昨日のマーケット動向としては、注目のECB理事会にてドラギ・ECB総裁が、量的緩和策を巡る大筋を次回10月の会合で行なうことや、最近のユーロ相場の変動が不透明性の要因であり、ユーロの動向を注視する必要があることを表明しました。同総裁発言により、1.1930ドル付近から1.2060ドル付近を挟み一喜一憂、急落急騰を繰り返したユーロ相場ですが、量的緩和策の縮小(テーパリング)が10月に決定されるとの期待感に加えて、ユーロ高を牽制するトーンが一部で警戒されたほど強くなかったため、最終的にはユーロ買いが加速しました。ユーロドルについては一時8月29日以来の1.20589ドル(当社レート)を示現しています。

FXプライム,高野やすのり,市況解説
(写真=PIXTA)

ECB理事会後の海外時間については、米国南部に2,000億ドル近い被害をもたらしたハリケーン「ハービー」に続いて、最強のカテゴリー5となっている「イルマ」が週内にも米フロリダ州に上陸するとみられており、こちらは現段階で1,250億ドル程度の被害が見込まれています。米10年国債利回りが景気下押し観測から前日回復した2.10%台を維持することができなかったため、ドル安・円高の動きに繋がりました。

米上院がハリケーン救済と債務上限の引き上げ措置を承認し、週内に修正法案が可決する見通しとなって、ファーストアクションこそドル買いの反応が見られたものの、債務不履行と政府機関閉鎖を巡る混乱が12月に先送りされただけであることが嫌気され、米10年国債利回りが2016年11月以来 の2.03%前半に低下したことでドル円は一時108.052円まで下落しました。

マーケットの焦点となっている明日9日北朝鮮の建国記念日を控え、米中央情報局(CIA)や米国土安全保障省の職員が続々とソウル入りしていることが報道されています。北朝鮮に対する武力行使を前提としているとの見方が強まれば、リスク回避の円買い基調は、自ずと強まりそうです。いずれにしても、週末のミサイル発射に備えたドルの持ち高解消ニーズは高いとみられており、ドル円を中心としたクロス円は、本日に関しては、戻り売り戦略が機能するのではないでしょうか。

本日の経済指標としては、英国の7月鉱工業生産、7月貿易収支、カナダの8月失業率、8月雇用者数変化などが予定されています。本日の推奨通貨としては、ドル円の戻り売りに妙味がありそうです。108円の大台を下抜けると、これといったサポートがないため、106円の水準が意識されてくるでしょうし、週末に控えている地政学的リスクは潜在的なリスク回避の円買いを誘発しそうです。

FF金利先物による年内のFOMC追加利上げ確率は約26%に急降下、一回目の利上げの確率が50%を超えるのは2018年8月以降に変更になっています。

(提供:FXプライムbyGMO)

高野やすのり
慶應義塾大学卒。チェース・マンハッタン銀行(現J.P.モルガン・チェース銀行)、スイス・ユニオン銀行(現UBS銀行)などでインターバンクディーラー業務等に従事。現、(株)FXプライム byGMOチーフストラテジスト。

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