メインバンクとは、給与振込や公共料金の引き落とし口座になっていたり、もっとも多額の預金をしていたり、入出金や各種振込など、ふだん頻ひん 繁ぱんに取引をしている銀行のことを指します。

(本記事は、平井美穂氏の著書『 住宅ローン 借り方・返し方 得なのはどっち? 』河出書房新社(2017年1月15日)の中から一部を抜粋・編集しています)

「住宅ローンは「メインバンク」でまず検討を

住宅ローン,金融機関
(写真=PIXTA)

住宅ローンの申込みをするときには、まず自分のメインバンクから当たってみるといいでしょう。住宅ローンの審査では「借入人が、その銀行と何年取引しているか」「給与振込口座として利用しているか」「預貯金残高はいくらか」など取引実績もチェックしています。とくに預貯金残高が多いと、給与収入以外でも返済できる能力が高いと判断され評価が高くなります。投資信託など金融商品の取引実績があれば、金利を引き下げてくれる金融機関もあります。

個人事業主の場合は、事業資金の融資を受けている金融機関があれば、そこを最初に当たるべきでしょう。サラリーマンの場合は自分自身に取引実績がなくても、勤務先がメインバンクとして取引している銀行なら、審査上の評価が高くなる場合もあります。

また、多くの金融機関では、住宅ローン利用後は「返済口座を給与振込口座にすること」という融資条件がつきます。もともとメインバンクの銀行であれば、給与振込口座を変更する手間も省けます。

住宅ローンを借りたあとは、その銀行を積極的に活用したいものです。銀行は顧客の取引実績に応じて、提供するサービスを変えています。住宅ローン利用者は銀行の中では最上位の「お得意様」に位置づけられており、いろいろな特典を受けることができます。

どうしてもメインバンクを変えたくない人は、勤務先に給与振込口座を2つ指定できないか相談してみてください。住宅ローンの口座には返済額程度を、残りはメインバンクへ振込んでもらうのです。融資条件もクリアできる一石二鳥のワザです。

「利息がかかる」クレジットカード機能に要注意

住宅ローンの審査に通るかどうか心配で相談にやってくる人から、もっとも多く質問されるのが、クレジットカードに関する問題です。電子決済があたりまえになった今日では、毎日のようにクレジットカードを使う人もいるでしょう。

クレジットカードには、いろいろな機能があります。このうち住宅ローンの審査でひっかかるのは、「リボ払い」「分割払い」「キャッシング」です。一括払いやボーナス一括払いは、利用額がいくらであろうと問題ありません。両者の差がどこにあるかといえば、それは利息。「利息がかかるものは要注意」と覚えておいてください。

食料品や洋服など日々の買い物をすべてカードで支払い、毎月の利用額が20万円を超えていても、一括払いをしていれば返済負担率に影響することはありません。

ただし、残高不足で引き落としがされず、何度か催促されてもついつい支払いを遅らせてしまったという前歴がある人は要注意です。延滞した日数や回数によっては、住宅ローンが借りられない場合もあります。一方、リボ払いや分割払いでものを買ったり、頻繁にキャッシングをしている人は、カードの利用履歴が審査でチェックされます。返済負担率は、これから借りる「住宅ローンの年間返済額」に「カードの年間支払額」も合算して算出します。返済負担率が金融機関の定める上限に収まらない場合は、希望した金額まで借りられなくなります。

とくに注意が必要なのは、カードの年間支払額は実際に借りている金額ではなく、極度額いっぱいに借りていると見なして計算する金融機関が多いという点です。カードのいまの借入は、できるだけ返してしまいましょう。その際、「住宅ローンの審査に通ったら、ローン契約前にカードの借入を完済する」という条件で、先に審査を受けてみることです。

念のため補足しておきますが、キャッシングやリボ払いをどれだけ使っていようと、返済負担率がまったく問題ないのであれば気にする必要はありません。「カードの利用が多いからダメ」なわけではなく、審査されるポイントは「返済負担率が規定の範囲に収まっているか」「過去の返済履歴に延滞がないか」です。

勤続年数で非正規雇用でもローンを組める可能性がある

金融機関によって、非正規雇用労働者に対する審査基準は大きく異なりますが、パート従業員やアルバイトでも柔軟に対応してくれるのは、やはり住宅金融支援機構の「フラット35」です。

都市銀行をはじめ一般の銀行は、残念ながらパートやアルバイトでは融資を受けるのは難しいでしょう。ただ、契約社員・派遣社員であれば、融資を受けられる可能性は十分あります。契約社員や派遣社員が融資に受かるポイントは、現在の勤務先での勤続年数です。正社員は勤続年数が短くても取り上げてくれるケースはあるのですが、契約社員・派遣社員となるとすこしハードルが上がります。「契約社員・派遣社員の場合は勤続年数3年以上であれば取り上げ可」という基準をもうけている金融機関もあるため、できれば3年以上勤務しているのが理想です。

銀行で融資がおりなかったときや、承認はおりたもののフラット35のほうが有利といったときは、最後の砦としてフラット35を検討してみるといいでしょう。非正規雇用で働く人が、住宅ローン審査を受ける際に注意しておきたいのが、健康保険・年金への加入や所得税・住民税をきちんと納税しているかという点です。

住宅ローンの審査では、どこの金融機関であっても住民税課税証明書や納税証明書の提出が必須となっています。健康保険証のコピーも提出します。

金融機関は税金や社会保険料の支払いをきちんとしていない人を嫌います。あらゆる点で大手銀行より審査基準がゆるいフラット35であっても、ここは目をつぶりません。提出する納税証明書は、おおむね過去2~3年分です。心当たりがある人は、未納分を納めてしまいましょう。ただ、納税したからといって必ず審査が通るとは限らないことは覚えておいてください。

平井美穂(ひらい・みほ)
平井FP事務所代表。宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、証券外務員1種。大学卒業後、新築マンションの販売会社で営業を経験。なかでも特殊ケースの顧客の住宅ローンプランニングが得意。その後、銀行およびモーゲージバンクへ転職し、融資業務・金融商品販売に従事する。出産を機に独立系ファイナンシャルプランナーとなり、公正中立な立場で「相談者がもっとも得する住宅ローン」の借り方をコーチしている。5000件超の相談実績を誇る、実践派の住宅ローンプランナー。

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