住宅手当は、社員にとっては住宅費用として支給してもらえる福利厚生の一つです。しかし、住宅手当は原則として給与所得であり課税対象となります。
実は、住宅手当が社会保険料にも影響してくるのはご存じでしょうか。今回は、保険料の算出に関わる随時改定にスポットを当てて紹介します。
住宅手当を非課税にする方法
住宅手当は、給与所得(使用人や役員に支払う俸給や給料、賃金、歳費、賞与の他、これらの性質を有するもの)に含まれます。福利厚生という一面を持ちながらも課税されてしまうため、社員側からみれば、住宅手当という方法以外で支給されるほうがメリットがあるといえるでしょう。
住宅手当分を非課税対象とする方法は、社員の自宅を社宅として企業が法人契約し、決められた賃貸料相当額の50%以上を徴収することです。つまりは企業が借り上げた社宅に社員が住み、社員側から家賃として全家賃の50%以上を支払ってもらうことになります。万が一無償で貸与すると賃貸料相当額全額、50%以下であれば賃貸料相当額との差額が給与として課税されてしまうため、賃貸料相当額「50%」を支払ってもらう方法が最も安く、しかも非課税で済むベストな方法といえるでしょう。
社員側からすると、支給されるのではなく支払うということになるため、損をしたような感覚になるかもしれません。しかしながら、課税対象になるかそうでないかによって最終的な支出額が変わってくることを考えてみれば、住宅手当より社宅に住む方が安く済むといえます。
社会保険料の随時改定とは
各個人の社会保険料は、標準報酬月額によって算出されます。この標準報酬月額とは、給与などの報酬額を一定の幅で区切った報酬月額によって決定されますが、年に1回必ず見直しをして標準報酬月額の改訂を行います。これを「定時決定」といいます。
さらに定時決定の算定月以降、標準月額に標準報酬月額の上下2等級以上の変動が発生した場合にも標準報酬月額の改訂が行われます。これを「随時改定」といいます。
定時決定は4・5・6月の報酬月額を基に毎年9月に標準報酬月額を改定しますが、随時改定は給与に大幅な変動があった都度改定が必要になります。万が一随時改定の改訂が行われていないと定時決定の際に随時改定の書類も提出が必要となるため、適切なタイミングで随時改定を行うことが定時改定をスムーズに行うことにつながります。
随時改定は昇給や降給、転勤による通勤手当の変動に伴う場合が多いといえますが、住宅手当の支給が始まったタイミングで給与が大幅にアップした場合は改定の必要が出てくる場合があるでしょう。改定されると標準報酬月額が上がることになり、結果として社会保険料の支払額が増えるということになります。
随時改定の条件とシミュレーション
随時改定が必要になる条件として、以下の3つをすべて満たす必要があります。
・ 固定的賃金に変動があった場合
・ 変動月からの3ヵ月間に支給された報酬(残業手当などの非固定賃金も含む)の平均月額をもとに算出した標準報酬月額とこれまでの額に2等級以上の差が発生した場合
・ 算出ベースになる3ヵ月間の支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である場合
上記をもとに、実際に標準報酬月額をシミュレーションしてみましょう。
(東京都の場合;2017年5月納付分の保険料額表より)
*40歳未満で介護保険第2号被保険に該当しないとして試算。(全国健康保険協会管掌健康保険料)
*一般の被保険者として試算。(厚生年金保険料(厚生年金基金加入員を除く))
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給与28万5,000円の場合
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・ 健康保険料の標準報酬月額:21等級28万円
実際に企業・社員それぞれが支払う月額(折半額):1万3,874円
・ 厚生年金保険料の標準報酬月額:18等級28万円
実際に企業・社員それぞれが支払う月額(折半額):2万5,455円
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給与31万5,000円の場合
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・ 健康保険料の標準報酬月額:23等級32万円
実際に企業・社員それぞれが支払う月額(折半額):1万5,856円
・ 厚生年金保険料の標準報酬月額:20等級32万円
実際に企業・社員それぞれが支払う月額(折半額):2万9,091円
仮に給与に3万円の増加が発生した場合、随時改定により社会保険料は月額5,619円も増加することになります。ただし報酬月額の区分によっては2等級の変動がない場合もあるため、各自の報酬月額と給与の増減額によって違いがあるでしょう。また各都道府県によって保険料額表があり、社会保険料に多少の変動があります。
住宅手当は税金や保険料にも大きく影響する
住宅手当は、実際に勤労した結果の報酬ではないものの給与所得とみなされているがために、税金や保険料に大きく影響してきます。そのため社員側の観点からみても、住宅手当ではない手段によって住宅の費用を補助する方法を企業側が選択していくほうが、社員・企業双方にメリットがあるといえるでしょう。
(提供: フクリ! )
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