdn.zuuonline.com/600/400/uploads/pixta_17153138_S.jpg)
海外投資家と議論していても、アベノミクスの成果として日本経済がしっかり回復していることに関して理解が広がってきていると感じる。
アベノミクスの成果を否定するような日本国内の根強い論調は、ガラパゴスになっているようだ。
企業の売上高経常利益率は過去最高の水準まで上昇してきた。
円安の恩恵を受ける製造業よりも、生産性と収益率が弱いと言われ続けた非製造業の方が改善が顕著である。
構造改革は企業が活動しやすく利益を上げやすい環境を整え、その妨げとなる規制を撤廃し、必要な法整備をすることだ。
アベノミクスは日銀の大規模な金融緩和による円安の効果だけで、構造改革が進展していないのが景気回復の妨げになっているという二つの典型的な論調は否定される。
更に、アベノミクスで景気の拡大がみられても、潜在成長率が上昇していないので、高水準の成長率は持続的ではないということに対する反証も出てきた。
4-6月期の実質GDPは前期比年率+4.0%の強い結果となった。
二次速報では同+3%程度まで下方修正されるだろうが、それでも強く、2017年の成長率は+1.5%を上回る可能性が高い。
まだ海外の回復や政府の景気対策に支えれた景気拡大の側面はあるが、徐々に企業活動の拡大による設備投資、雇用、賃金の回復が中心となる自立的な形に進化してきていることが確認された。
これを受けた見直しにより、内閣府の潜在成長率の推計は2016年1-3月期の段階で+1.0%となっていたことが確認された。
アベノミクスが始まる前の2012年の+0.8%程度から上昇している。
1年前の内閣府の推計では、潜在成長率は2012年の0.5%程度から2016年の0.3%まで下がってしまっていて、アベノミクスによる効果が全く見えなかったのが政策への批判につながっていた。
若年層を含め雇用環境は大幅に改善し、失業率は3%を下回り、有効求人倍率はバブル期を越え、正社員の有効求人倍率も1倍となり質も向上してきた。
労働需給の引き締まりが賃金上昇を強くし、物価上昇が緩やかに高まっていくという好循環が明確になってくるのかが今後の注目である。
1980年代後半のバブル期も、失業率が1987年の3%からその後の2%に低下していく局面で、賃金が強く上昇し、内需が強く拡大した。
現在はようやくその入り口までたどり着いたところであり、これまで景気拡大の実感がなかったのも無理はない。
アベノミクスの成果として日本経済がしっかり回復している証拠が明らかになってきており、失業率が2%台で定着する中で、これから賃金の上昇と内需の拡大をともない実感が急に生まれてくると考えられる。
2%の物価目標は達成していないが、物価は持続的に上昇できる環境になっており、デフレ状態ではなくなっている。
物価の上昇があまり強くないのは、潜在成長率が思ったより上昇していたからだというポジティブな理由であるとも考えられる。
アベノミクスに対する批判はその根拠を徐々に失っており、景気拡大の実感が強くなるに従い、来年の自民党総裁選挙と衆議院選挙に向けて安部内閣の支持率は持ち直し、政権は維持されると考える。
図)内閣府の潜在成長率の推計
![出所:内閣府、SG](https://cdn.zuuonline.com/481/274/uploads/securedownload-3-3.png)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司
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