次世代自動車の登場で、リチウム不足に拍車がかかっている。過去2年でリチウム電池の原材料価格は3倍以上に上昇。わずか1年足らずで1トンにつき2万ドル値上がりした。

「世界的な電気自動車(EV)の移行を機に、2030年には需要が現在の30倍に増える」と、ブルームバーグのクリーンエネルギー市場分析部門BNEFは予想している。

今後13年でEV市場が2440万ドルに達すると予想

リチウム電池は金属リチウムを使った化学電池で、マンガン乾電池やアリカリ乾電池、ニカド電池などほかの種類の電池よりも電力の包有量や重量の軽さで優れていることから、ノート型パソコン、スマホ、デジタルカメラなど、様々なデジタル用品の利用されている。

生産が需要に追い付かず価格が高騰しているにも関わらず、世界的な電気自動車(EV)への切り替えが供給不測に拍車をかけている。

BNEF(ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス)の予想では、EVだけでも2030年までに売上が2440万ドルに達する。

リチウムはアルカリ金属元祖の一種だ。ひと昔前までは地下や鉱山より採掘されたリチウムが主に利用されていたが、コスト面や純度を向上するために、現在は海水から抽出する手法も採用されている。

「地球上からリチウムの原料がなくなるのではないか」との心配は不要のようだ。BNEF曰く、今後数十年にわたり抽出されるリチウム総量は全体の1%にも満たないという。不足しているのは原料ではなく、あくまで「生産量」である。

今後より多くのリチウム電池を生産、供給する上で、リチウム電池工場の増設を急ぐ必要があるだろう。

テスラの巨大リチウムイオン電池生産工場35棟相当が必要

例えば中国のリチウム製造会社、四川省テンチ・リチウム 、チリのSQM(ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ)、米国のアルベマールといった国際リチウム市場を牛耳る大手は、工場の規模を劇的に拡大しない限り、供給がさらに遅れることになる。

「テスラがネヴァダ州に建設中の巨大リチウムイオン電池生産工場、ギガファクトリーと同じ規模の工場が35棟は必要」とBNEFは推測している。総投資額は3500億〜7500億ドルとなりそうだ。

リチウムは主に6大陸で抽出されている。2015年の製造量の49%は南アメリカによるものだ(ドイツ銀行調査)。

鉱業会社は既に製造工場を20個増設すると発表しているが、需要ペースに間に合うか否かは疑問である。

こうした過度のリチウム不足を見越して、英国などではリチウム産業で経済活性化を狙う動きが見られる。

英国では鉱業スタートアップ、コーニッシュ・リチウムが130万ドルの資金調達に成功。かつて鉱業で栄えたコーンウォール(英国南西端の単一自治体)を、リチウム産業で復興させようと試みている(mining.comより )。過去数十年にわたり生産性が著しく低下し、社会問題化している英国にとっては歓迎すべきポジティブな流れといえるだろう。

こうした空前のリチウムブームが、世界各地に訪れるのではないかと予想される。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)